「都市計画施設の区域内」に建物を建てるには許可が要るのか?
「ここに公園を作る計画がある」——でも今はまだ空き地の段階
都市計画で「この場所に都市施設(道路・公園・学校等)を整備する」と決まっても、すぐに工事が始まるわけではありません。計画から事業認可、そして実際の施工まで長い期間がかかります。その間、計画地内に勝手に建物を建てられてしまうと、後で事業施行の障害になってしまいます。そのため、都市計画事業の各段階に応じた建築行為等の制限が設けられています。
図解 / 法令上の制限
都市計画事業は、決定告示から認可告示を経て施行へ進む
計画決定後と事業認可後の建築規制を分ける
都市計画事業について、都市計画の決定告示、都市計画施設区域内の建築規制、事業認可・承認告示、事業地内の建築規制、事業施行までの流れを示す。
この図で見ること
- 計画決定告示:都市計画施設等を定める
- 区域内の建築規制:法53条の制限
- 事業認可・承認告示:事業として具体化
- 事業地内の建築規制:より強い制限
計画決定後と事業認可後では、制限される区域と強さを分けて見る

この規制で何を学ぶ?どう出る?
Bランクの論点で、H25年・H28年・H29年に出題実績があります。試験では「都市計画施設の区域または市街地開発事業の施行区域内での建築は知事の許可が必要」「事業認可の告示後(事業地内)では知事の許可なしに土地形質の変更等はできない」の2ステップが問われます。また「階数2以下・地階なしで主要構造部が木造・鉄骨造等の建築物は、容易に移転・除却できるものとして知事等は許可をしなければならない」という許可基準(法54条3号)も出題されます。
なぜ押さえる必要がある?
都市計画事業は長期にわたる公共事業です。計画段階から施工完了まで複数年かかることが多く、その間の民間の建築行為をどう扱うかは重要な問題です。計画確定後も当面の土地利用を一切禁止するのは過剰規制ですが、施工直前に障害物を作られることも困ります。そのため段階的な規制(計画段階→認可段階→施工段階)が設けられており、各段階で行為制限の厳しさが変わる仕組みになっています。
前提として何を知っておく?
→ 都市計画の内容
都市計画の内容で都市施設・市街地開発事業の意義を確認します。都市計画事業とは、都市施設の整備または市街地開発事業を施行することをいい(法4条15項)、本節の規制はこの事業の各段階において適用されます。
都市計画施設の区域内における建築規制(法53条)
都市計画に都市施設(道路・公園・学校等)が定められると、その区域内での建築行為が制限されます(法53条)。この段階はまだ「計画」の段階であり、事業認可前であっても建築規制がかかる点が重要です。
都市計画施設の区域または市街地開発事業の施行区域内において、建築物の建築をしようとする者は、都道府県知事等の許可を受けなければなりません(法53条1項)。この許可には、都市計画上必要な条件を付けることができます(法79条)。
許可が不要となる行為は法53条1項1号〜3号に列挙されています。①政令で定める軽易な行為(1号)、②非常災害のため必要な応急措置として行う行為(2号)、③都市計画事業の施行として行う行為またはこれに準ずる行為として政令で定める行為(3号)です。
許可の基準(法54条)で最重要なのは、条文が「次の各号のいずれかに該当するときは、その許可をしなければならない」と書かれている点です。「許可が受けやすい」といった程度の話ではなく、該当すれば知事等に許可が義務づけられるという形で出題されます。
そのうち押さえるべきは法54条3号で、イ 階数が2以下で、かつ地階を有しないこと、ロ 主要構造部が木造・鉄骨造・コンクリートブロック造その他これらに類する構造であることの両方に該当し、かつ容易に移転し、または除却することができると認められる建築物が対象です。鉄骨造も含まれるので「非耐火建築物」という括り方では正確ではありません。逆に、鉄筋コンクリート造の高層建築等はこの号に当たらないため、許可は義務づけられません。
なお、知事等が指定した土地の区域や市街地開発事業の施行区域(事業予定地)内の建築については、法54条にかかわらず許可をしないことができます(法55条1項)。法54条の許可義務がすべての場合に及ぶわけではない点も押さえておきます。
都市計画事業の認可後(事業地内)の制限(法65条)
都市計画事業の認可(または承認)の告示後は、事業地内でより厳格な制限が適用されます(法65条)。事業施行の具体的な準備が始まる段階であり、施行の障害となる行為を防ぐためです。
認可・承認告示後の事業地内では、次の行為を行う場合に都道府県知事等の許可が必要です(法65条1項):
- ①事業の施行の障害となるおそれがある土地の形質の変更
- ②事業の施行の障害となるおそれがある建築物の建築その他工作物の建設
- ③政令で定める移動の容易でない物件の設置または堆積
認可告示前(計画段階)との違いは、「土地の形質の変更」と「物件の設置・堆積」まで許可対象に加わる点です。また、法53条の許可には「該当すれば許可しなければならない」という基準(法54条)がありますが、法65条の許可にはそうした許可義務の規定がなく、知事等は許可を与えようとするときはあらかじめ施行者の意見を聴かなければなりません(法65条2項)。事業の支障になるかどうかが実質的に審査される仕組みで、計画段階より通りにくくなります。
なお、法65条1項の告示があった後は、その告示に係る土地の区域内では法53条1項は適用されません(法53条3項)。計画段階の規制(法53条)と事業段階の規制(法65条)が重なるのではなく、規制が53条から65条へ切り替わるという関係です。
事業地内の土地建物等の有償譲渡(法67条)
都市計画事業の認可・承認の告示があると、施行者はすみやかに、事業地内の土地建物等の有償譲渡が制限されることを公告します(法66条)。届出義務が生じるのはその公告の日の翌日から起算して10日を経過した後で、事業地内の土地建物等を有償で譲り渡そうとする者は、予定対価の額や譲り渡そうとする相手方等を書面で施行者に届け出なければなりません(法67条1項)。「認可の告示があった後すぐ」ではなく、公告の日の翌日から起算して10日という起算点が問われます。
届出があった後30日以内に施行者が届出者に対し「買い取るべき旨」を通知したときは、その土地建物等について、施行者と届出者との間に届出書に記載された予定対価の額に相当する代金で、売買が成立したものとみなされます(法67条2項)。あらためて当事者が価格を協議するのではなく、届け出た予定対価の額でそのまま売買が成立したものとして扱われる点が本条の核心です。また、届出をした者は、この30日の期間内(その期間内に施行者が「買い取らない」旨を通知したときはその時までの期間内)は、当該土地建物等を譲り渡してはなりません(法67条3項)。
この届出制度(先買い権)は、認可・承認告示後に第三者が事業用地を買い取ることを防ぎ、施行者が円滑に事業用地を取得できるようにするためのものです。施行者が30日以内に「買い取らない」旨を通知した場合、または30日以内に通知がなかった場合は、もともとの売買の相手方(第三者)との取引を進めることができます。
許可不要となる行為は「法53条だけ」の話
許可が不要になる行為の列挙があるのは法53条1項(1号〜3号)だけです。法65条1項にはただし書も除外列挙もありません。53条と65条を同じものとして覚えると失点するので、必ず分けて押さえます。
法53条1項で許可が不要な行為(1号〜3号)
①政令で定める軽易な行為(1号):許可を要しない範囲が政令で定められています。
②非常災害のため必要な応急措置として行う行為(2号):災害対応という緊急性から、事前許可を求めることが合理的でないからです。
③都市計画事業の施行として行う行為(またはこれに準ずる行為として政令で定める行為)(3号):事業そのものとして行う行為に、あらためて建築の許可を求める意味がないからです(H25年に「都市計画事業の施行として行う行為なら許可不要」として出題)。
法65条1項(認可・承認の告示後)はどうなるか
法65条1項には上のような除外列挙がありません。そして法65条1項の告示があった後は、その区域内では法53条1項が適用されなくなります(法53条3項)。53条の例外がそのまま65条に持ち込まれるのではなく、規制そのものが53条から65条へ切り替わるという関係だと理解します。
法65条1項の許可を受けずに行為をした場合は、許可の取消しや、工事その他の行為の停止、建築物等の改築・移転・除却など違反を是正するために必要な措置を命じられることがあります(法81条1項)。
ここまでの要点は?
- 都市計画施設の区域・市街地開発事業の施行区域内(計画段階):建築物の建築には都道府県知事等の許可が必要(法53条1項)。許可には都市計画上必要な条件を付せる(法79条)
- 階数2以下・地階なしで主要構造部が木造・鉄骨造等、かつ容易に移転・除却できる建築物:知事等は許可をしなければならない(法54条3号)。「許可が受けやすい」ではなく義務(ただし事業予定地内は法55条1項で許可しないことができる)
- 許可が不要な行為(政令で定める軽易な行為・非常災害の応急措置・都市計画事業の施行として行う行為)の列挙は法53条1項1号〜3号にだけある。法65条1項にただし書はない
- 都市計画事業の認可・承認告示後(事業地内):土地の形質変更・建築物等の建設・移動の容易でない物件の設置堆積にも許可が必要(法65条1項)。この告示後は法53条1項は適用されない(法53条3項)
- 事業地内の土地建物等の有償譲渡:法66条の公告の日の翌日から起算して10日を経過した後は施行者への届出が必要(法67条1項)
- 届出後30日以内に施行者が買い取るべき旨を通知したときは、届出書に記載された予定対価の額に相当する代金で売買が成立したものとみなされる(法67条2項)。協議ではない。その期間内は譲り渡してはならない(法67条3項)
都市計画事業の制限
理解度マインドマップチェック
都市計画事業の制限
都市計画事業の制限
- まず段階を分ける
- 計画段階
- 事業認可の前
- 建築物の建築
- 事業認可の前
- 認可・承認告示後
- 事業地内
- より厳しくなる
- 事業地内
- 規制は重ならず切り替わる
- 65条1項の告示後は53条1項を適用しない
- 重ならず53条から65条へ切替
- 65条1項の告示後は53条1項を適用しない
- 施工を妨げないため
- 障害物を増やさせない
- 事業を進めやすくする
- 障害物を増やさせない
- 計画段階
- 計画段階の建築規制
- 対象区域
- 該当する区域
- 都市計画施設の区域・市街地開発事業の施行区域
- 該当する区域
- 許可が必要な行為
- 建築物の建築
- 許可が必要
- 許可権者
- 都道府県知事等
- 許可の条件
- 都市計画上必要な条件を付せる
- 建築物の建築
- 許可しなければならない建物
- 「その許可をしなければならない」=義務
- 階数2以下・地階なしで主要構造部が木造・鉄骨造等
- 容易に移転・除却できるから
- 対象区域
- 認可後の事業地内制限
- 許可対象
- 該当する行為
- 土地の形質変更・建築物その他工作物の建設・移動の容易でない物件の設置堆積
- 該当する行為
- 計画段階との違い
- 行為の範囲が広がる
- 土地の形質変更
- 許可義務の規定がない
- ない・あらかじめ施行者の意見を聴く
- 行為の範囲が広がる
- 許可対象
- 有償譲渡の届出
- 届出が必要になる時点
- 66条の公告が起算点
- 公告の日の翌日から起算して10日を経過した後
- 66条の公告が起算点
- 届出先
- 施行者
- 施行者へ届出
- 施行者
- 施行者の先買い
- 30日以内に通知
- 30日以内
- 買い取る通知後
- 予定対価の額で売買が成立したとみなす
- 期間内の譲渡
- 譲り渡してはならない
- 30日以内に通知
- 通知なし・買わない通知
- 予定した譲渡へ進む
- 進められる
- 予定した譲渡へ進む
- 届出が必要になる時点
- 53条の許可が不要な行為
- 除外列挙のある条文
- 53条1項に固有
- 法53条1項1号〜3号
- 53条1項に固有
- 政令で定める軽易な行為
- 1号
- 許可不要
- 1号
- 非常災害の応急措置
- 2号
- 許可不要
- 2号
- 都市計画事業の施行として行う行為
- 3号
- 許可不要
- 3号
- 65条1項の場合
- ただし書がない
- ない
- ただし書がない
- 除外列挙のある条文