「宅建は過去問をやれば受かる」――よく聞きますが、本当でしょうか。
このシリーズでは、令和7年(2025年)の本試験を科目ごとに分解し、「その問題は、過去にどの問題で出ていたのか」を1問ずつ照合して、過去問の知識だけで何点取れたのかを検証します。感覚論ではなく、当サイトの過去問データベース(平成13年〜令和6年)との突き合わせです。
初回は、配点が最も大きく、合否を分ける科目――宅建業法から。
宅建業法は「過去問の科目」だと、数字が言っている
冒頭のデータを見てください。令和7年の宅建業法20問のうち、過去問とほぼ同型の問題が複数あり、しかも「過去問では歯が立たない新傾向の問題」はゼロでした。
なぜこうなるのか。宅建業法は、条文・数字・手続きのルールが決まっている科目だからです。「35条書面に何を書くか」「営業保証金はいくらか」「クーリング・オフの期間は」――答えが一つに定まる論点を、毎年、表現を変えて聞いてくる。だから出題の角度には限りがあり、過去問を回した人ほど"見たことがある"問題になります。
令和7年、この問題は「あの過去問」だった
具体的に、令和7年の業法で過去問とほぼ同型だった問題を挙げます。
- 問27(35条書面・管理委託先) … 区分所有建物の売買で「管理の委託先」を説明するという論点は、平成29年・問41とほぼ同じ。令和6年でも問われた頻出ポイントです。
- 問37(35条書面) … 令和4年・問34と同型。
- 問29(37条書面) … 令和元年・問34で問われた論点。
- 問39(媒介契約) … 平成27年・問28と同じ急所。
実際に並べてみます。カードをクリックすると、過去問と本試験が入れ替わります。まず問27(35条書面・管理委託先)。書き出しの一文からそっくりです。
同じ論点:区分所有建物の売買では『管理の委託先(受託した法人の商号・名称と主たる事務所の所在地)』を35条書面で説明する。問い方がほぼそのまま。
問37(35条書面・建物状況調査)も、同じ条文がそのまま問われました。
同じ論点:既存建物では『34条の2第1項第4号の建物状況調査』の実施の有無と結果の概要を説明する。条文まで同じ。
問29(37条書面)。既存建物の構造の状況を書面に記載するかどうか、という論点です。
同じ論点:既存建物の売買では『構造耐力上主要な部分等の状況について当事者双方が確認した事項』が37条書面の必要的記載事項。表現はほぼそのまま。
問39(媒介契約)も同じです。指定流通機構への登録事項という頻出論点が繰り返されました。
同じ論点:専任媒介では物件情報を指定流通機構に登録する。何を登録するか(=登録事項)が過去問と同じ切り口で問われた。
35条書面や媒介契約だけではありません。暗記が中心の営業保証金でも、同じことが起きています。
問35(営業保証金)は、従たる事務所を新設したとき営業保証金をどこに供託するか、という基本論点。ベースは令和6年=昨年の過去問です。
同じ論点:従たる事務所を設けても、営業保証金の供託先は『主たる事務所の最寄りの供託所』。従たる事務所の最寄り、は誤り。
共通しているのは、論点が固定されていること。文章の見た目は毎年変わりますが、聞かれている"急所"は同じです。過去問で急所を押さえていれば、初見の文章でも正誤を判断できます。
「ほぼ同型ではない問題」も、消去法で落とせる
「過去問とほぼ同型」とまでは言えない問題も、その多くは4つの選択肢のうち2〜3肢が、過去問で見たことのある論点でできています。つまり、過去問を回していれば消去法で正解にたどり着ける。
冒頭のデータの「消去法まで含めて射程」の数字が、これにあたります。宅建業法が「過去問だけで18〜20点」と言われるのは、丸暗記の話ではなく、論点の反復で選択肢を切れるようになるからです。
【保存版】令和7年の宅建業法は、ほぼ全問に"あの過去問"があった
ここまで5問を見てきましたが、これは特別に選んだ問題ではありません。令和7年の宅建業法20問は、そのほとんどに「見たことのある過去問」が存在します。 テーマ別に、残りの問題も並べてみましょう(各カードをクリックで過去問↔本試験)。
重要事項説明(35条書面)
問30(手付金等の保全措置) — 必要な保全措置の概要を35条書面に書くか。
同じ論点:買主が業者でないとき、必要な手付金等の保全措置の概要は35条書面(重要事項説明書)に記載する。省略は違反。
問43(未完成建物の貸借) — 完成前の建物を貸す場合の説明事項。
同じ論点:未完成建物の貸借では、完成時の主要構造部・内装・外装・設備を説明する。書き出しからそっくり。
契約書面(37条書面)
問33(抵当権) — 抵当権の内容は37条書面に書くのか。
同じ論点:抵当権の内容は35条書面の説明事項。37条書面には記載不要。この切り分けが繰り返し問われる。
自ら売主の制限(8種制限)
問40(クーリング・オフ) — なんと過去問と一字一句同じ問題文でした。
同じ論点:クーリング・オフの可否は『申込みをした場所』で決まる。事務所で申し込めば、契約が喫茶店でも解除できない。
問32(手付金等の保全措置) — 完成・未完成での保全措置のタイミング。
同じ論点:手付金等が一定額を超えると保全措置が必要。完成物件と未完成物件で基準額が変わる。
広告・勧誘などの業務規制
問28(指定流通機構への登録期限) — 専属専任媒介の登録は何日以内か。
同じ論点:専属専任媒介は、休業日を除いて5日以内に指定流通機構へ登録する。過去問は『7日以内』のひっかけで同じ論点。
問36(手付金の貸付けによる勧誘) — 契約を誘引する信用供与。
同じ論点:手付金の貸付け・分割払いなど信用供与による契約の誘引は、契約に至らなくても禁止。
問38(取引態様の明示) — 数回に分けて広告するとき、毎回明示が必要か。
同じ論点:広告のたび、そして注文を受けたときも、取引態様の別を明示しなければならない。
免許・宅地建物取引士
問34(免許の欠格・聴聞公示前の退任役員) — 公示前に退任した役員の扱い。
同じ論点:聴聞の公示前60日以内に役員だった者は、廃業等から5年間は免許を受けられない。『40日前』も『50日前』もこの60日以内。
問41(解散の届出期限) — 解散したときの届出は何日以内か。
同じ論点:解散したときの届出は、解散の日から30日以内。60日は誤り。
問42(登録の移転) — 他県の事務所に移ったら登録の移転は義務か。
同じ論点:他県の事務所に従事しても、登録の移転は『できる』だけ。義務ではない。
報酬・その他
問26(権利金のある貸借の報酬) — 店舗の権利金は報酬計算にどう効くか。
同じ論点:居住用以外の貸借で権利金があるときは、権利金を売買代金とみなして報酬上限を計算する。数字は違えど設定は同じ。
問45(住宅瑕疵担保履行法・資力確保義務) — 供託・保険は誰の義務か。
同じ論点:資力確保(供託・保険)の義務は『自ら売主』のときだけ。媒介では不要。
こうして並べると、令和7年の宅建業法は、ほぼ全問が過去問で一度は問われた論点でできていることがわかります。だから、過去問なのです。
過去問は何年分遡ればいい? 業法は「直近10年」で十分
宅建業法の論点は、年による変動が小さい科目です。大きな法改正がない限り、出題範囲は安定しています。
実際、上に挙げた「ほぼ同型」の元ネタは平成27年〜令和4年=直近10年以内に収まっています。直近10年分の過去問を回せば、業法の出題範囲はほぼ尽くせると考えてよいでしょう。それより古い問題は、改正で内容が変わっていることもあり、費用対効果が下がります。
まとめ
- 宅建業法は、過去問が最も効く科目。新傾向の問題はほぼ出ない。
- ほぼ同型の問題+消去法で、過去問だけで高得点が現実的に狙える。
- 遡るのは直近10年で十分。まずここを固めるのが、合格点への一番確実な土台です。
各問が「どの過去問・どのテキストの節」に対応するかは、令和7年 全50問の検証ページで1問ずつ確認できます(下のボタン)。次回は、苦手な人の多い権利関係(民法)を同じ方法で検証します。
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