宅建の本試験は50問。「法令上の制限」は8問で、その中に、農地法と並んで得点源と言い切れる1問があります。国土利用計画法です。
理由は2つ。まず、出題が事後届出のほぼ一点集中であること。そして、聞かれることが毎年ほとんど同じであることです。実際、法令上の制限を全部は追いかけず、農地法と国土利用計画法の2問に絞って確実に取りにいく——農地法の分析で紹介したその戦い方の、もう片方がこの科目です。
このページは、単独問として出た12回(平成27年〜令和7年)・選択肢48問を1つずつ分解して数えた分析です。結論から言うと、12回中11回は、事後届出の要否判定表1枚で正解肢を当てられました。
なお平成25・26・29年は単独問がなく、他の法令とのミックス問(その他の法令)に国土法が1肢ずつ入っていました。近年は問22が定位置の単独問です。
覚える中心は「事後届出の要否 判定表」1枚
国土法の問題文は、面積や区域の数字が並んでいて難しそうに見えます。しかし48問を分解すると、点を決めているのは数字の暗記ではなく、「そもそも事後届出が要る取引なのか」の判定でした。その判定を1枚にまとめたのが、次の表です。
| 判定の順番 | 中身 |
|---|---|
| ① 対象になる権利か | 所有権・地上権・賃借権の移転・設定(予約を含む)で、対価があるもの。交換も対価あり。 対価のない賃借権・使用貸借、抵当権の設定は対象外 |
| ② 届出不要の取得でないか | 相続・遺産分割・贈与・法人合併・時効取得・競売は届出不要(契約による対価のある取得ではない)。農地法3条の許可を受けた取得も不要 |
| ③ 当事者に国等がいないか | 当事者の一方または双方が国・都道府県・市町村等なら届出不要 |
| ④ 面積は基準以上か | 市街化区域 2,000㎡以上/市街化区域以外の都市計画区域 5,000㎡以上/都市計画区域外 10,000㎡以上 |
| ⑤ 一団の土地か | 買主側の合計で判定。計画的に分割して順次購入すれば合算。売主が別々の買主に分割して売れば、買主ごとに判定 |
| ⑥ 誰が・いつ・どこへ | 権利取得者(買主等)のみが、契約締結日から2週間以内に、市町村長を経由して都道府県知事へ |
| ⑦ 届出の後はどうなる | 審査・勧告の対象は利用目的だけ(対価の額は届け出るが勧告されない)。勧告に従わなくても契約は有効・公表されるだけ |
| ⑧ 届出をしないと | 6か月以下の拘禁刑又は100万円以下の罰金(それでも契約は有効) |
①→⑤で「届出が要るか」を判定し、⑥→⑧で手続と効果を答える。48問のほぼすべてが、この表のどこかの行を聞いています。数字(2,000・5,000・10,000)はもちろん覚えますが、ひっかけの主戦場は①②③⑤——相続なら?競売なら?国から買ったら?分割して買ったら?——の側です。
面積の行を引くには、市街化区域・都市計画区域という都市計画法の言葉が前提になります。都市計画法の分析で「区域区分は他科目の土台」と書いた、その回収先がここにもあります。
その表で「実際に取れた年」は、12回中11回
いつもの方法で、12問すべての正解肢が判定表の範囲だったかを年度別に数えました。
青=正解肢が事後届出の要否判定表の範囲だった回=表を持っていれば1問取れた年。マスの数字は、4つの選択肢のうち判定表の範囲だった数です。
都市計画区域外においてAが所有する面積12,000㎡の土地について、Aの死亡により当該土地を相続したBは、事後届出を行う必要はない。
都市計画区域外に所在し、一団の土地である甲土地(面積6,000㎡)と乙土地(面積5,000㎡)を購入する契約を締結した者は、事後届出を行わなければならない。
事後届出に係る土地の利用目的について、甲県知事から勧告を受けた宅地建物取引業者Aがその勧告に従わないときは、甲県知事は、その旨及びその勧告の内容を公表することができる。
宅地建物取引業者Fが所有する市街化調整区域内の6,000㎡の一団の土地を、宅地建物取引業者Gが一定の計画に従って、3,000㎡ずつに分割して購入した場合、Gは事後届出を行わなければならない。
Aが所有する市街化区域内の1,500㎡の土地をBが購入した場合には、Bは事後届出を行う必要はないが、Cが所有する市街化調整区域内の6,000㎡の土地についてDと売買に係る予約契約を締結した場合には、Dは事後届出を行う必要がある。
個人Bが所有する都市計画区域外の11,000㎡の土地について、個人CがBとの間で対価を支払って地上権設定契約を締結した場合、Cは事後届出を行う必要がある。
宅地建物取引業者Aが所有する準都市計画区域内の20,000㎡の土地について、10,000㎡をB市に、10,000㎡を宅地建物取引業者Cに売却する契約を締結した場合、B市は事後届出を行う必要はないが、Cは一定の場合を除き事後届出を行う必要がある。
個人Aが所有する都市計画区域外の12,000㎡の土地に、個人Bが地上権の設定を受ける契約を締結した場合、Bは一定の場合を除き事後届出を行う必要がある。
市街化区域を除く都市計画区域内において、一団の土地である甲土地(C所有、面積3,500㎡)と乙土地(D所有、面積 2,500㎡)を宅地建物取引業者Eが購入した場合、Eは事後届出を行わなければならない。
都市計画区域外において、国から一団の土地である6,000㎡と5,000㎡の土地を購入した者は、事後届出を行う必要はない。
市街化区域内に所在する一団の土地である甲土地(面積1,200㎡)と乙土地(面積1,300㎡)について、甲土地については売買によって所有権を取得し、乙土地については対価の授受を伴わず賃借権の設定を受けたHは、事後届出を行う必要はない。
結果は12回中11回。ほぼ毎回です。内訳は、①②の「届出が要る取引か」が4回、⑤の「一団の土地」が4回、③の「国等の特例」が2回、⑦の「勧告」が1回。判定表の上半分(要るか要らないかの判定)が9回と、点のほとんどを決めています。
取れなかった唯一の1回が令和6年で、正解肢は監視区域の事前届出(契約前に届出・届出後6週間は契約できない)でした。ここは判定表の外ですが、事後届出との違いを比較表で1往復すれば拾えます(下の関連コンテンツの表ドリル)。
つまりこの科目、判定表1枚+事前届出との比較表1枚で、直近12回の正解肢すべてに手が届いていたことになります。
数字の裏づけ
論点別の内訳です。正解肢になった実績の順に並べています。
実際に正解肢になった問数の多い順。よく出ることと、そこで点が決まることは別なので、両方を並べています。
| 論点 | 出題 (肢) | 正解肢に なった数 | 出た回数 (12回中) |
|---|---|---|---|
| 届出が要る取引か土台 | 11 | 4問 | 8回 |
| 面積と一団の土地土台 | 10 | 4問 | 8回 |
| 国・地方公共団体の特例 | 6 | 2問 | 6回 |
| 勧告・助言・届出事項 | 6 | 1問 | 5回 |
| 事前届出(注視・監視区域) | 2 | 1問 | 2回 |
| 届出の期限・経由 | 6 | 0問 | 5回 |
| 罰則 | 3 | 0問 | 3回 |
| 届出義務者 | 2 | 0問 | 2回 |
| 遊休土地 | 1 | 0問 | 1回 |
| 重要土地等調査法 | 1 | 0問 | 1回 |
横1列が12回ぶんの試験。色が濃いほど、その回に多く出た論点です。 上から出題数の多い順に並べているので、上にあるものほど優先して覚えると効率的です。
「届出が要る取引か」(11問)と「面積と一団の土地」(10問)の2論点だけで48問の4割強。相続・贈与・競売・予約・地上権・対価のない賃借権と、登場人物を変えながら同じ判定を何度も聞いています。逆に、遊休土地と重要土地等調査法は12回で正解肢0回。ここは最後で構いません。
選択肢に出てくる言葉のランキングも同じ景色です。
問題文に何回登場したかの回数です。上位の言葉ほど、本試験で目にする回数が多い=読むときに注意を向けるべき言葉です。
「事後届出」が50回とほぼ全肢に登場。「市街化区域」「都市計画区域」が上位に来るのは、面積の行が区域とセットで聞かれるからです。
2026年度の法改正にひとこと
令和8年4月1日施行の施行規則改正で、法人が大規模な土地を取得したときの事後届出に「代表者の国籍等」が届出事項として追加されました。外国資本による土地取得を把握するための改正で、今年の試験で狙われやすい新顔です。制度の骨格(面積・2週間・買主のみ・罰則)は変わっていないので、判定表を覚えたうえで「届出事項に法人代表者の国籍等が加わった」と1行足せば足ります。詳しくは教科書の事後届出の章(下の関連コンテンツ)に反映済みです。
結局、どうするか
農地法は比較表1枚で15回中9回、国土利用計画法は判定表1枚で12回中11回。どちらも「覚える中心が1枚に収まって、毎年ほぼ同じ形で出る」——法令上の制限が苦手でも、この2問から始めれば、8問中2問は確実に積めます。
