2021年の熱海市伊豆山の土石流では、谷を埋めて造成された盛土が崩れ、大きな被害を出しました。これを機に、宅地造成等規制法を作り直して2023年に施行されたのが盛土規制法(正式名称:宅地造成及び特定盛土等規制法)です。
熱海が突きつけたのは「危ない盛土は、工事の前に止めるだけでは足りない。すでに造成されてしまった土地をどう見張るか」という問題でした。だからこの法律は、工事を事前にチェックする2つの規制区域に加えて、造成済みの危ない宅地を後から指定する造成宅地防災区域という仕組みを持っています。そして後述のとおり、試験でいちばん点を決めてきたのも、まさにこの防災区域です。
宅建では毎年必ず1問。H25〜R7の15回すべてで出ており、近年の定位置は問19です。

ここに注目——入れ替えられているのは、肢の1か所だけ
この科目には「崖1m・2m・500㎡……数字を覚える科目」という思い込みがあります。過去問15回・選択肢60問を分解すると、実態は違いました。出題者がやっているのは、正しい文の1か所を入れ替えることだけ。どこを入れ替えたかを15回ぶん数えると、こうなります。
| 入れ替えられた場所 | 回数 |
|---|---|
| 何が要るか | 5回 |
| どれだけ(数字) | 4回 |
| どこ(区域の内か外か) | 3回 |
| 誰 | 2回 |
| いつ | 1回 |
最多は「何が要るか」。許可か、届出か、それとも何も要らないか——「原則もう一度許可」を「届出でよい」に、「届出が必要」を「不要」に替えてきます。次に多い数字は要注意で、4回のうち規模表の数字の読み比べで決まったのは1回だけ。2回は「防災区域は盛土5m未満だと指定できない」という存在しない縛りのでっち上げでした。どこは区域の内と外の入れ替え、誰は知事と大臣・所有者と工事主の入れ替えです。
つまり、解くために必要なのは「入れ替えられた1か所に気づくこと」。そのための答え合わせの紙が、次の2枚です。
1枚目——3つの区域(どこの答え合わせ)
盛土規制法の骨格は、3つの区域です。ここが分からないまま数字に入ると、この科目は崩れます。
宅地造成等工事規制区域は、人家などに被害が及びうる場所で、工事そのものを事前にチェックする区域。特定盛土等規制区域は、市街地から離れていても下流に危害が及びうる場所です。そして造成宅地防災区域——冒頭の熱海の問題意識に応える仕組みで、既に造成済みの危ない宅地を後から指定します。
| 区域 | どこに | 入口の手続 |
|---|---|---|
| 宅地造成等工事規制区域 | 人家に被害が及びうる場所 | 知事の許可 |
| 特定盛土等規制区域 | 工事規制区域の外 | 30日前までに届出 |
| 造成宅地防災区域 | 工事規制区域の外・造成済み | 保全・勧告・改善命令 |
補足を文章で足します。指定するのは3区域とも都道府県知事で、国土交通大臣ではありません。規制がかかるのは区域の中だけ——区域の外の工事には、許可も届出も要りません。特定盛土等規制区域でも大規模な工事は許可になり、その場合は許可申請の前に説明会などで住民に周知します。防災区域に工事の許可制はなく、造成済みの土地を保全させ、危なければ勧告・改善命令を出す区域です。
2枚目——工事の流れ(いつ・何が要るかの答え合わせ)
もう1枚は、宅地造成等工事規制区域の中で工事がどう進むかの時間軸です。バラバラの暗記事項に見える期限も、流れの上に置くと1枚に収まります。
| いつの話か | 何が要るか |
|---|---|
| 区域に指定されたとき、すでに工事中 | 21日以内に届出 |
| 工事を始める前 | 知事の許可 |
| 計画を変えるとき | 原則もう一度許可 |
| 小さな工事(除却・転用) | 14日の届出 |
| 工事が終わったら | 知事の完了検査 |
| 工事のあと、ずっと | 安全に保つ努力義務 |
ここも補足は文章で。指定時にすでに工事中なら、改めての許可は不要(届出だけ)。許可が要るのは規模が基準以上の工事で、基準は下の規模の表です。高さ5m超の擁壁は有資格者の設計が要ります。計画変更のうち軽微な変更と施行者の変更は届出で足ります。「小さな工事」は擁壁・排水施設の除却(着手14日前まで)と、公共施設用地から宅地への転用(転用から14日以内)。工事のあとの努力義務を負うのは所有者・管理者・占有者で、危ないときの勧告・改善命令は工事主・施行者にも向かいます。
| 工事の種別 | 許可が必要な規模 |
|---|---|
| 盛土 | 崖1m超 |
| 切土 | 崖2m超 |
| 盛土+切土 | 合わせて崖2m超 |
| 崖を生じない盛土 | 高さ2m超 |
| 面積 | 500㎡超 |
残る2つの区域は、この流れの外に置きます。特定盛土等規制区域は、同じ流れの「工事を始める前」が30日前までの届出に変わるだけ。造成宅地防災区域は、そもそも工事の流れに乗らない造成済みの土地の話で、上の表でいえば最後の行(保全・勧告)だけが動く区域です。
実測——規模の数字で決まったのは、15回中1回
いつもの正直な実測です。上の規模の表だけで正解肢を決められたのは、15回中1回(H30:400㎡・崖1mの切土→どちらの基準にも届かず許可不要)。数字は毎年のように選択肢に登場しますが、最後に正解を分けるのは、区域と手続の理解でした。
出題分析——正解肢は、流れのどこから出たか
15回の正解肢を1つずつ、どの知識が決め手だったかで分類した出題分析のランキングです。論点がばらけて見えるのは分析だからで、覚えるときは上の2枚に戻してください。
| 正解肢を出した知識 | 流れの上の場所 | 回数 |
|---|---|---|
| 造成宅地防災区域は規制区域の外・5m未満不可の縛りはない | 3つの区域 | 4回 |
| 指定時の既存工事は届出(再許可は不要) | 指定されたとき | 2回 |
| 転用・除却は14日の届出 | 小さな工事 | 2回 |
| 区域の指定は知事・区域の外には規制なし | 3つの区域 | 2回 |
| 規模の数字 | 工事を始める前 | 1回 |
| 5m超の擁壁は有資格者の設計 | 工事を始める前 | 1回 |
| 計画の変更は原則もう一度許可 | 計画を変えるとき | 1回 |
| 特定盛土等規制区域の周知は許可申請の前 | 隣の区域 | 1回 |
| 努力義務は所有者・管理者・占有者 | 工事のあと | 1回 |
トップは造成宅地防災区域の4回。ひっかけは「規制区域の内に指定できる(×)」「5m未満は指定できない(×)」の実質2パターンしかないのに、それで4回です。冒頭の熱海から続く線が、そのまま出題の中心でした。
年度別——この教材で解けたか
1年ずつ、上の教材(2枚の表と、その下に文章で足した補足)と突き合わせて「解けたか」を判定しました。内訳まで書くと——表のセルで8回・補足の文で5回、そして「教材に無い縛りだ」と見破る判定が2回。マスにカーソルを合わせると、各年の入れ替えの場所と判定根拠が読めます。
青=2枚の表とその注記で解けた回。マスの字はずらされた場所(何=要る手続き/数=境目の数字/所=区域の内外/誰/時=いつ)。カーソルを合わせると、ずらしの種類と判定場所(セル/注記/でっち上げ)が読めます。
宅地造成等工事規制区域内において宅地造成等に関する工事を行う場合、宅地造成等に伴う災害を防止するために行う高さ4mの擁壁の設置に係る工事については、政令で定める資格を有する者の設計によらなければならない。
宅地造成等工事規制区域内において行われる宅地造成等に関する工事の許可を受けた者は、主務省令で定める軽微な変更を除き、当該工事の計画を変更しようとするときは、遅滞なく、その旨を都道府県知事に届け出なければならない。
宅地造成等工事規制区域の指定の際に、当該宅地造成等工事規制区域内において宅地造成工事を行っている者は、当該工事について改めて都道府県知事の許可を受けなければならない。
宅地造成等工事規制区域外に盛土によって造成された一団の造成宅地の区域において、造成された盛土の高さが5m未満の場合は、都道府県知事は、当該区域を造成宅地防災区域として指定することができない。
宅地造成等工事規制区域内の公共施設用地を除く土地において、政令で定める技術的基準を満たす地表水等を排除するための排水施設の除却工事を行おうとする場合は、一定の場合を除き、都道府県知事への届出が必要となるが、当該技術基準を満たす必要のない地表水等を排除するための排水施設を除却する工事を行おうとする場合は、都道府県知事に届け出る必要はない。
宅地造成等工事規制区域内において、切土であって、当該切土をする土地の面積が400㎡で、かつ、高さ1mの崖を生ずることとなるものに関する工事を行う場合には、一定の場合を除き、都道府県知事の許可を受けなければならない。
宅地造成等工事規制区域の指定の際に、当該宅地造成等工事規制区域内において宅地造成工事を行っている者は、当該工事について都道府県知事の許可を受ける必要はない。
宅地造成等工事規制区域内において、公共施設用地を宅地に転用する者は、宅地造成等に関する工事を行わない場合でも、都道府県知事の許可を受けなければならない。
宅地造成等工事規制区域は、宅地造成等に伴い災害が生ずるおそれが大きい市街地又は市街地になろうとする土地の区域又は集落の区域であって、宅地造成等に関する工事につき規制を行う必要があるものについて、国土交通大臣が指定することができる。
都道府県知事は、関係市町村長の意見を聴いて、宅地造成等工事規制区域内で、宅地造成又は宅地において行う特定盛土等に伴う災害で相当数の居住者等に危害を生ずるものの発生のおそれが大きい一団の造成宅地の区域であって一定の基準に該当するものを、造成宅地防災区域として指定することができる。
宅地造成等工事規制区域外において行われる宅地造成に関する工事について、工事主は、工事に着手する前に都道府県知事に届け出なければならない。
宅地造成等工事規制区域外に盛土によって造成された一団の造成宅地の区域において、造成された盛土の高さが5m未満の場合は、都道府県知事は、当該区域を造成宅地防災区域として指定することができない。
都道府県知事は、関係市町村長の意見を聴いて、宅地造成等工事規制区域内で、宅地造成又は特定盛土等(宅地において行うものに限る。)に伴う災害で相当数の居住者等に危害を生ずるものの発生のおそれが大きい一団の造成宅地の区域であって、一定の基準に該当するものを、造成宅地防災区域として指定することができる。
工事主は、宅地造成等工事規制区域において行われる宅地造成等に関する工事について、工事着手後2週間以内に、宅地造成等に関する工事の施行に係る土地の周辺地域の住民に対し、説明会の開催その他の当該宅地造成等に関する工事の内容を周知させるため必要な措置を講じなければならない。
宅地造成等工事規制区域内の土地の工事主又は工事施行者は、宅地造成等に伴う災害が生じないよう、その土地を常時安全な状態に維持するように努めなければならない。
最後の2回(H28・R4=5m未満は指定できない×)だけ、解き方が少し特殊です。表と突き合わせても該当する行がない——教材に無い縛りが出てきたら、でっち上げを疑う。これは過去15回の実測であって来年の保証ではありませんが、肢を読むときの確認は3つに絞れます。「要るのは許可か・届出か・不要か」「区域の内か外か」「その縛り、表にあるか」。
数字の裏づけ
論点別の内訳です。正解肢になった実績の順に並べています。
実際に正解肢になった問数の多い順。よく出ることと、そこで点が決まることは別なので、両方を並べています。
| 論点 | 出題 (肢) | 正解肢に なった数 | 出た回数 (15回中) |
|---|---|---|---|
| 造成宅地防災区域土台 | 5 | 4問 | 5回 |
| 14日の届出 | 6 | 2問 | 5回 |
| 区域の指定・区域外 | 3 | 2問 | 3回 |
| 指定時の既存工事 | 2 | 2問 | 2回 |
| 保全義務・勧告・命令 | 11 | 1問 | 9回 |
| 許可が要る規模土台 | 7 | 1問 | 6回 |
| 技術基準・有資格設計 | 7 | 1問 | 7回 |
| 計画の変更 | 4 | 1問 | 4回 |
| 特定盛土等規制区域 | 3 | 1問 | 2回 |
| 許可の手続一般 | 6 | 0問 | 6回 |
| 基礎調査 | 4 | 0問 | 4回 |
| 宅地造成の定義 | 2 | 0問 | 2回 |
横1列が15回ぶんの試験。色が濃いほど、その回に多く出た論点です。 上から出題数の多い順に並べているので、上にあるものほど優先して覚えると効率的です。
出題の量でいちばん多いのは「保全義務・勧告・命令」(11肢)と「技術基準・有資格設計」(7肢)ですが、正解肢は各1回。量と点は比例していません。逆に5肢しかない防災区域が正解肢4回。同じひっかけが年を変えて何度も戻ってくる——この科目のリサイクル性は、法令上の制限の中でも際立っています。
問題文に何回登場したかの回数です。上位の言葉ほど、本試験で目にする回数が多い=読むときに注意を向けるべき言葉です。
言葉のランキングは「宅地造成等工事規制区域」「都道府県知事」がほぼ全肢に登場。「工事主」(13回)と「所有者」(10回)が並んでいるのがこの科目らしいところで、誰の義務・誰への勧告かの入れ替えが、ひっかけの常套手段だと分かります。
まだ出ていない場所への備え
ランキングの外にも、選択肢としてよく出る(が、まだ正解肢になっていない)論点があります。許可の条件・許可証・完了検査・標識(手続一般・6肢)、基礎調査の立入り(4肢)、宅地造成の定義(2肢)。正しい肢の材料として毎年のように使われるので、過去問を回していれば自然に目に入ります。ここは他の科目の仕上がりと相談して、最後に固めれば十分です。
なお、規模の数字そのものは表ドリル(下の関連コンテンツ)で手を動かして固めてください。正解肢になったのは1回でも、選択肢の読み飛ばしを防ぐ土台になります。
結局、どうするか
数字が並ぶ見た目に怯まなくて大丈夫です。出題者が入れ替えてくるのは肢の1か所——「何が要るか」「区域の内か外か」。「3つの区域」と「工事の流れ」の2枚を答え合わせの紙にして、入れ替えられた1か所を探す。それがこの科目のいちばん割のいい入り方です。

