許可を受けた後も安心できない?——工事の手続きと検査の義務
宅地造成等工事規制区域と特定盛土等規制区域の手続等 ここで押さえておくべきキーワード
「許可が下りればあとは自由」ではない
宅地造成等工事規制区域内で盛土・切土工事を行う際には都道府県知事等の許可が必要です。では許可さえ取れば後は自由に工事を進めてよいのか——答えは否です。許可後の工事中も技術的基準への適合が求められ、工事完了後は知事等の検査を受けなければなりません。また、規模がさらに大きい工事では特定盛土等規制区域での届出・許可という別の規制も存在します。工事の一連の流れと各手続きのタイミングを正確に把握することが、この節の目標です。
この規制で何を学ぶ?どう出る?
本節は試験最頻出の盛土規制論点の一つです(22問出題)。試験では「特定盛土等規制区域における届出・許可の規模の数値」「技術的基準への適合義務」「工事完了後の検査義務」「工事完了の検査証の位置づけ」が繰り返し出題されています。2021年の法改正(盛土規制法)後は特定盛土等規制区域の問題が増加しており、宅地造成等工事規制区域との数値の違い(届出は同じ規模、許可はより大きい規模)を区別して覚えることが重要です。
なぜ押さえる必要がある?
宅地造成工事は、盛土完了の瞬間だけでなく、工事後のメンテナンスを怠っても崩壊リスクが高まります。そのため法律は、許可申請・工事着手から工事完了・検査まで一貫した管理を義務づけました。また、2021年改正で新設された特定盛土等規制区域は、宅地ではなく農地等で行われる大規模盛土を対象とし、宅地への流入リスクを防ぐ規制を追加しました。この2区域の手続き比較は、近年の試験で複数選択肢が組み合わせで問われるため、構造的に理解することが求められます。
前提として何を知っておく?
宅地造成等工事規制区域の概要——指定の仕組みと許可が必要な規模——を先に理解した上で本節の手続きの詳細を学びます。本節は「許可を得た後」「特定盛土等規制区域」の2つの追加テーマを扱います。
許可手続きの流れ(法12条・13条・17条)
宅地造成等工事規制区域内で一定規模以上の工事を行う場合の手続きは次の通りです。
① 許可申請:工事主は工事着手前に都道府県知事等に許可申請を行います(法12条1項)。申請には設計者の資格証明書・工事計画書等が必要です。
② 許可・不許可の通知:都道府県知事等は申請から一定期間内に許可・不許可を通知します。許可に際して条件(工法の指定・崖面の保護等)を付けることができます(法12条3項)。
③ 工事中の義務:許可を受けた後も、工事は技術的基準(法13条)に従って行わなければなりません。技術的基準に従わない工事に対しては、知事が工事停止命令や原状回復命令を発することができます(法18条)。
④ 工事完了後の検査:工事が完了したときは、工事主は遅滞なく都道府県知事等に工事完了の届出をし、検査を受けなければならない(法17条1項)。検査は知事等が指定する者が行い、合格すれば検査済証が交付されます。
特定盛土等規制区域の届出・許可規模(法27条・30条)
特定盛土等規制区域は、宅地造成等工事規制区域「以外」の土地の区域で、農地等における大規模盛土が宅地に流入するリスクのある区域として都道府県知事等が指定します。
特定盛土等規制区域内での工事は、規模に応じて「届出」と「許可」に分かれます。
| 工事の種別 | 届出が必要な規模 | 許可が必要な規模 |
|---|---|---|
| 盛土の高さ(A) | 1mを超える | 5mを超える |
| 切土の高さ(B) | 2mを超える | 5mを超える |
| 複合(盛土と切土)(C) | 2mを超える | 5mを超える |
| 面積 | 500㎡を超える | 3,000㎡を超える |
| 土石の堆積 | 高さ2m超かつ面積500㎡以上 | 高さ5m超かつ面積3,000㎡以上 |
届出の場合は工事着手の30日前までに届出が必要です(法27条1項)。許可の場合は工事着手前に許可申請を行います(法30条1項)。
宅地造成等工事規制区域(届出規模は同じ・許可規模は盛土1m超・面積500㎡超)と比較すると、特定盛土等規制区域では許可が必要な規模が5m超・3,000㎡超と「より大規模」になっている点が区別のポイントです。
工事主・工事施工者の義務
許可を受けた工事においても、工事主は工事の技術的基準(施行令・国土交通省令で定める基準)に従わなければなりません(法13条1項)。技術的基準には、盛土の締固め方法・崖面の保護工法・排水設備の設置等が含まれます。知事は技術的基準への適合状況を工事中でも確認できます(法21条)。工事主は技術的基準への適合を工事完了まで継続的に義務を負うため、「許可を得たら後は自由」という認識は誤りです。
工事完了後、工事主は都道府県知事等の検査を受け、合格した場合にのみ「検査済証」が交付されます(法17条)。検査済証の取得は宅地造成工事の完了を公式に証明するものであり、未検査の状態での宅地販売は問題となりえます。また、工事完了届の提出から検査までの間、当該宅地の使用は制限されることがある点にも留意が必要です。
ここまでの要点は?
- 許可後も技術的基準への適合義務が継続する
- 工事完了後:工事主は都道府県知事等の検査を受けなければならない(法17条)
- 特定盛土等規制区域の届出は着手30日前まで(届出規模は宅地造成等工事規制区域と同じ)
- 特定盛土等規制区域の許可規模:高さ5m超・面積3,000㎡超(宅地造成等工事規制区域より大規模)