危険な盛土の宅地、行政はどう動く? — 造成宅地防災区域の指定と措置
造成宅地防災区域 ここで押さえておくべきキーワード
許可を受けた工事区域の外にも、危険な宅地はある
宅地造成等工事規制区域は、これから行われる工事に許可・工事基準などの規制をかける区域です。しかし、過去に造成された宅地の中には、当時の規制が今より甘かったために、擁壁の強度や排水施設が不十分なまま放置されているものがあります。これらは工事完了後の宅地であり、「これから工事をするから許可を受けろ」という規制は直接かけられません。
そのような工事規制区域の枠外にある危険宅地を対象として設けられたのが造成宅地防災区域の制度です(盛土規制法45条〜47条)。対象は、宅地造成・特定盛土等・土石の堆積に伴う崩壊や土砂流出による災害防止のために必要があると認められる区域であって、宅地造成等工事規制区域には指定されていない土地です。
この制度で何を学ぶ?どう出る?
造成宅地防災区域はCランクで、単独問題よりも選択肢の一つとして登場することが多いです。試験で問われる論点は主に3つです。①指定権者(都道府県知事等)と②区域内の所有者等の努力義務(常時安全な状態に維持する努力)、そして③知事等の行政権限(勧告・命令の2段階)です。宅地造成等工事規制区域との混同(「許可が必要か」「届出が必要か」)に注意しましょう。
なぜ押さえる必要がある?
盛土規制法の全体構造は「工事前の規制(宅地造成等工事規制区域・特定盛土等規制区域)」と「工事後の危険宅地への対応(造成宅地防災区域)」の2本立てです。造成宅地防災区域は後者のパートを担っており、宅地造成工事規制区域や特定盛土等規制区域と並んで、盛土規制法が設定する3つの区域の一つとして位置づけられます。
熱海土石流(令和3年)に代表されるように、過去に造成された盛土が後から崩れる危険は現実に起きています。そのような宅地に対して行政がどのような手を打てるかを知っておくことは、制度の実効性を理解する上でも意味があります。
前提として何を知っておく?
盛土規制法の3区域の全体像と、宅地造成等工事規制区域での許可制・工事基準を先に理解した上で読むことを勧めます。造成宅地防災区域は、それらの工事規制がかかっていない(またはかかる前の)宅地への事後対応として位置づけられます。
造成宅地防災区域の指定
都道府県知事等は、宅地造成等工事規制区域に指定されていない土地の区域で、宅地造成・特定盛土等・土石の堆積に伴う崩壊または土砂流出による災害の防止のために必要があると認めるときは、その土地の区域を造成宅地防災区域として指定することができます(45条1項)。
指定権者は都道府県知事等(政令指定都市等の市長を含む)です。宅地造成等工事規制区域や特定盛土等規制区域と同じ権者が指定する点は共通しています。また、すでに工事規制区域に指定されている土地は対象外であり、あくまで「規制の網から漏れていた危険な宅地」に対して指定される区域だという点を押さえておきましょう。
区域内の所有者等の努力義務と行政の権限
所有者等の努力義務
造成宅地防災区域内にある造成宅地の所有者・管理者・占有者は、宅地造成や特定盛土等に伴う崩壊等により危険がある場合に備えて、擁壁等の設置や改善といった必要な措置をとり、常時安全な状態に維持するよう努めなければならない(46条1項)。これは「努力義務」であり、命令や強制の前段階にある自主的な対応を求めるものです。
知事等による勧告
都道府県知事等は、区域内の造成宅地について周辺地域への危害が生じるおそれがある場合、所有者・管理者・占有者に対して擁壁等の設置または改造その他崩壊防止のために必要な措置をとるよう勧告することができます(46条2項)。勧告は行政指導であり法的強制力を持ちませんが、それでも従わない場合には次の段階へ進みます。
知事等による命令
知事等はさらに、区域内の造成宅地の崩壊が起きたまたは崩壊が明らかに差し迫っている場合に、所有者等に対して改善工事や建物の移転等を命じることができます(47条1項)。勧告→命令という段階的エスカレーションは、国土利用計画法の遊休土地措置や盛土規制法の監督処分でも共通するパターンです。
ここまでの要点は?
- 造成宅地防災区域 = 宅地造成等工事規制区域外にある危険な既成宅地。都道府県知事等が指定
- 区域内の所有者・管理者・占有者は安全維持の努力義務を負う
- 知事等は①勧告(擁壁等の設置・改造)→ ②命令(建物移転等)の段階的権限を持つ
- 宅地造成等工事規制区域や特定盛土等規制区域とは対象が異なる(工事前と工事後の違い)
過去問で確認しよう
造成宅地防災区域からの単独出題は少ないです。第6章全体(盛土規制法の構造・工事規制区域・特定盛土等規制区域・監督処分)をセットで理解した後、選択肢の一つとして確認しましょう。