宅建試験に出る「その他の法令上の制限」——誰に、何の手続をするのか?
「許可が必要」は知っているが「誰の許可か」を答えられるか
宅建試験では、都市計画法・建築基準法・農地法・国土法・土地区画整理法・宅造法のほかに、多数の個別法令による規制が横断的に問われることがあります。「その他の法令上の制限」の問題は、各法令の規制内容を詳細に覚えるより「どの区域で・誰に・何の手続をするのか」を正確に把握することが攻略のカギです。
ここで注意したいのは、手続がすべて「許可」ではないことです。同じ景観法の中にも「届出」「認定」「許可」の3種類があり、森林法も「許可」と「届出」が別々に用意されています。相手方(都道府県知事・市町村長・景観行政団体の長・環境大臣・文化庁長官)とセットで、手続の種類まで押さえてください。

この規制で何を学ぶ?どう出る?
Bランクの論点で、H25・H26・H29年に連続出題されており(合計12問)、各年1問(4択形式)で出ます。試験では「景観計画区域内の建築等は景観行政団体の長への届出」「景観地区内の建築等は市町村長の認定」「土砂災害特別警戒区域内の特定開発行為は都道府県知事の許可」「自然公園の特別地域内の行為は国立公園なら環境大臣・国定公園なら都道府県知事」「文化財の現状変更は文化庁長官の許可」という、手続の種類と相手方の組み合わせの違いが問われます。
なぜ押さえる必要がある?
宅建業務では、取引対象地がさまざまな規制区域に該当しないか確認することが義務です。都市計画法・建築基準法以外にも多くの法令が土地利用を制限しており、35条書面(重要事項説明書)では「法令に基づく制限の概要」として説明が求められます。試験では各法令を横断的に比較させる問題が出るため、「どの法令がどの許可権者か」を一覧表で整理しておくことが効率的な学習方法です。
前提として何を知っておく?
宅地造成等工事規制区域等の個別規制の学習を先に終えた上で、このコマでその他の法令を横断的に確認します。法令ごとに規制区域の名称・行為制限の対象だけでなく、手続の種類(許可か届出か認定か)と相手方が異なる点に注意します。
景観法(届出・認定・許可の3本立て)
景観法は、良好な景観を形成・保全するための法律です。この法律がやっかいなのは、似た行為に対して3種類の異なる手続が用意されていて、相手方も手続の種類もそれぞれ違う点です。ここを一括りに「景観行政団体の長の許可」と覚えると、確実に取りこぼします。
①景観計画区域内の行為 → 景観行政団体の長への「届出」
景観計画区域内で、建築物の建築等(新築・増築・改築・移転、外観を変更することとなる修繕・模様替・色彩の変更)、工作物の建設等、開発行為などをしようとする者は、あらかじめ景観行政団体の長に届け出なければなりません(法16条1項)。許可ではなく届出です。
届出をした者は、景観行政団体が届出を受理した日から30日を経過した後でなければ、その行為に着手できません(法18条1項)。景観行政団体の長は、届出に係る行為が景観計画の制限に適合しないと認めるときは、届出のあった日から30日以内に勧告をすることができます(法16条3項・4項)。
②景観地区内の建築物の建築等 → 市町村長の「認定」
景観地区は、市町村が都市計画に定める地域地区です(法61条1項)。景観地区内の建築物の形態意匠は都市計画に定められた制限に適合しなければならず(法62条)、景観地区内で建築物の建築等をしようとする者は、あらかじめ、その計画がこの制限に適合することについて申請書を提出して市町村長の認定を受けなければなりません(法63条1項)。認定証の交付を受けた後でなければ工事に着手できません(法63条4項)。
相手方は「景観行政団体の長」ではなく市町村長であり、手続も「許可」ではなく認定です。①との違いが最大のひっかけポイントです。
③景観重要建造物の現状変更 → 景観行政団体の長の「許可」
景観行政団体の長は、景観計画区域内の良好な景観の形成に重要な建造物を景観重要建造物として指定できます(法19条1項)。指定された建造物の増築・改築・移転・除却、外観を変更することとなる修繕・模様替・色彩の変更をしようとする者は、景観行政団体の長の許可を受けなければなりません(法22条1項)。景観法で「許可」が出てくるのは、原則としてこの場面です。
「景観行政団体」とは誰か
景観行政団体とは、指定都市の区域では指定都市、中核市の区域では中核市、その他の区域では都道府県を指します(法7条1項)。指定都市・中核市以外の市町村でも、あらかじめ都道府県知事と協議したうえで都道府県に代わって景観行政事務を処理することとした場合は、その市町村が景観行政団体になります(法98条1項・2項)。市町村も都道府県もなり得るため、「都道府県知事」と言い切れない点に注意します。
土砂災害防止法(土砂災害特別警戒区域)
土砂災害防止法(正式名称:土砂災害警戒区域等における土砂災害防止対策の推進に関する法律)では、土砂災害の危険度に応じて区域を指定します。土砂災害特別警戒区域(レッドゾーン)内で特定開発行為を行おうとする者は、あらかじめ都道府県知事の許可を受けなければなりません(法10条1項)。
「特定開発行為」とは、開発行為のうち、予定建築物の用途が制限用途であるものをいいます。制限用途とは、住宅(自己の居住の用に供するものを除く)と、高齢者・障害者・乳幼児その他の特に防災上の配慮を要する者が利用する社会福祉施設・学校・医療施設です(法10条2項)。自己の居住用の住宅を建てるための開発行為は許可不要である点が細かいひっかけになります。
土砂災害警戒区域(イエローゾーン)については、特別警戒区域(レッドゾーン)と異なり、開発行為に対する知事の許可制は適用されず(開発行為制限なし)、主として避難体制の整備が義務づけられます。試験では「レッドゾーン=知事の許可が必要」「イエローゾーン=許可不要」の区別が問われます。
地すべり等防止法(地すべり防止区域)
地すべりが発生するおそれがある区域として指定された地すべり防止区域内で、地下水の排除を阻害する行為・地表水の浸透を助長する行為・政令で定めるのり切や切土・地すべり防止施設以外の一定の施設や工作物の新築または改良などを行おうとする者は、都道府県知事の許可を受けなければなりません(法18条1項)。地すべり防止区域の規制は都道府県知事が管轄する点を押さえます。
森林法(開発は知事の許可・伐採は市町村長への届出)
森林法も、行為の種類によって手続と相手方が変わるタイプの法律です。「森林法はすべて知事の許可」と覚えると外します。
①地域森林計画対象の民有林での「開発行為」 → 都道府県知事の許可
地域森林計画の対象となっている民有林(保安林・保安施設地区内の森林等を除く)において、開発行為——土石または樹根の採掘、開墾その他の土地の形質を変更する行為で政令で定める規模を超えるもの——をしようとする者は、都道府県知事の許可を受けなければなりません(法10条の2第1項)。いわゆる林地開発許可制度です。国・地方公共団体が行う場合などは許可が不要です(同項各号)。民有林が対象なので、国有林はこの制度の対象外です。
②地域森林計画対象の民有林での「立木の伐採」 → 市町村長への届出
同じ民有林でも、立木を伐採する場合は許可ではありません。森林所有者等は、地域森林計画の対象となっている民有林(保安林・保安施設地区内の森林を除く)の立木を伐採するには、あらかじめ市町村長に「伐採及び伐採後の造林の届出書」を提出しなければなりません(法10条の8第1項)。知事の許可ではなく市町村長への届出である点が、この法律で最も狙われるポイントです。
③保安林での伐採・形質変更 → 都道府県知事の許可
保安林は別扱いで、こちらは許可制です。保安林においては、一定の場合を除き、都道府県知事の許可を受けなければ立木を伐採してはなりません(法34条1項)。また、立竹の伐採・立木の損傷・家畜の放牧・下草や落葉落枝の採取・土石や樹根の採掘・開墾その他の土地の形質を変更する行為も、都道府県知事の許可が必要です(法34条2項)。
つまり森林法は、「開発=知事の許可」「普通の民有林の伐採=市町村長への届出」「保安林の伐採=知事の許可」の3本立てです。
自然公園法(特別保護地区・特別地域内の行為)
自然公園法は、国立公園・国定公園の区域における行為を規制します。特別保護地区または特別地域内での工作物の新築・改築、土地の形質変更などを行おうとする場合、許可権者が公園の種類によって異なる点が最重要ポイントです:
- 国立公園内:環境大臣の許可(特別地域は法20条3項・特別保護地区は法21条3項)
- 国定公園内:都道府県知事の許可(同上)
「自然公園は全て環境大臣が管理する」という誤解が生じやすいですが、国定公園は都道府県が管轄するため都道府県知事が許可権者です。この違いは試験で繰り返し問われます。
文化財保護法(重要文化財の現状変更)
重要文化財に関し、その現状を変更し、または保存に影響を及ぼすような行為をしようとする者は、原則として文化庁長官の許可を受けなければなりません(法43条1項)。都道府県知事の許可ではなく文化庁長官という国の機関が許可権者である点に注意します。
| 法令 | 規制区域・対象 | 手続 | 相手方 |
|---|---|---|---|
| 景観法 | 景観計画区域内の建築等・工作物の建設等・開発行為(法16条1項) | 届出 | 景観行政団体の長 |
| 景観法 | 景観地区内の建築物の建築等(法63条1項) | 認定 | 市町村長 |
| 景観法 | 景観重要建造物の現状変更(増築・改築・移転・除却等)(法22条1項) | 許可 | 景観行政団体の長 |
| 土砂災害防止法 | 土砂災害特別警戒区域(レッドゾーン)内の特定開発行為(法10条1項) | 許可 | 都道府県知事 |
| 地すべり等防止法 | 地すべり防止区域内の一定行為(法18条1項) | 許可 | 都道府県知事 |
| 森林法 | 地域森林計画対象の民有林の開発行為(土地の形質変更)(法10条の2第1項) | 許可 | 都道府県知事 |
| 森林法 | 地域森林計画対象の民有林の立木の伐採(法10条の8第1項) | 届出 | 市町村長 |
| 森林法 | 保安林の立木の伐採・土地の形質変更等(法34条1項・2項) | 許可 | 都道府県知事 |
| 自然公園法(国立公園) | 特別地域・特別保護地区内の工作物新築・土地形質変更等(法20条3項・21条3項) | 許可 | 環境大臣 |
| 自然公園法(国定公園) | 同上 | 許可 | 都道府県知事 |
| 文化財保護法 | 重要文化財の現状変更等(法43条1項) | 許可 | 文化庁長官 |
| 生産緑地法 | 生産緑地地区内の建築物等の新築・改築・増築、土地の形質変更等(法8条1項) | 許可 | 市町村長 |
> 青字が「許可ではない」ところ=出題者が狙う場所です。景観法の①届出(景観行政団体の長)と②認定(市町村長)、森林法の②届出(市町村長)の3つだけは、「許可」でも「知事」でもない、と覚えてください。
ここまでの要点は?
- 景観法は3本立て:①景観計画区域内の建築等 → 景観行政団体の長への届出(30日間は着手不可)/②景観地区内の建築等 → 市町村長の認定/③景観重要建造物の現状変更 → 景観行政団体の長の許可
- 景観行政団体:指定都市・中核市はその市、その他は都道府県(景観行政事務を処理する市町村はその市町村)=「都道府県知事」と言い切れない
- 土砂災害防止法:レッドゾーン内の特定開発行為 → 都道府県知事の許可(イエローゾーンは許可不要・自己居住用の住宅も制限用途から除外)
- 地すべり等防止法:地すべり防止区域内の一定行為 → 都道府県知事の許可
- 森林法も3本立て:①地域森林計画対象の民有林の開発行為 → 都道府県知事の許可/②同じ民有林の立木の伐採 → 市町村長への届出/③保安林の伐採・形質変更 → 都道府県知事の許可
- 自然公園法:国立公園 → 環境大臣、国定公園 → 都道府県知事(公園の種類で許可権者が変わる)
- 文化財保護法:重要文化財の現状変更 → 文化庁長官の許可(国の機関)
- 生産緑地法:生産緑地地区内の建築等 → 市町村長の許可
その他法令の手続と相手方
理解度マインドマップチェック
その他法令の手続と相手方
その他法令の手続と相手方
- 景観法
- 景観計画区域内の建築等
- 景観行政団体の長への届出
- 景観地区内の建築等
- 市町村長の認定
- 景観重要建造物の現状変更
- 景観行政団体の長の許可
- ひっかけ
- 言い切れない
- 景観計画区域内の建築等
- 土砂・地すべり
- 土砂災害特別警戒区域
- 都道府県知事の許可
- 土砂災害警戒区域
- 許可制なし
- 地すべり防止区域
- 都道府県知事の許可
- 土砂災害特別警戒区域
- 森林法
- 民有林の開発行為
- 都道府県知事の許可
- 民有林の立木の伐採
- 市町村長への届出
- 保安林の伐採
- 都道府県知事の許可
- 国有林
- 対象外
- 民有林の開発行為
- 自然公園
- 国立公園
- 環境大臣
- 国定公園
- 都道府県知事
- 国立公園
- 文化財・生産緑地
- 重要文化財
- 文化庁長官
- 生産緑地
- 市町村長
- 重要文化財
- 試験での見分け
- 国の機関
- 環境大臣・文化庁長官
- 許可でないもの
- 景観法(届出・認定)と森林法(伐採の届出)
- 国の機関