自分の土地で盛土をするにも「知事の許可」が必要なのか?
宅地造成等工事規制区域 ここで押さえておくべきキーワード
「自分の土地を盛り上げるだけ」では済まない
土地の所有者が自分の宅地に土を盛って高台を作ろうとした——しかし、そこが宅地造成等工事規制区域内なら、都道府県知事等の許可なしには工事を始めることができません。2011年の東日本大震災で盛土造成地の被害が深刻化し、2021年の熱海市の土石流災害を受けて法律が大きく改正された(2021年改正・通称「盛土規制法」)。不特定多数の人が住む宅地エリアで盛土が崩れれば壊滅的な被害になるため、規模に応じた許可制と届出制が整備されています。
この規制で何を学ぶ?どう出る?
宅建試験での出題数は断トツで、毎年1問、しかも2〜4つの選択肢にまたがって問われる最頻出テーマです(Aランク)。許可が必要な規模(盛土1m超・切土2m超・複合2m超・面積500㎡超)の数値を正確に覚えること、「工事主(発注者・自施工者)が申請する」という主体の確認、届出対象(規制区域指定前の既存工事)などが主な出題論点です。最近では令和7年度試験まで毎年出題が続いています。
なぜ押さえる必要がある?
宅地造成と特定盛土等は、崖崩れ・土砂流出という甚大な被害をもたらすリスクがあります。単に「土を動かす」だけでも、隣接する宅地が崩壊するような工事であれば放置できません。そのため法律は、都道府県知事等が「宅地造成等工事規制区域」を指定し、その中では一定規模以上の工事に事前許可を義務づけました。許可制度は消費者(周辺住民)を守るための規制であり、土地所有者の権利を一定程度制限する正当な根拠として社会的に認められています。
前提として何を知っておく?
宅地造成及び特定盛土等規制法(盛土規制法)全体の構造と、法律の目的・区域区分の概要を先に確認します。宅地造成等工事規制区域は法律上の3つの規制区域のうちの一つで、本節はその中の詳細ルールを学びます。
宅地造成等工事規制区域の指定(法10条)
宅地造成等工事規制区域は、宅地造成等に伴う崩壊等の危険があるおそれが大きい地域として、都道府県知事等(指定都市・中核市の市長を含む)が指定します(法10条1項)。指定する際には、関係市町村の意見を聴く手続きが必要です。区域指定の目的は、大規模な土砂崩れ・崖崩れが起きやすい地域を事前に特定し、その区域内の盛土・切土工事を事前許可で管理することにあります。
指定を受けると、市町村への通知が行われ(法10条4項)、区域内では後述の規制が適用されます。「都市計画に基づき指定する」という誤りが試験でよく出ます。宅地造成等工事規制区域の指定は都市計画の手続きによらず、都道府県知事等が単独で指定するという点が重要です。
許可が必要な工事の規模(法12条・施行令)
宅地造成等工事規制区域内で、次の規模以上の宅地造成等工事を行う場合には、工事着手前に都道府県知事等の許可が必要です(法12条1項)。
| 工事の種別 | 許可が必要な規模 |
|---|---|
| 盛土(A) | 盛土の高さが1mを超える場合 |
| 切土(B) | 切土の高さが2mを超える場合 |
| 盛土と切土(C) | 高さ(盛土部分)が2mを超える場合 |
| 盛土と切土の合計(D) | 高さが生じない場合でも2m超のもの |
| 面積 | 造成面積が500㎡を超える場合 |
許可の申請者は工事主(工事の発注者または自ら施工する者)です。工事施工者(請負業者)ではない点に注意してください。許可申請の際には、設計者の資格証明や工事計画書等の書類を提出します。
上記の規模未満の工事でも、完全に規制が外れるわけではなく、技術的基準(法13条)の遵守は全工事に義務づけられています。
区域指定前の既存工事——届出制(法14条)
宅地造成等工事規制区域の指定があった時点で、すでに区域内で宅地造成等の工事が行われていた場合は、工事主は指定があった日から21日以内に都道府県知事等へ届け出なければなりません(法14条1項)。これは「指定前から行われていた工事」に対する事後的な届出であり、新たな工事の事前許可とは性格が異なります。
試験での頻出ひっかけは「21日以内」という期限です。「30日以内」「14日以内」などの数字が選択肢に入ることがあるため、21日という数字を正確に覚えておいてください。
工事完了後の検査と定期報告
工事主は許可を受けて宅地造成等の工事が完了したときは、都道府県知事等の検査を受けなければなりません(法17条)。検査で合格すれば完了の確認がされます。検査証が交付された工事は、技術的基準(法13条)に適合していると推定されます。
また、都道府県知事等は、宅地造成等工事規制区域内の宅地の所有者等に対して、崖崩れ等の防止のために必要な措置を行うよう勧告・命令することができます(法20条・21条)。これは「工事後」のメンテナンス責任に関する規定で、工事主が変わった場合でも土地の現所有者が対象になります。
ここまでの要点は?
- 宅地造成等工事規制区域は都道府県知事等が指定(都市計画手続きではない)
- 許可が必要な規模:盛土1m超・切土2m超・複合2m超・面積500㎡超
- 許可申請者は工事主(発注者・自施工者)
- 規制区域指定前の既存工事:指定から21日以内に届出
- 工事完了後は知事等の検査が必要