「土地を造成して建物を建てたい」——必ず許可が要るのか?
「区域によって許可の要否が変わる」——開発行為の規制の仕組み
土地を整地・造成して建物を建てるためには、まず土地の形質を変える工事が必要になります。こうした工事を開発行為といい、都市計画法は無秩序な開発を防ぐために、一定の開発行為には都道府県知事の許可(開発許可)を事前に受けることを義務づけています(法29条1項)。ただしすべての開発行為に許可が必要なわけではなく、区域・規模・目的によって許可が不要になる場合があります。この「要る・要らない」の切り分けが試験の最重要論点です。
なお許可権者は、条文上は都道府県知事ですが、指定都市・中核市の区域内では当該市の長になります(法29条1項の「指定都市等の長」)。本試験では施行時特例市も含めて、問題文の冒頭に「この問において『都道府県知事』とは、地方自治法に基づく指定都市、中核市及び施行時特例市にあってはその長をいう」という断り書きが置かれるのが通例です。以下、本節では単に「都道府県知事」と書きます。

この規制で何を学ぶ?どう出る?
Aランクの最重要論点で82問という大量の過去問が積み上がっています。試験では①「開発行為の定義(土地の区画形質の変更)」②「市街化区域では1,000㎡未満は許可不要(三大都市圏の既成市街地等では500㎡未満)」③「市街化調整区域では規模に関係なく許可必要」④「非線引き都市計画区域・準都市計画区域では3,000㎡未満は許可不要」⑤「都市計画区域・準都市計画区域外では1ha未満は許可不要」⑥「農林漁業用建築物・農林漁業者の住居は市街化区域以外で許可不要」⑦「公益上必要な建築物(図書館・公民館・変電所等)は許可不要——ただし学校・病院・診療所・社会福祉施設はここに入らず許可が必要」の7点が繰り返し問われます。
なぜ押さえる必要がある?
宅建業者として土地売買に関わるとき、取引の対象地で予定している開発行為に許可が必要かを確認する必要があります。開発許可を得ずに着手した場合は工事停止・原状回復命令の対象となります。特に市街化調整区域の土地を扱う場合は「規模に関係なく許可が必要」という点が重要であり、「小規模だから許可不要」という誤解が重大なミスにつながります。
前提として何を知っておく?
→ 都市計画の内容
都市計画の内容で区域区分(市街化区域・市街化調整区域・非線引き都市計画区域)の違いを先に理解します。開発許可の要否判断は区域によって異なるため、区域の定義が頭に入っていないと許可の要否が判定できません。
開発行為の定義(法4条12項)
開発行為とは、主として建築物の建築または特定工作物の建設の用に供する目的で行う土地の区画形質の変更をいう(法4条12項)。
「土地の区画形質の変更」には、土地の区画変更(境界の変更)・形状変更(切土・盛土)・性質変更(農地を宅地にする等の地目変更)が含まれます。
建物を建てるために土地を造成する行為が典型例です。逆に言えば、建物や特定工作物を建てる目的がなければ、土地を整地しても開発行為には当たりません(例:青空駐車場のための舗装工事→開発行為ではない)。
特定工作物には2種類があります:
- 第一種特定工作物:コンクリートプラント・アスファルトプラント・クラッシャープラント等(周辺環境悪化のおそれのある工作物)
- 第二種特定工作物:ゴルフコース(面積不問)、1ha以上の野球場・動物園・遊園地等のレジャー施設
重要なのは「ゴルフコースは面積に関係なく第二種特定工作物(開発行為の対象)」「テニスコートは1ha未満であれば第二種特定工作物に該当しない」の区別です。
開発許可が必要な場合・不要な場合(法29条)
開発行為に該当する場合、原則として都道府県知事の開発許可が必要ですが、区域・規模・目的によって例外(許可不要)が定められています。
① 規模による許可の要否(法29条1項1号):
| 区域 | 許可不要の規模 | 注意点 |
|---|---|---|
| 市街化区域 | 1,000㎡未満は不要 三大都市圏の既成市街地等は500㎡未満は不要 |
条例で下限300㎡まで引き下げ可 |
| 市街化調整区域 | 規模に関係なく許可必要 | 小規模でも必ず許可が必要 |
| 非線引き都市計画区域 | 3,000㎡未満は不要 | 3,000㎡以上は許可必要 |
| 準都市計画区域 | 3,000㎡未満は不要 | 3,000㎡以上は許可必要 |
| 都市計画区域・準都市計画区域外 | 1ha(10,000㎡)未満は不要 | 1ha以上は許可必要 |
[「開発許可の判断表」で、実際の過去問を解いてみる →](/table-drill/horei-kaihatsu-kyoka-menseki)
「市街化調整区域のみ規模に関係なく許可が必要」という点が試験で最も頻出の正解肢です。100㎡でも1㎡でも許可が必要です。
三大都市圏の既成市街地等の500㎡も落とせません。首都圏整備法の既成市街地・近郊整備地帯、近畿圏整備法の既成都市区域・近郊整備区域、中部圏開発整備法の都市整備区域にある市街化区域では、許可不要のラインが1,000㎡ではなく500㎡未満まで下がります(令19条1項ただし書)。「首都圏整備法に規定する既成市街地内にある市街化区域で、住宅の建築を目的とした800㎡の開発行為には許可が必要」という肢は、原則の1,000㎡だけを覚えていると「不要」と誤判断してしまう典型です。なお条例で下限を引き下げる場合も300㎡が下限です(同条2項)。
目的による許可不要(法29条1項2〜11号)
規模に関係なく許可が不要となる開発行為があります:
② 農林漁業用建築物のための開発行為(法29条1項2号):市街化区域以外の区域で、農業・林業・漁業の用に供する建築物(農舎・畜舎・サイロ等)または農林漁業者の居住用建築物を建設するための開発行為は、市街化区域以外であれば許可不要です。
市街化区域内では、農業目的の建築物でも開発許可が必要になる点に注意してください。農業者でも市街化区域では許可を取る必要があります。
③ 公益上必要な建築物のための開発行為(法29条1項3号):次の公益施設を建設するための開発行為は、区域・規模を問わず許可不要です:
- 駅舎その他の鉄道の施設
- 図書館・公民館・変電所
- 博物館など、これらに類する公益上必要な建築物として政令(令21条)で定めるもの
「図書館・公民館を建てるための開発行為は許可不要」は試験頻出の正解肢です。
ただし「公益的な施設なら何でも許可不要」ではありません。 法29条1項3号の対象は令21条の限定列挙であり、そこに載っていない施設は許可が必要です。特に 学校(大学・専修学校等を含む)・病院・診療所・社会福祉施設は、平成19年11月30日施行の改正で対象から外され、開発許可が必要になりました。ここが最も狙われるひっかけです。
- 市街化区域で、市町村が設置する診療所のための1,500㎡の開発行為 → 許可必要(1,000㎡以上)
- 市街化調整区域で、病院のための1,000㎡・1,500㎡の開発行為 → 許可必要(規模に関係なく必要)
- 区域区分が定められていない都市計画区域で、博物館のための8,000㎡の開発行為 → 許可不要(令21条に載っている)
なお、国や都道府県等が設置する場合でも許可の対象から外れるわけではありません。国の機関・都道府県等が行う開発行為については、都道府県知事との協議の成立をもって開発許可があったものとみなされる(法34条の2第1項)という別の仕組みが用意されているだけで、「許可不要」ではない点に注意してください。
④ 都市計画事業・土地区画整理事業等として行う開発行為:都市計画事業・土地区画整理事業・市街地再開発事業等の公共的な事業として行う開発行為は許可不要です(法29条1項4〜9号)。
⑤ 非常災害時の応急建築物・仮設建築物:非常災害に際する応急仮設建築物や、通常の管理行為・仮設建築物に関する開発行為も許可不要です(法29条1項10号・11号)。
開発許可の手続き
開発許可が必要な場合、工事着手前に一定の手続きを踏む必要があります:
事前の協議:申請前に、開発行為に関係する公共施設の管理者と協議・同意を得ます(法32条1項)。また、開発後に設置される公共施設の管理者となる者等とも協議が必要です(法32条2項)。
許可申請:都道府県知事に開発許可申請書を提出します(法30条)。
工事完了・検査・公告:工事完了後の流れは3ステップです(法36条)。①開発許可を受けた者が、工事を完了した旨を都道府県知事に届け出る(同1項)→②知事が検査し、許可の内容に適合していれば検査済証を交付する(同2項)→③知事が、検査済証を交付したときに遅滞なく工事完了の公告をする(同3項)。届出は許可を受けた者、検査・検査済証の交付・公告はいずれも知事が行います。「開発許可を受けた者が工事完了の公告をしなければならない」という肢は、主体を入れ替えた誤りです。
建築の制限:開発許可を受けた開発区域内では、③の工事完了の公告があるまでの間、建築物の建築・特定工作物の建設ができません(法37条)。基準は「検査済証の交付を受けたこと」ではなく公告です(②と③は別のステップなので、検査済証が交付されてもまだ建築できません)。
ただし公告前でも、①工事用の仮設建築物等を建築するとき、②都道府県知事が支障がないと認めたとき、③開発行為に同意していない土地の所有者等がその権利の行使として建築するときは、建築できます(法37条1号・2号)。③は権利行使そのものなので、知事の承認は不要です(「知事が支障がないと認めたときでなければ建築できない」とする肢は誤り)。
ここまでの要点は?
- 開発行為:建物や特定工作物を建てる目的で行う土地の区画形質の変更
- ゴルフコース:面積不問で第二種特定工作物(開発行為の対象)
- 市街化区域:1,000㎡未満は不要(三大都市圏の既成市街地等は500㎡未満/条例で下限300㎡まで引き下げ可)
- 市街化調整区域:規模に関係なく許可必要
- 非線引き・準都市:3,000㎡未満不要
- 都計区域・準都計区域外:1ha未満不要
- 農林漁業用建築物:市街化区域以外で許可不要
- 図書館・公民館・変電所・博物館等(令21条の限定列挙):許可不要
- 学校・病院・診療所・社会福祉施設はここに入らない=許可必要(平成19年11月30日施行の改正)
- 工事完了後:知事の工事完了の公告があるまで建築できない(検査済証の交付ではない・法37条)
- 許可権者:都道府県知事(指定都市・中核市・施行時特例市の区域内では当該市の長)
開発行為の規制
理解度マインドマップチェック
開発行為の規制
開発行為の規制
- 開発行為に当たるか
- 建築・建設の目的
- 建築物
- 建築物
- 特定工作物
- 特定工作物
- 建築物
- 土地の区画形質の変更
- 区画変更
- 土地の境界を変えること
- 形状変更
- 切土・盛土など
- 性質変更
- 農地を宅地にすることなど
- 区画変更
- 開発行為に当たらない例
- 青空駐車場
- 原則として開発行為ではない
- 青空駐車場
- 建築・建設の目的
- 特定工作物の判断
- 第一種特定工作物
- 代表例
- コンクリート・アスファルト・クラッシャープラント
- 判断ポイント
- 悪化のおそれがある工作物
- 代表例
- 第二種特定工作物
- ゴルフコース
- 面積不問で対象
- レジャー施設
- 1ha以上で対象
- テニスコート
- 対象にならない
- ゴルフコース
- 第一種特定工作物
- 区域と規模で切る
- 市街化区域
- 許可不要ライン
- 1,000㎡未満
- 既成市街地等の特例
- 500㎡未満
- 条例での引下げ
- 300㎡未満
- 許可不要ライン
- 市街化調整区域
- 規模の扱い
- 規模に関係なく許可必要
- 試験の核心
- 許可必要
- 規模の扱い
- 非線引き都市計画区域・準都市計画区域
- 許可不要ライン
- 3,000㎡未満
- 許可必要ライン
- 3,000㎡以上
- 許可不要ライン
- 都市計画区域・準都市計画区域外
- 許可不要ライン
- 1ha未満
- 許可必要ライン
- 1ha以上
- 許可不要ライン
- 市街化区域
- 目的で許可不要
- 農林漁業用建築物
- 対象
- 農舎・畜舎・サイロ・農林漁業者の住居
- 区域の条件
- 市街化区域以外
- 注意点
- 許可が必要
- 対象
- 公益上必要な建築物
- 代表例
- 図書館・公民館・変電所・博物館
- 許可の要否
- 不要
- ここに入らないもの
- 対象外=許可が必要
- 代表例
- 公共的な事業・災害対応
- 都市計画事業など
- 許可不要
- 応急仮設建築物
- 許可不要
- 都市計画事業など
- 農林漁業用建築物
- 開発許可の手続き
- 工事前
- 公共施設管理者との協議
- 協議・同意
- 許可申請
- 都道府県知事
- 公共施設管理者との協議
- 工事後
- 完了届と検査
- 検査
- 検査済証
- 検査済証
- 工事完了の公告
- 工事完了の公告をする
- 完了届と検査
- 建築制限
- 建築できない期間
- 工事完了の公告があるまで
- 例外
- 工事用仮設建築物・知事が支障なしと認めたとき・不同意者の権利行使
- 建築できない期間
- 工事前