「用途地域」は市が決める? それとも県が決める?
「誰が決めるか」でどう変わるのか
都市計画は、住民の生活に直結した街づくりのルールです。自分の土地に何が建てられるかを決める用途地域も都市計画の一部ですが、この「ルール」を誰が決めているのか——市町村か、都道府県か、国か——を知ることは、都市計画の意思決定の仕組みを理解する上で不可欠です。

この規制で何を学ぶ?どう出る?
Cランクの論点で出題頻度は低いですが(R2年に1問出題)、都市計画の全体像を把握する上で外せません。試験では「都市計画は原則市町村が定める」「広域的な都市計画は都道府県が定める」「複数都道府県にまたがる場合は国土交通大臣」「市町村の都市計画は都道府県の都市計画に適合させなければならない」という4点が主に確認されます。
なぜ押さえる必要がある?
都市計画は国・都道府県・市町村の3層構造で決定されます。身近なルール(用途地域・地区計画等)は市町村が、広域的な調整が必要なもの(区域区分・広域的な道路計画等)は都道府県が担います。この役割分担は「地方分権と広域調整」のバランスを意識して設計されており、どのルールを誰が決めるかを理解することが、都市計画法全体の仕組みを理解する骨格になります。
前提として何を知っておく?
→ 都市計画の内容
都市計画区域・準都市計画区域の指定と、都市計画の内容(地域地区・区域区分等)を先に確認します。本節の「誰が定めるか」は、別の節で扱う都市計画の各種メニューがどの主体に帰属するかの問題です。
都市計画の決定権者(法15条)
都市計画は、原則として市町村が定める(法15条1項)。住民に近い市町村が地域の実情に合わせて都市計画を決定することが地方分権の観点から基本とされています。用途地域の指定・地区計画の策定など、住民生活に密着したルールは市町村が主体となって決定します。
なお、開発許可はそもそも「都市計画の決定」ではありません。個別の開発行為に対して都道府県知事(指定都市等の区域内では当該指定都市等の長)が与える許可であって(法29条1項)、都市計画の決定権者の話とは切り離して覚えます。
しかし、広域的な見地から定める必要がある都市計画については、都道府県が定める。法15条1項は「次に掲げる都市計画は都道府県が、その他の都市計画は市町村が定める」という書き方で、都道府県が定めるものを1号から7号までに列挙しています(「ただし書」ではなく各号です)。代表例は「都市計画区域の整備、開発及び保全の方針」(同項1号)と「区域区分(市街化区域と市街化調整区域の線引き)」(同項2号)です。市街化区域の線引きは複数の市町村にまたがる広域的判断が必要なため、都道府県が一体的に決定します。用途地域は市町村が定めるが、区域区分は都道府県という役割分担をしっかり区別しておくことが試験のポイントです。
さらに、都市計画区域が2以上の都道府県の区域にまたがる場合、都道府県が決定するものについては国土交通大臣が定める(法22条1項)。ただし、この場合でも市町村が定めるものは市町村が定める。国土交通大臣が決定するのは「複数都道府県にまたがる都市計画区域の、都道府県分」に限定されており、すべての都市計画を大臣が決めるわけではありません。
なお、指定都市(政令指定都市)の区域については、法15条1項各号に掲げる都市計画も、都道府県ではなく指定都市が定める(法87条の2第1項)。指定都市は権限が都道府県並みに強化されているため、本来都道府県が担う都市計画の決定権限も指定都市に移されています。ただし例外もあり、1号の「都市計画区域の整備、開発及び保全の方針」のうち一の指定都市の区域の内外にわたって指定されている都市計画区域に係るものなどは、なお都道府県が定めます(同項かっこ書)。
| 状況 | 市町村が定めるもの | 都道府県が定めるもの |
|---|---|---|
| 1都道府県内の都市計画区域 | 用途地域・地区計画等(身近なもの) | 整備、開発及び保全の方針・区域区分・広域的な都市施設等 |
| 複数都道府県の都市計画区域 | (市町村分はそれぞれの市町村) | → 国土交通大臣が決定 |
| 政令指定都市の区域内 | (市が決定) | (市が担う部分が拡大) |
市町村の都市計画は都道府県の都市計画に適合させる(法15条3項・4項)
市町村が定める都市計画は、都道府県が定めた都市計画に適合(矛盾しないよう合わせる)したものでなければならない(法15条3項)。そして、市町村が定めた都市計画が都道府県が定めた都市計画と抵触するときは、その限りにおいて都道府県が定めた都市計画が優先する(法15条4項)。3項が「合わせる義務」、4項が「ぶつかったときの優劣」という役割分担です。過去問(H27-16-4)は4項の論点で、「市町村が定めた都市計画が優先する」という肢は誤りになります。
たとえば、都道府県が区域区分で「ここは市街化調整区域」と定めた区域について、市町村は原則として用途地域を定めない(法13条1項7号)。ここは「定めることができない」ではなく「定めることはできるが、原則として定めない」が正しい理解で、試験では「市街化調整区域には用途地域を定めることができない」→誤り、という形で問われます。
ひっかけとして「都道府県が定める都市計画は市町村の意見を聞かずに定めることができる」という記述が出ることがありますが、これは誤りです。都道府県は、関係市町村の意見を聴き、かつ都道府県都市計画審議会の議を経て都市計画を決定します(法18条1項)。このほか、公聴会の開催等(法16条1項)・都市計画の案の2週間の公衆縦覧と意見書の提出(法17条)といった手続も定められています。ただし試験では「適合しなければならない」かどうかが主な論点です。
最後に、名前が似ていて混同しやすい2つの「方針」を区別しておきます。
- 都市計画区域の整備、開発及び保全の方針(法6条の2)… 都市計画区域について都市計画として定めるもので、都道府県が定める(法15条1項1号。指定都市の区域では原則として指定都市)。区域区分を定めるかどうかとその方針・都市計画の目標を示し、その都市計画区域について定める都市計画はこの方針に即したものでなければならない(法6条の2第3項)。
- 市町村の都市計画に関する基本的な方針(法18条の2)… いわゆる市町村マスタープラン(都市計画マスタープラン)で、市町村が定める。市町村の建設に関する基本構想および上記「整備、開発及び保全の方針」に即して定め、市町村が定める都市計画はこの基本方針に即したものでなければならない(法18条の2第4項)。長期的な目標・方針を示し、個別の都市計画の指針となります。
つまり、「整備、開発及び保全の方針」は都道府県の都市計画、マスタープラン(基本的な方針)は市町村が定めるもので、両者は別物です。「市町村が都市計画区域の整備、開発及び保全の方針を定める」という記述は誤りになります。
ここまでの要点は?
- 都市計画は原則として市町村が定める(法15条1項)
- 法15条1項各号に列挙された広域的なもの(整備、開発及び保全の方針・区域区分等)は都道府県が定める
- 複数都道府県にまたがる区域の場合(都道府県分)は国土交通大臣が定める(法22条1項)
- 指定都市(政令指定都市)の区域では、都道府県分も指定都市が定める(法87条の2第1項)
- 市町村の都市計画は都道府県の都市計画に適合させなければならない(法15条3項)。抵触するときは都道府県の都市計画が優先する(同条4項)
- 「都市計画区域の整備、開発及び保全の方針」(法6条の2)=都道府県の都市計画/「市町村の都市計画に関する基本的な方針」(法18条の2=市町村マスタープラン)=市町村。別物として区別する
都市計画の決定権者
理解度マインドマップチェック
都市計画の決定権者
都市計画の決定権者
- 原則の決定権者
- 市町村が定める都市計画
- 基本ルール
- 市町村
- 理由
- 住民に近いから
- 代表例
- 用途地域・地区計画
- 基本ルール
- 市町村が定める都市計画
- 広域的な都市計画
- 都道府県が定める都市計画
- 基本ルール
- 都道府県
- 代表例
- 区域区分・広域的な都市施設
- 理由
- 複数市町村の調整が必要だから
- 基本ルール
- 都道府県が定める都市計画
- 複数都道府県にまたがる区域
- 国土交通大臣が定める部分
- 対象
- 都道府県が定める部分
- 市町村分
- 市町村が定める
- ひっかけ
- すべてではない
- 対象
- 国土交通大臣が定める部分
- 政令指定都市
- 市の権限が広がる
- 都道府県分の扱い
- 政令指定都市の市が決定
- 理由
- 権限が都道府県並みに強いから
- 都道府県分の扱い
- 市の権限が広がる
- 適合とマスタープラン
- 市町村と都道府県の関係
- 適合義務
- 都道府県計画
- 抵触したとき
- 都道府県計画
- 適合義務
- 整備・開発・保全の方針
- 決定主体
- 都道府県
- 位置づけ
- 方針に即したもの
- 決定主体
- 市町村マスタープラン
- 策定主体
- 市町村
- 役割
- 長期的な目標・方針
- 策定主体
- 市町村と都道府県の関係