権利関係(民法)は、多くの受験生が「過去問だけでは通用しない」「初見の問題ばかり」と感じる科目です。本当にそうでしょうか。
前回の宅建業法編に続き、今回は令和7年(2025年)の権利関係14問を、当サイトの過去問データベースと1問ずつ照合しました(記事末尾のリンクから前後の科目に移動できます)。
結論:令和7年の民法に「過去問で歯が立たない問題」はなかった
冒頭のデータのとおり、令和7年の権利関係14問のうち、過去問とほぼ同型が複数あり、そして「過去問の知識がまったく役に立たない新論点」はゼロでした。
「民法は無理」という感覚は、たいてい1〜2問の難問の印象に引っ張られた誤解です。実際には、出題の大半は過去問で繰り返し問われてきた基本論点で構成されています。
令和7年、この問題は「あの過去問」だった
- 問8(共有) … 共有持分を放棄するとその持分は「国庫」ではなく他の共有者に帰属する(民法255条)。この"国庫ひっかけ"は令和2年・問10でそのまま出ていました。
- 問4(相殺) … 悪意による不法行為の損害賠償請求権を「自働債権」とする相殺は禁止されない、という論点は平成30年・問9と同じ。
- 問11(借地借家法) … 一般定期借地権の要件は令和3年・問11とほぼ同型。
- 問10(売買) … 令和元年・問3で問われた論点。
問8(共有)を見てください。「その持分は国庫に帰属する」という一文が、過去問と本試験でほぼそのまま重なります。
同じ論点:余った持分の行き先は『国庫』ではなく『他の共有者』(民法255条)。死亡・相続人なしでも、持分放棄でも、結論は同じ。
問4(相殺)も、平成30年に解いた論点がそのまま出ました。
同じ論点:悪意の不法行為による損害賠償を『自働債権』にする相殺は禁止されない(禁止されるのは、その債権を受働債権にする側)。
問11(定期借地権)も、令和3年の過去問と同じ切り口でした。
同じ論点:事業用か一般定期借地権か——存続期間(10〜50年未満か50年以上か)と書面要件の切り分けが急所。
民法でも、正誤を分ける"急所"は過去問で繰り返されているのがわかります。
「半分死守」の意味――深入りはいらない
宅建の定石は「権利関係は満点を狙わず、基本論点で半分以上を確実に取る」。冒頭のデータの「ほぼ同型」=確実に取れる問題に、「消去法まで含めて射程」の問題を足せば、深入りせずに合格に必要な点数は十分届きます。
難問1〜2問に時間を溶かすより、過去問で繰り返される基本論点を確実にする――これが民法の正しい戦い方です。
【保存版】令和7年の権利関係も、多くが"あの過去問"だった
「民法は無理」の正体を、残りの問題でも確かめましょう。14問のうち、過去問と同じ論点が見つかったものをテーマ別に並べます(各カードをクリックで過去問↔本試験)。
総則(意思表示・物権変動)
問1(取消し・解除と第三者) — 取消し後・解除後に現れた第三者との関係。
同じ論点:取消し後・解除後に現れた第三者との関係は対抗問題。先に登記した方が勝つ、という同じ枠組み。
問3(意思表示と第三者保護) — 虚偽表示の第三者はどこまで守られるか。
同じ論点:虚偽表示(94条)の善意の第三者は保護される。登記や無過失までは求められない。
物権・担保物権
問9(連帯債務の絶対効・相対効) — 連帯債務者の一人がした行為の効力。
同じ論点:連帯債務者の一人がした相殺は絶対効(他の連帯債務者にも及ぶ)。履行の請求は相対効。
契約(売買・賃貸借)
問2(保証・催告の抗弁) — 連帯保証人はどこまで抗弁できるか。
同じ論点:連帯保証には催告の抗弁がない。『まず主たる債務者に請求せよ』とは言えない。
問7(事務管理) — 他人のためにした行為の費用は誰に請求できるか。
同じ論点:事務管理は『他人のため』の行為。自分の契約に基づく修理は事務管理にならない、という基礎。
問10(契約不適合責任・悪意の売主) — 通知期間の特約と悪意売主。
同じ論点:売主が不適合を知りながら告げなかった(悪意)なら、通知期間を縮める特約があっても責任を追及できる。
借地借家・区分所有・登記
問12(造作買取請求権の特約) — 「行使しない」特約は有効か。
同じ論点:造作買取請求権を行使しない旨の特約は有効(任意規定なので、賃借人に不利でも無効にならない)。
問13(区分所有・共用部分の持分) — 持分はどう決まるか。
同じ論点:共用部分の持分は、規約に別段の定めがなければ専有部分の床面積の割合による。
問14(不動産登記・職権分筆) — なんと過去問とほぼ一字一句同じ問題文でした。
同じ論点:一筆の土地の一部が別の地目になったとき、登記官は職権で分筆の登記ができる(『できない』は誤り)。
こうして見ると、令和7年の民法も、基本論点はほとんどが過去問で一度は問われたものでした。「民法は無理」は、ごく一部の難問の印象にすぎません。
過去問は何年分遡ればいい? 民法は「改正後を厚く+基本は10年」
民法は令和2年(2020年)4月の大改正で、債権法を中心に内容が変わりました。改正前の古い過去問には、今の条文では答えが変わるものが混じります。
そのため民法は、
- 令和2年以降の過去問を厚く回す(改正後の到達点で問われる)。
- 共有・相続・物権変動など改正の影響が小さい基本論点は、10年程度遡っても有効。
という二段構えが安全です。古い問題を機械的に潰すより、改正後の問題で論点の"今の答え"を固めることを優先してください。
まとめ
- 令和7年の民法に、過去問で歯が立たない新論点はなかった。
- "急所"は過去問で繰り返される。深入り不要、基本論点で確実に積むのが正解。
- 遡るなら改正後(令和2年〜)を厚く、基本論点は10年まで。
次回は、暗記がそのまま点になる法令上の制限を検証します。各問の根拠は、下のボタンの全50問検証ページで確認できます。
令和7年 全50問の「テキスト・過去問の根拠」を一覧で確認できます。
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