「農地」かどうかを決めるのは誰? — 農地と採草放牧地の意義
農地・採草放牧地の意義 ここで押さえておくべきキーワード
登記簿に「山林」と書いてあっても農地になる?
不動産の世界では、土地の種類は登記簿の「地目」で分かるように思われがちです。しかし農地法における「農地かどうか」の判断は、登記簿の地目とは無関係に、現在の事実状態で判断します。これを「現況主義」といいます。
つまり、登記簿に「山林」「雑種地」と記載されていても、実際にそこで農作物が栽培されていれば農地です。逆に、登記簿が「田」「畑」であっても、実際には農業に使われておらず宅地として利用されていれば農地ではありません(その場合は農地転用の履歴が問われることになりますが)。この現況主義が農地法の最も重要な前提知識であり、具体的な取引規制(3条・4条・5条)の出題でも正誤判断の基礎になります。
この節で何を学ぶ?どう出る?
農地法は、農地と採草放牧地のそれぞれについて定義を置いています(農地法2条)。農地法の適用を受けるには、まず対象の土地が「農地」または「採草放牧地」に該当するかを確認する必要があるため、この定義は農地法全体の入口となります。
Bランク。試験では「登記簿上の地目が山林でも現況が農地なら農地法の農地に該当する」(〇)のような問いが繰り返し出題されます。事実状態(現況)が地目より優先されるという原則と、休耕地の扱い(農業経営上近い将来耕作予定であれば農地)を覚えておきましょう。
なぜ押さえる必要がある?
農地法3条(権利移動)・4条(農地転用)・5条(転用目的権利移動)の規制はいずれも「農地または採草放牧地について」の規制です。農地や採草放牧地に当たらなければ農地法の適用そのものがありません。
農地と採草放牧地の定義を正確に知ることで、「許可が必要か」「届出が必要か」を判断する前提が整います。定義を知らずに各条文の要件を学んでも、事例問題で正しく当てはめができません。本節はこのように農地法学習全体の土台になっています。
前提として何を知っておく?
→ 農地法の構造
農地法の目的・体系を先に確認してから読むことをお勧めします。農地法が「農業生産力の維持・農業経営基盤の保護」を目的としていると理解していれば、なぜ「現況主義」(登記地目でなく事実状態で判断する)という原則が採用されているかが自然に理解できます。
農地の意義
農地とは、耕作の目的に供される土地をいう(農地法2条1項)。「耕作の目的に供される」とは、現に農作物を栽培している土地、すなわち現実に耕作に用いられている土地を指します。具体的には、田(水田)・畑がその典型です。
農地かどうかの判断にあたって決定的なのは、登記簿上の地目(不動産登記法上の地目)ではなく、現在の事実状態です。登記簿に「山林」と記載されていても、実際に野菜を栽培していれば農地法上の農地となります。「雑種地」登記でも現に水田として使用していれば農地です。この逆も然りで、登記地目が「田」でも、長年放置されて宅地化しているような場合は農地とは言えない場合があります。
また、休耕地(現在は農作物を耕作しておらず、農業経営上近い将来において耕作するとみられる土地)も農地に含まれます。「今は耕していないから農地でない」とはならない点に注意が必要です。農業経営上の判断で一時的に休耕している土地は、将来また農業に使うことが予定されているからです。
採草放牧地の意義
採草放牧地とは、農地以外の土地で、主として耕作または養畜の事業のための採草または家畜の放牧の目的に供されるものをいう(農地法2条1項)。採草とは牧草などを刈り取ること、放牧とは家畜を野外で飼育することです。
採草放牧地が農地法の規制対象に含まれている理由は、農業の継続に必要な基盤(牧草の確保・家畜の飼育スペース)を保護するためです。農地を守っても、農業に付随する採草・放牧の土地が失われれば農業経営は成り立たなくなります。そのため農地法は農地に加えてこれらの土地についても権利移動(3条)の規制を課しています。
ただし、農地転用(4条)・転用目的権利移動(5条)については農地についてのみ規制があり、採草放牧地のみの転用には4条・5条は適用されない点も押さえておきましょう(採草放牧地を別の採草放牧地用途で権利移動する場合は3条の許可対象)。
ここまでの要点は?
- 農地 = 耕作の目的に供される土地。現在の事実状態(現況)で判断し、登記簿の地目は関係ない
- 休耕地(農業経営上近い将来耕作予定)も農地に含まれる
- 採草放牧地 = 農地以外で、採草または家畜の放牧に供される土地
- 採草放牧地は農地法3条の適用対象だが、4条・5条の転用規制は農地のみに適用
過去問で確認しよう
本節の単独出題はありませんが、類似問題が農地法3条の演習問題として出題されます。「登記記録上の地目が山林となっている土地でも、現況が農地であれば農地法の規制する農地に該当する」(〇、H24-22-1相当)を典型例として記憶しておきましょう。