まだ自分のものではない不動産を売ってよいのか? — 他人物件・未完成物件の契約締結制限
自己の所有に属しない物件の契約締結の制限 ここで押さえておくべきキーワード
「取得見込みがある」だけでは売れない
不動産会社が「まだ他人が所有している土地を、自社物件として買主と売買契約を結ぶ」——こんな取引が横行したらどうなるか。業者が将来的に取得できなかった場合、買主は手付金を払ったまま物件を受け取れない事態に陥ります。消費者を守るために宅建業法は、宅建業者が自ら売主となる場合、自己の所有に属しない物件の売買契約の締結を原則として禁止しました(33条の2)。
この規制で何を学ぶ?どう出る?
Bランクの論点で、過去問の出題は少ないが、自ら売主制限全体の中のひとつとして必ず押さえておく必要があります。試験では「他人物件」と「未完成物件」で例外の条件が異なる点が問われます。H27年(問34-1)では、すでに取得する契約を締結している場合でも「停止条件付き」なら売買契約ができないかが争点となりました。また、「確実に取得できる見込みがある」だけでは例外に当たらないという判断が繰り返し問われます。
なぜ押さえる必要がある?
民法上は、他人の物を売買の目的とすること(他人物売買)自体は有効とされます(民法561条)。しかし宅建業者が自ら売主となる場面では、消費者との間に大きな情報格差があります。業者が「取得見込み」だけで売買契約を締結し始めると、取得失敗リスクをすべて消費者に転嫁することになります。そのため宅建業法はより厳格なルールを設け、業者による他人物の売買を原則禁止としました。
自ら売主制限は、業者・消費者間の取引に限定され、業者間取引(買主も宅建業者の場合)には適用されません。この適用範囲の確認も試験でよく問われます。
前提として何を知っておく?
→ 自ら売主制限総論
自ら売主制限の全体像を先に確認することを推奨します。8種類の制限のうち本節が扱う制限(他人物件・未完成物件の契約締結制限)の位置づけが把握できます。
他人物件売買の原則禁止(33条の2)
宅建業者が自ら売主となる売買契約では、自己の所有に属しない物件(他人が所有する不動産)を対象とした売買契約を締結することが原則として禁止されています(宅建業法33条の2)。「自己の所有に属しない」とは、契約締結時点で業者が当該物件の所有権を持っていない状態を指します。
禁止の趣旨は、取得が確実でない物件の売買により買主に損害が及ぶことを防ぐことにあります。宅建業者は業のプロとして、自己の能力で取得できる範囲にのみ売買の相手方を募るべきとされています。
なお、この規制(33条の2)は「宅建業者が自ら売主となる場合」にのみ適用されます。買主が宅建業者であれば8種制限が全て外れるため、業者間取引では33条の2の制限もかかりません。
例外①:他人物件で許される場合
他人が所有する物件であっても、宅建業者が当該物件を確実に取得するための法的効力ある契約(売買予約・停止条件付き売買契約等)を締結している場合には、例外として売買契約を締結できます(33条の2ただし書き)。
ポイントは「取得できる見込みがあること」だけでは不十分な点です。取得に向けた法的効力のある契約が締結されていることが要件となります。「交渉中」「内諾を得た」「購入予定」といった事実上の見込みにとどまる場合は、例外に当たらず違反になります。
また、停止条件付き売買契約を締結していても、停止条件の成就が確実でなければ「確実に取得できる」とはいえません。条件成就が未確定の段階での売買契約締結は禁止と解釈される点に注意が必要です。
「取得の見込み」と「確実に取得できる法的効力のある契約」の違いは実務でも明確です。例えば、地主から口頭で「売ってもいい」という言質を得ている段階は単なる「見込み」にすぎません。一方、停止条件付き売買契約(融資の承認を条件として、土地を500万円で購入する)であれば、法的拘束力があるため例外の要件を満たし得ます。試験では「交渉中」「購入予定」という文言が使われた場合は例外に当たらないと判断します。
例外②:未完成物件で許される場合
未完成物件(建築中または開発中の物件)については、宅建業者が現時点で所有権を持っていなくても、手付金等の保全措置を講じた上で手付金等を受領する場合には、売買契約を締結できます(33条の2ただし書き)。
ただし、注意が必要な点があります。未完成物件であっても、手付金等の保全措置を講じない場合は売買契約を締結できません。また、未完成物件の売買契約締結とは別に、広告開始時期の制限(33条:開発許可・建築確認前の広告禁止)と契約締結時期の制限(36条:開発許可・建築確認前の契約禁止)が別途あることにも注意します。33条の2の例外に当たるかの判断は、あくまで「保全措置を講じるか」という点です。
| 区分 | 原則 | 例外(売買契約OK) |
|---|---|---|
| 他人物件 | 禁止 | 取得するための法的効力ある契約(売買予約等)を締結している場合 |
| 未完成物件 | 禁止 | 手付金等の保全措置を講じた上で手付金等を受領する場合 |
ここまでの要点は?
- 33条の2:宅建業者が自ら売主となる場合、自己の所有に属しない物件の売買契約は原則禁止
- 他人物件の例外:当該物件を確実に取得するための法的効力ある契約を締結している場合
- 「取得できる見込みがある」だけでは例外に当たらない
- 未完成物件の例外:手付金等の保全措置を講じた上で手付金等を受領する場合
- 業者間取引(買主も宅建業者)には33条の2が適用されない