「大家の許可でエアコンをつけた——退去時に買い取ってもらえる?」— 借家の造作買取・更新・家賃増減
造作買取・転貸・同居者・家賃増減 ここで押さえておくべきキーワード
「借家人の権利はどこまで?更新拒絶できる?」
借地借家法(借家)では、民法の賃貸借に比べて賃借人をより手厚く保護しています。
「更新の際の正当事由」「造作の買取請求権」「家賃増減額の請求権」という三本柱が、借家人の地位を強化しています。
造作買取・転貸・同居者・家賃増減で何を学ぶ?どう出る?
33問が出題されます。
「造作買取請求権の要件(賃貸人の同意または買取を条件とした設置)」「更新拒絶の正当事由」「家賃増減額請求権の行使後の支払義務(相当家賃額)」「借家権の相続(同居者保護)」が頻出です。
特に「造作買取請求権は特約で排除できる」「同居の内縁関係者への借家権承継(借地借家法36条)」が試験で問われやすいです。
なぜ押さえる必要がある?
借家人が退去する場面や更新交渉の場面で、宅建業者としてアドバイスを求められることがあります。
造作の費用負担・更新料・家賃増減の法律的な根拠を理解していないと、適切な情報提供ができません。
前提として何を知っておく?
借地借家法は民法の特別法として「建物賃貸借(借家)」に優先適用されます。
借地借家法の規定に反する特約で賃借人に不利なものは無効とされます(借地借家法37条)——ただし定期建物賃貸借は例外です。
建物賃貸借の更新と更新拒絶
普通借家契約(期間の定めがある場合)は、原則として更新されます。
賃貸人が更新を拒絶するためには「正当事由」が必要です(借地借家法28条)。
正当事由の判断要素:①賃貸人自身または親族の建物使用の必要性、②賃借人が建物を使用する必要性、③建物の利用状況、④立退料の提供などを総合的に考慮します。
正当事由は賃貸人が主張・立証しなければなりません。
法定更新(借地借家法26条2項):契約期間が満了して、賃貸人が適切な時期に更新拒絶の通知をしなかった場合(または通知しても正当事由がない場合)、従前と同一条件で賃貸借が更新されたものとみなされます(ただし期間の定めのないものとして)。
更新拒絶の通知期間:期間が満了する1年前から6か月前までの間に更新しない旨の通知が必要(借地借家法26条1項)。
6か月を切ると更新拒絶の通知は認められません。
図の見方: この図では、「借家の更新と正当事由」を、出来事が起きる順番に沿って整理しています。
当事者それぞれの立場と、保護を受けるための要件に注目してください。
図解 / 権利関係
更新拒絶は「満了1年前から6か月前」と正当事由が必要
適時の通知と正当事由のどちらかを欠くと、期間の定めなしで法定更新
普通借家の更新拒絶には期間満了の1年前から6か月前までの通知と正当事由が必要で、いずれかを欠くと期間の定めのない契約として法定更新される。
この図で見ること
- 契約期間:契約開始→満了1年前(通知期間の開始)→満了6か月前(通知の最終期限)→期間満了
- 賃貸人:契約継続→更新拒絶を通知→通知期限を経過→正当事由を判断
適時の通知と正当事由のどちらかを欠くと、期間の定めなしで法定更新
造作買取請求権
造作とは、賃借人が借家に設置した物で、建物に付加され、建物の使用に客観的な便益を与えるものをいいます(エアコン・畳・建具等)。
造作買取請求権(借地借家法33条):賃借人は賃貸借の終了時に、賃貸人の同意を得て設置した造作、または賃貸人から買い受けた造作について、賃貸人に時価での買取りを請求できます。
ただし「特約で排除できる」(借地借家法37条による強制規定ではない)——「造作買取請求権を行使しない」という特約が入っている場合、賃借人は買取請求できません。
賃貸人の同意なしに設置した造作については買取請求権がありません。
また造作買取請求権を行使しても、賃貸人が同意しない間は建物を明渡す義務はありません(同時履行関係)——とはいえ判例はこれを否定している点に注意してください。
家賃増減額請求権
借賃増減額請求権(借地借家法32条):土地・建物の租税等の増減・周辺家賃の水準変化等の経済的事情の変更があった場合、当事者(賃貸人・賃借人の双方)は現在の借賃が不相当になったとして、将来に向けて借賃の増額または減額を請求できます。
増額請求後の支払義務:増額を請求された賃借人は、増額について合意が成立するまでは「相当と認める額」を支払えばよいです。
後で確定した増額額が支払った額を超えていた場合、その差額に年10%の利息を付けて支払う必要があります(借地借家法32条3項)。
一定期間は増額しない旨の特約は有効(借地借家法32条1項ただし書き)——一方「一定期間は減額しない」という特約(賃借人に不利)は無効です(借地借家法37条による)。
同居者の保護・借家権の承継
賃借人が死亡した場合、相続人が借家権を承継します(民法896条)。
ただし相続人がいない場合で、賃借人と事実上夫婦関係または養親子関係にある同居者がいるときは、その者が賃借人の権利義務を承継します(借地借家法36条)。
正式な婚姻・縁組をしていない内縁関係の同居者も保護されます。
ここまでの要点は?
- 更新拒絶には正当事由が必要。通知は期間満了の1年前〜6か月前の間。
- 造作買取請求権:賃貸人の同意を得た造作を時価で買い取らせられる。特約で排除可能。
- 借賃増減額請求権:経済変動に応じて増減を請求できる。「減額しない特約」は無効。
- 同居者保護:相続人なし・内縁関係者がいれば借家権を承継できる(借地借家法36条)。