宅建の本試験は50問。「法令上の制限」は8問で、その中に、農地法と並んで得点源と言い切れる1問があります。国土利用計画法です。
理由は2つ。まず、出題が事後届出のほぼ一点集中であること。そして、聞かれることが毎年ほとんど同じであることです。実際、法令上の制限を全部は追いかけず、農地法と国土利用計画法の2問に絞って確実に取りにいく——農地法の分析で紹介したその戦い方の、もう片方がこの科目です。
このページは、単独問として出た12回(平成27年〜令和7年)・選択肢48問を1つずつ分解して数えた分析です。結論を先に言うと——まず基本の1枚を覚える。そこに3つの質問を当てはめる。それだけで12回中10回、届出のあとの結末まで持てば11回の正解肢に届きます。
なお平成25・26・29年は単独問がなく、他の法令とのミックス問(その他の法令)に国土法が1肢ずつ入っていました。近年は問22が定位置の単独問です。
まずは、この1枚を覚える
国土法の基本情報は、この手書きの1枚に収まります。数字は3つだけ。ここを覚えるのが出発点です。

覚えた表に、3つの質問を当てはめる
さて、ここからがコスパ分析です。この1枚だけを持って過去問に向かうと、何点取れたのか。単独問12回の正解肢と突き合わせました。
結果は——0回です。1点も取れていません。
表が悪いのではありません。この1枚は「届出が必要と決まったあと」の情報だからです。いくらから・誰が・いつまでに・破ったら。ところが本試験が聞いてくるのは、その手前——「そもそも届出する話なのか」の方でした。
そこで、表に3つの質問を当てはめる形にします。届出が要るかどうかは、この3つで決まります。「はい」が3つ続いたら届出必要。1つでも「いいえ」が出たら、その場で届出不要——3つとも答えの向きが揃うように聞き方を作ってあります。覚えた表(2・5・10)は、3つ目の質問の中で引きます。勧告や罰則は「届け出たあと」の別の話なので、質問には混ぜず、下の枠に分けました。
| 市街化区域 | 2,000㎡以上 |
| 市街化区域以外の都市計画区域 | 5,000㎡以上 |
| 都市計画区域外 | 10,000㎡以上 |
この3つ+届出のあと、が過去問でどれだけ点を決めてきたかを数えました。右端が、単独問12回で正解肢を決めた回数(実測)です。
| 当てはめるもの | 中身 | 正解肢 |
|---|---|---|
| 質問① 民間どうしの取引か? | 当事者に国・都道府県・市町村がいたら「いいえ」=この時点で届出不要(面積も見なくてよい)。農地法3条の許可を受けた農地の取得も「いいえ」 | 2回 |
| 質問② 「契約で・お金を払って・権利を得る」の3点セットか? | 売買・交換・予約・対価のある地上権は3点そろって「はい」。相続・競売は契約じゃない/贈与・タダで借りるのは対価がない/抵当権は対象の権利じゃない——どれか欠けたら届出不要 | 4回 |
| 質問③ 数える面積は、区域の基準以上か? | 数え方:一団で買ったら買主の合計・対価のない分は数えない。数えた面積を、覚えた表(2,000/5,000/10,000㎡)と見比べる | 4回 |
| 届出のあと:勧告に従わなかったら | 罰則なし・公表されるだけ(契約も有効)。届出そのものをしないと刑事罰、との対比で出る | 1回 |
質問③の4回は、すべて「数え方」(一団の合算・対価のない分の除外)が決め手でした。表の数字(2・5・10)の読み違いだけを突いた正解肢は、12回で1度もありません。表は質問③の中で引く道具——だから順番はこうなります。まず表を覚える。そのうえで、3つの質問を当てはめる。届出のあとの結末は、別枠で2つだけ。質問①を先頭に置いたのは、見た瞬間に終わる質問だから。相手に国や市がいれば、そこで判定終了です。
面積の行を引くには、市街化区域・都市計画区域という都市計画法の言葉が前提になります。都市計画法の分析で「区域区分は他科目の土台」と書いた、その回収先がここにもあります。
表+3つの質問で「実際に取れた年」は、12回中11回
いつもの方法で、12問すべての正解肢が「表+3つの質問+届出のあと」の範囲だったかを年度別に数えました。
青=正解肢が「表+3つの質問+届出のあと」の範囲だった回=表を持っていれば1問取れた年。マスの数字は、4つの選択肢のうち判定表の範囲だった数です。
都市計画区域外においてAが所有する面積12,000㎡の土地について、Aの死亡により当該土地を相続したBは、事後届出を行う必要はない。
都市計画区域外に所在し、一団の土地である甲土地(面積6,000㎡)と乙土地(面積5,000㎡)を購入する契約を締結した者は、事後届出を行わなければならない。
事後届出に係る土地の利用目的について、甲県知事から勧告を受けた宅地建物取引業者Aがその勧告に従わないときは、甲県知事は、その旨及びその勧告の内容を公表することができる。
宅地建物取引業者Fが所有する市街化調整区域内の6,000㎡の一団の土地を、宅地建物取引業者Gが一定の計画に従って、3,000㎡ずつに分割して購入した場合、Gは事後届出を行わなければならない。
Aが所有する市街化区域内の1,500㎡の土地をBが購入した場合には、Bは事後届出を行う必要はないが、Cが所有する市街化調整区域内の6,000㎡の土地についてDと売買に係る予約契約を締結した場合には、Dは事後届出を行う必要がある。
個人Bが所有する都市計画区域外の11,000㎡の土地について、個人CがBとの間で対価を支払って地上権設定契約を締結した場合、Cは事後届出を行う必要がある。
宅地建物取引業者Aが所有する準都市計画区域内の20,000㎡の土地について、10,000㎡をB市に、10,000㎡を宅地建物取引業者Cに売却する契約を締結した場合、B市は事後届出を行う必要はないが、Cは一定の場合を除き事後届出を行う必要がある。
個人Aが所有する都市計画区域外の12,000㎡の土地に、個人Bが地上権の設定を受ける契約を締結した場合、Bは一定の場合を除き事後届出を行う必要がある。
市街化区域を除く都市計画区域内において、一団の土地である甲土地(C所有、面積3,500㎡)と乙土地(D所有、面積 2,500㎡)を宅地建物取引業者Eが購入した場合、Eは事後届出を行わなければならない。
都市計画区域外において、国から一団の土地である6,000㎡と5,000㎡の土地を購入した者は、事後届出を行う必要はない。
市街化区域内に所在する一団の土地である甲土地(面積1,200㎡)と乙土地(面積1,300㎡)について、甲土地については売買によって所有権を取得し、乙土地については対価の授受を伴わず賃借権の設定を受けたHは、事後届出を行う必要はない。
結果は12回中11回。ほぼ毎回です。内訳は、質問②(3点セットか)が4回、質問③(数える面積と基準)が4回、質問①(民間どうしか)が2回、届出のあと(勧告)が1回。質問③の4回は、いずれも数え方(合算・対価なし除外)が決め手でした。
取れなかった唯一の1回が令和6年で、正解肢は監視区域の事前届出(契約前に届出・届出後6週間は契約できない)でした。ここは事後届出の外ですが、事後届出との違いを比較表で1往復すれば拾えます(下の関連コンテンツの表ドリル)。
つまりこの科目、表+3つの質問+届出のあとの結末+事前届出との比較表で、直近12回の正解肢すべてに手が届いていたことになります。もちろんこれは過去の実測で、将来を保証する数字ではありません。それでも、教科書レベルの基本表でこれだけ返ってきた——覚える順番を変える理由としては十分です。
数字の裏づけ
論点別の内訳です。正解肢になった実績の順に並べています。
実際に正解肢になった問数の多い順。よく出ることと、そこで点が決まることは別なので、両方を並べています。
| 論点 | 出題 (肢) | 正解肢に なった数 | 出た回数 (12回中) |
|---|---|---|---|
| 届出が要る取引か土台 | 11 | 4問 | 8回 |
| 面積と一団の土地土台 | 10 | 4問 | 8回 |
| 国・地方公共団体の特例 | 6 | 2問 | 6回 |
| 勧告・助言・届出事項 | 6 | 1問 | 5回 |
| 事前届出(注視・監視区域) | 2 | 1問 | 2回 |
| 届出の期限・経由 | 6 | 0問 | 5回 |
| 罰則 | 3 | 0問 | 3回 |
| 届出義務者 | 2 | 0問 | 2回 |
| 遊休土地 | 1 | 0問 | 1回 |
| 重要土地等調査法 | 1 | 0問 | 1回 |
横1列が12回ぶんの試験。色が濃いほど、その回に多く出た論点です。 上から出題数の多い順に並べているので、上にあるものほど優先して覚えると効率的です。
「届出が要る取引か」(11問)と「面積と一団の土地」(10問)の2論点だけで48問の4割強。相続・贈与・競売・予約・地上権・対価のない賃借権と、登場人物を変えながら同じ判定を何度も聞いています。逆に、遊休土地と重要土地等調査法は12回で正解肢0回。ここは最後で構いません。
選択肢に出てくる言葉のランキングも同じ景色です。
問題文に何回登場したかの回数です。上位の言葉ほど、本試験で目にする回数が多い=読むときに注意を向けるべき言葉です。
「事後届出」が50回とほぼ全肢に登場。「市街化区域」「都市計画区域」が上位に来るのは、面積の行が区域とセットで聞かれるからです。
3つの質問を、1枚の流れ図に
上の3つの質問をそのまま図にすると、こうなります。下へ進む答えはすべて「はい」、右へ抜ける答えはすべて「いいえ」。3つ目の質問の中に、覚えた表(2・5・10)がそのまま入っている——表は流れの部品だと分かる形です。
上から3つの質問に答えるだけ。「はい」が3つ続いたら届出必要。1つでも「いいえ」が出たら、その場で届出不要です。
| 市街化区域 | 2,000㎡以上 |
| 市街化区域以外の都市計画区域 | 5,000㎡以上 |
| 都市計画区域外 | 10,000㎡以上 |
この流れが頭に入っていれば、上のカードに並べた過去問は、年度や数字が変わってもそのまま解けます。試験で見たことのない場面が出ても、やることは同じ——上から順に、3つの質問で判定するだけです。
2026年度の法改正にひとこと
令和8年4月1日施行の施行規則改正で、法人が大規模な土地を取得したときの事後届出に「代表者の国籍等」が届出事項として追加されました。外国資本による土地取得を把握するための改正で、今年の試験で狙われやすい新顔です。制度の骨格(面積・2週間・買主のみ・罰則)は変わっていないので、基本表を覚えたうえで「届出事項に法人代表者の国籍等が加わった」と1行足せば足ります。詳しくは教科書の事後届出の章(下の関連コンテンツ)に反映済みです。
結局、どうするか
農地法は比較表1枚で15回中9回、国土利用計画法は事後届出の基本表1枚で12回中11回。どちらも「覚える中心が1枚に収まって、毎年ほぼ同じ形で出る」——法令上の制限が苦手でも、この2問から始めれば、8問中2問は確実に積めます。
