宅建の本試験は50問。そのうち「法令上の制限」は8問です。都市計画法、建築基準法、盛土規制法、土地区画整理法……聞き慣れない用語が続き、宅建でいちばん苦手意識が生まれやすい場所でもあります。
その8問の中で、農地法は得点源です。毎年必ず1問。15回(平成25年〜令和7年)すべてで出題され、令和以降は9回続けて問21に置かれています。そして覚える中心は、5行の比較表1枚です。
実際、法令上の制限を全部は追いかけず、農地法と国土利用計画法の2問に絞って確実に取りにいく——そういう戦い方をする受験生も少なくありません。どちらもほぼ毎年1問出て、覚える中心が表1枚に収まり、しかも毎年ほとんど同じ形で聞かれるからです。
では、その表1枚でどこまで取れるのか。このページは、過去問13年分・選択肢60問を1つずつ分解して数えた分析です。結論から言うと、15回中9回は、比較表だけで正解肢を当てられました。
覚える中心は「3条・4条・5条の比較表」1枚
農地法の問題は、ほとんどがこの2つの質問から始まります。
- その行為で、農地を使う人が変わるか(権利移動)
- その行為で、農地が農地でなくなるか(転用)
権利移動だけなら3条。自分の農地を転用するだけなら4条。両方セットなら5条。この型に、対象の土地・許可権者・市街化区域の特例・無許可の効力を重ねたのが、次の比較表です。当サイトの比較表ページ(下の関連コンテンツの筆頭)に置いてあるものと同じ内容を、そのまま載せます。
| 3条(権利移動) | 4条(転用) | 5条(転用目的権利移動) | |
|---|---|---|---|
| 規制される場面 | 農地を農地のまま売買・貸借 | 自分の農地を農地以外に転用 | 農地以外にする目的で売買・貸借 |
| 対象となる土地 | 農地・採草放牧地 | 農地のみ | 農地・採草放牧地 |
| 許可権者 | 農業委員会 | 都道府県知事等 | 都道府県知事等 |
| 市街化区域内の特例 | 特例なし(許可が必要) | あらかじめ農業委員会へ届出で足りる | あらかじめ農業委員会へ届出で足りる |
| 無許可の契約の効力 | 無効 | ―(権利移動を伴わない) | 無効 |
5行だけの小さな表です。ただし試験で効くのは、この表を「行ごとに」使えることです。競売で取得しても所有権は移るから権利移動、一時的に貸して砂利を採らせるのも権利設定+転用、原野を農地にするのは転用の逆向きだから4条の場面ではない——問題文がどう装っても、場面の行に当てはめれば結論が出ます。
その表で「実際に取れた年」は、15回中9回
「比較表だけで、本当に点になるのか」。開発許可の分析と同じ方法で、農地法15問すべての正解肢が比較表の範囲だったかを年度別に数えました。
青=正解肢が比較表の範囲(3・4・5条の型/市街化区域の特例/無許可の効力)だった回=表を持っていれば1問取れた年。マスの数字は、4つの選択肢のうち比較表の範囲だった数です。
農業者が相続により取得した市街化調整区域内の農地を自己の住宅用地として転用する場合でも、法第4条第1項の許可を受ける必要がある。
農業者が住宅の改築に必要な資金を銀行から借りるため、市街化区域外の農地に抵当権の設定が行われ、その後、返済が滞ったため当該抵当権に基づき競売が行われ第三者が当該農地を取得する場合であっても、法第3条1項又は法第5条1項の許可を受ける必要がある。
法第3条第1項又は法第5条第1項の許可が必要な農地の売買について、これらの許可を受けずに売買契約を締結しても、その所有権の移転の効力は生じない。
市街化区域内の農地を宅地とする目的で権利を取得する場合は、あらかじめ農業委員会に届出をすれば法第5条の許可は不要である。
耕作目的で原野を農地に転用しようとする場合、法第4条第1項の許可は不要である。
法第3条第1項の許可が必要な農地の売買については、この許可を受けずに売買契約を締結しても所有権移転の効力は生じない。
耕作を目的として農業者が競売により農地を取得する場合であっても、法第3条第1項の許可を受ける必要がある。
砂利採取法第16条の認可を受けて市街化調整区域内の農地を砂利採取のために一時的に借り受ける場合には、法第5条第1項の許可は不要である。
市街化区域内の自己所有の農地を駐車場に転用するため、あらかじめ農業委員会に届け出た場合には、法第4条第1項の許可を受ける必要がない。
結果は15回中9回。内訳は、3・4・5条の型が5回、無許可の効力が2回、市街化区域の特例が2回です。5行の表の上3行と下2行が、まんべんなく点を決めています。
取れなかった6回の正解肢も、種類は多くありません。
- 抵当権・仮登記(H26・R6)——権利移動に当たるかの判定。表には書かれていない
- 相続の届出(H29)——許可不要でも、農業委員会への届出は必要
- 面積の認定(R4)——原則は登記簿の地積。著しく違えば農業委員会が認定
- 2アール未満の例外(R5)——自分の農業用施設なら4条許可不要。4アールは必要
- 法人の罰金(R7)——違反転用は法人に1億円以下の罰金
ここで正直に書いておきたいのが、抵当権です。比較表の場面の行だけを見ると「権利の設定=3条」と読めてしまいますが、抵当権の設定は使用収益する権利ではないので、3条許可は不要です。誤りの選択肢の材料として15回で5回も使われた、農地法いちばんのひっかけです。表を覚えたら、この1行を必ず横に置いてください。
数字の裏づけ
論点別の内訳です。正解肢になった実績の順に並べています。
実際に正解肢になった問数の多い順。よく出ることと、そこで点が決まることは別なので、両方を並べています。
| 論点 | 出題 (肢) | 正解肢に なった数 | 出た回数 (15回中) |
|---|---|---|---|
| 3条・4条・5条の型土台 | 9 | 5問 | 5回 |
| 市街化区域の届出特例土台 | 8 | 2問 | 8回 |
| 権利移動に当たるか | 7 | 2問 | 6回 |
| 無許可の契約の効力 | 4 | 2問 | 4回 |
| 相続・遺産分割 | 6 | 1問 | 6回 |
| 農地の定義 | 6 | 1問 | 6回 |
| 許可不要の例外 | 5 | 1問 | 5回 |
| 申請手続・罰則 | 3 | 1問 | 3回 |
| 賃貸借の保護土台 | 6 | 0問 | 5回 |
| 誰が取得できるか | 4 | 0問 | 4回 |
| 許可の基準 | 2 | 0問 | 1回 |
横1列が15回ぶんの試験。色が濃いほど、その回に多く出た論点です。 上から出題数の多い順に並べているので、上にあるものほど優先して覚えると効率的です。
注目は「市街化区域の届出特例」の行です。選択肢60問中8問、15回中8回と、ほぼ2年に1度は出ています。しかも聞かれ方は毎回同じで、「4条・5条は届出で足りる(正しい)」か「3条にも特例がある(誤り)」か「調整区域にも使える(誤り)」の3パターンしかありません。
そしてこの行は、都市計画法で固めた土台がそのまま点になる場所です。市街化区域か市街化調整区域か——都市計画法の区域区分を知らないと、この特例は使えません。都市計画法のコスパ分析(下の関連コンテンツ)で「区域区分は他の科目の土台」と書いた、その回収先がここです。
選択肢に出てくる言葉を数えても、同じ景色になります。
問題文に何回登場したかの回数です。上位の言葉ほど、本試験で目にする回数が多い=読むときに注意を向けるべき言葉です。
「許可」「転用」に続いて「市街化区域」が13回、「農業委員会」が12回。比較表の下2行(特例・許可権者)で使う言葉が、そのまま上位に並びます。
表の外の6回に、どこまで備えるか
まず、追加の暗記がほとんど要らない3点から足します。
- 抵当権の設定は3条許可不要(使う人が変わらない)。ただし競売まで進んで第三者が取得すれば、権利移動として許可が必要
- 相続・遺産分割は3条許可不要。ただし農業委員会へ届出(遅滞なく)。相続人でない人への特定遺贈は、通常どおり3条許可が必要
- 農地かどうかは登記の地目ではなく現況で判断。地目が山林でも、耕していれば農地
この3点で、表の外の6回のうち3回(H26・H29・R4)に届きます。誤りの選択肢まで含めれば、現況主義は6肢、相続系も6肢と、どちらも常連です。
残る細目——2アール未満の数字、仮登記に許可不要、法人の罰金1億円、賃貸借の保護——は、他の科目の仕上がりと相談して積み増す範囲です。ひとつだけ傾向を挙げると、令和6年は4肢中3肢、令和7年も1肢が賃貸借の保護(引渡しで対抗できる・解約等には知事の許可)でした。直近2年は出題がここに寄っています。時間を回せるなら、次の一手はここです。
結局、どうするか
同じ法令上の制限でも、都市計画法は2問のために判断表と土台をそろえる科目でした。農地法は、5行の比較表1枚と追加の3点で、毎年の1問の大半に手が届きます。覚える量に対して返ってくる点がいちばん大きい——法令上の制限を始めるなら、最初の1問はここです。


