宅建の本試験は50問。そのうち都市計画法は、毎年2問だけです。全体の4%。
しかも、この2問の中身は15回(平成25年〜令和7年)すべてで同じ構成でした。「都市計画の仕組み」から1問、「開発許可」から1問。
2問のために、都市計画法の全部を覚えるのは割に合いません。このページは、過去問13年分・選択肢119問を1つずつ分解して、この2問にどれだけ時間をかけ、どこに絞るかを数字で決めるための分析です。
先に取るのは開発許可 — 覚えるのは「1枚の判断表」
開発許可の選択肢59問のうち、33問(56%)は「許可が要るか、要らないか」を答えさせる問題です。そしてこの33問は、すべて同じ手順で処理できます。
- そもそも開発行為か(建築物・特定工作物の目的で、土地の区画形質を変更するか)
- どの区域か
- その区域での面積の基準を超えるか
- 許可不要の例外に当たらないか
覚えるのは、この1枚です。当サイトの判断表ページに置いてあるものと同じ表を、そのまま載せます。
| 場所 | 小規模なら不要 | 農林漁業なら不要 | 場所・面積を問わず不要 |
|---|---|---|---|
| 市街化区域 | 1,000㎡未満は不要 既成市街地等は500㎡未満/条例で引下げあり | 市街化区域では例外なし | 許可不要に入る 駅舎・図書館・公民館・博物館・変電所 等(これらに類する公益上必要な建築物) 都市計画事業・土地区画整理事業等 非常災害の応急措置・仮設・軽易な行為等 ここには入らない 学校・病院・診療所・社会福祉施設 |
| 市街化調整区域 | 規模に関係なく許可が必要 1㎡でも許可が必要。最頻出の正解肢 | 農林漁業用建築物・農家住宅 市街化区域以外なら不要 | |
| 非線引き都市計画区域 | 3,000㎡未満は不要 | ||
| 準都市計画区域 | 3,000㎡未満は不要 | ||
| 都市計画区域・準都市計画区域外 | 1ha(10,000㎡)未満は不要 |
見方は手順のとおり、場所 → 面積 → 何を作るか。左の2列(場所×面積)で決まらなくても、農林漁業の列と右端の例外の列まで見て、初めて結論が出ます。実際、後述のとおりこの表で正解肢を当てた9回の内訳は例外6・面積2——点を決めているのはむしろ右側の列です。ひっかけの定番も右端に書いてあるとおり、学校・病院・診療所は「公益上必要な建築物」に入らず、許可が必要。ここは毎年のように突かれます。
市街化区域の500㎡は、市販の表には載っていないことが多い注記です。令和3年10月には、まさにここを突く選択肢(既成市街地内の市街化区域・800㎡→許可必要)が出ています。
なお、数字の覚え方はひとつだけ意識してください。過去問には1,000・2,000・4,000・800…とバラバラな数字が出てきますが、覚えるのは基準の側です。「非線引き・準都計は3,000㎡未満なら不要」の1行を持っておき、問題の数字は基準と見比べて判定する。初めて見る数字が出ても、やることは同じです。
その表で「実際に取れた年」は、15回中9回
「表で解ける問題が、本当に毎年出るのか」。ここがこの分析の核心です。開発許可の15問すべてについて、正解肢が判断表の範囲(定義・面積・例外)だったかを年度別に数えました。
青=正解肢が判断表の範囲(定義・面積・例外)だった回=表を持っていれば1問取れた年。マスの数字は、4つの選択肢のうち判断表の範囲だった数です。
市街化区域において行う開発行為で、市町村が設置する医療法に規定する診療所の建築の用に供する目的で行うものであって、当該開発行為の規模が1,500平方メートルであるものについては、開発許可は必要である。
市街化区域内において、農業を営む者の居住の用に供する建築物の建築の用に供する目的で1,000㎡の土地の区画形質の変更を行おうとする者は、あらかじめ、都道府県知事の許可を受けなければならない。
準都市計画区域内において、農業を営む者の居住の用に供する建築物の建築を目的とした1,000㎡の土地の区画形質の変更を行おうとする者は、あらかじめ、都道府県知事の許可を受けなければならない。
準都市計画区域において、店舗の建築を目的とした4,000㎡の土地の区画形質の変更を行おうとする者は、あらかじめ、都道府県知事の許可を受けなければならない。
市街化区域において、社会教育法に規定する公民館の建築の用に供する目的で行われる1,500㎡の土地の区画形質の変更を行おうとする者は、都道府県知事の許可を受けなくてよい。
首都圏整備法に規定する既成市街地内にある市街化区域において、住宅の建築を目的とした800㎡の土地の区画形質の変更を行おうとする者は、あらかじめ、都道府県知事の許可を受けなければならない。
区域区分が定められていない都市計画区域内において、博物館法に規定する博物館の建築を目的とした8,000㎡の開発行為を行おうとする者は、都道府県知事の許可を受けなくてよい。
市街化区域内において行う、医療法に規定する病院を建築するための1,000㎡の開発行為については、法第29条に基づく都道府県知事の許可を得る必要がある。
結果は15回中9回。およそ3回に2回は、判断表を持っていれば正解肢を当てられました。毎年ではありません。だから「表さえあれば毎年1問」とは言いません。正確には、こうです。
- 9回(青):正解肢が判断表の範囲。表で1問取れた
- 5回(H27・H28・R2(10月)・R3(12月)・R5):手続や建築制限がまとめて出た年。表では取れない
- 1回(R7):許可基準(33条)が正解肢。表の外——ただし、表があれば4肢のうち2肢(ゴルフコースの定義・4,000㎡の面積)を消して2択まで絞れました
取れない5回への保険が、許可の手続です。申請前の協議→変更の届出→工事の廃止→完了公告→地位の承継という流れが、出る年は1問の大半(4肢中3肢)を占めます。表の次は、この流れを一度通しで覚える。この2つで、開発許可の1問はかなり堅くなります。
ちなみにこの3,000㎡の基準、令和元年には正しい肢として出題され、令和7年には誤り肢の材料として戻ってきました。同じルールが正誤の向きを変えて再登場する——この出題の癖は、出題分析ページ(下の関連コンテンツ)で詳しく扱っています。
開発許可の数字の裏づけ
論点別の内訳です。正解肢になった実績の順に並べています。
実際に正解肢になった問数の多い順。よく出ることと、そこで点が決まることは別なので、両方を並べています。
| 論点 | 出題 (肢) | 正解肢に なった数 | 出た回数 (15回中) |
|---|---|---|---|
| 許可の要否:例外 | 19 | 6問 | 9回 |
| 開発区域内・調整区域内の建築制限 | 9 | 3問 | 7回 |
| 許可の手続 | 14 | 2問 | 6回 |
| 許可の要否:区域と面積 | 9 | 2問 | 7回 |
| 許可基準 | 3 | 1問 | 2回 |
| 開発行為の定義土台 | 5 | 0問 | 5回 |
正解肢のトップは「許可の要否:例外」の6問。公益施設・農林漁業・事業系という例外の側が、点を決めていることが分かります。判断表の手順4(例外に当たるか)が、それだけ効くということです。
選択肢に出てくる言葉を数えても、同じ景色が見えます。
問題文に何回登場したかの回数です。上位の言葉ほど、本試験で目にする回数が多い=読むときに注意を向けるべき言葉です。
1位の「都道府県知事」は許可権者としてほぼ全肢に登場。注目は「市街化調整区域」が「市街化区域」より多いことです。試験は、原則どおりの市街化区域より、規制の厳しい調整区域のほうを好んで聞いてきます。「調整区域」と見たら、規模に関係なく原則許可が必要(例外は表の右側だけ)と思い出す——そういう読み方の根拠になる数字です。
もう1問(都市計画の仕組み)は、土台を固めて、深追いしない
では、もう1問の「都市計画の仕組み」はどうするか。結論は「やらない」ではなく「土台を固めて、深追いしない」です。この違いは大事なので、先に理由を言います。
都市計画法の言葉は、他の科目の土台になっています。市街化区域か市街化調整区域か——この区別は開発許可(選択肢59問中31問に区域の語が登場)だけでなく、農地法でも60肢中13肢に市街化区域が絡み、正解肢レベルでも3問を決めています(市街化区域内の農地転用は届出で足りる、の系統)。用途地域の名前は建築基準法の用途規制・建蔽率・容積率・斜線制限の表を引く鍵です。ここを知らないと、都市計画法の2問どころか、法令上の制限の広い範囲で引っかかります。
そのうえで、仕組み側の出題そのものは深追いしない、という配分です。
横1列が15回ぶんの試験。色が濃いほど、その回に多く出た論点です。 上から出題数の多い順に並べているので、上にあるものほど優先して覚えると効率的です。
実際に正解肢になった問数の多い順。よく出ることと、そこで点が決まることは別なので、両方を並べています。
| 論点 | 出題 (肢) | 正解肢に なった数 | 出た回数 (15回中) |
|---|---|---|---|
| 補助的地域地区 | 20 | 5問 | 11回 |
| 地区計画 | 13 | 5問 | 9回 |
| 都市施設・市街地開発事業 | 6 | 3問 | 4回 |
| 区域区分土台 | 3 | 1問 | 3回 |
| 用途地域土台 | 10 | 0問 | 7回 |
| 事業地・施設区域内の建築制限 | 6 | 0問 | 3回 |
| 都市計画の決定 | 2 | 0問 | 2回 |
出題数のトップは補助的地域地区(20問・15回中11回)ですが、高度地区・高度利用地区・特定街区・特別用途地区・特定用途制限地域……と10種類の制度が登場します。開発許可のように1枚の表に集約できず、覚える量が制度の数だけ増えていく論点です。
そこで、誤った選択肢11問を「どの知識を言い換えたか」まで分解すると、頻出は2つでした。
- 特定用途制限地域は、用途地域が定められていない区域に定める(4問)
- 高度地区は、建築物の高さの最高限度または最低限度を定める(3問)
この2つで誤り11問中7問。仕組み側に時間をかけるなら、まずこの2つを確実にして、残りは他の科目を固めてからで十分です。
実績表の「土台」バッジが、冒頭で言った土台の正体です。用途地域は正解肢0問ですが、捨ててはいけない論点。建築基準法では用途地域がからむ13問中9問で正解肢が用途地域がらみでしたし、上の頻出ルール(特定用途制限地域)も「用途地域があるか無いか」で判定します。最低限として、13種類の名前と系統(住居系8・商業系2・工業系3)、市街化区域/調整区域の違い——ここまでは、仕組み1問のためではなく法令上の制限全体のために固めておいてください。
仕組み側の選択肢に出てくる言葉も、上位は制度名で埋まります。読むときに注意を向けるべき言葉が、そのまま順位になっています。
問題文に何回登場したかの回数です。上位の言葉ほど、本試験で目にする回数が多い=読むときに注意を向けるべき言葉です。
結局、どうするか
50問のうちの2問に、かける時間は最小限でいい。ただし、毎回出ると分かっている1問を、取れる形で取りにいく。それがこのページで数えてきた、都市計画法とのいちばん割のいい付き合い方です。


