違約金は代金の何割まで定めてよいのか? — 損害賠償額の予定等の制限(法38条)
損害賠償額の予定等の制限 ここで押さえておくべきキーワード
「違約したら全額没収」は通用しない
不動産売買で買主が契約を破棄したとき、売主が「代金の半額を違約金として払え」という条件を一方的に押しつけることがあります。一般消費者は交渉力が弱く、業者の提示した条件をそのまま受け入れてしまうことが多いです。宅建業法はこれを規制し、宅建業者が自ら売主となる場合、損害賠償額の予定(違約金)は代金の20%以内でなければならないと定めました(法38条1項)。
この規制で何を学ぶ?どう出る?
Aランクの頻出論点で、試験では数値計算問題も出題されます。「代金3,500万円の場合の上限は700万円(20%)」というように、金額を計算させた上で有効か無効かを問う形式が多いです。違約金と損害賠償額の予定の「合算」が20%以内であることも重要なポイントです。H29年(問31-3)では「違約金300万円+損害賠償予定600万円」の合計が20%を超えるかどうかが問われました。また、「超えた部分のみ無効」であり、全体が無効になるわけではない点も確認しておきます。
なぜ押さえる必要がある?
民法では、損害賠償額の予定(民法420条)や違約金(民法420条3項)は当事者が自由に定めることができ、金額に上限はありません。宅建業法は、業者と消費者の情報・交渉力の格差を埋めるために、業者側に不利になる形で特別な上限を設けました。
20%という上限は絶対的なもので、双方の合意があっても超えることはできません。また、上限を超える部分は無効とされますが、上限の範囲内の部分は有効のまま残ります(一部無効)。全体が無効になるわけではない点を誤解しないように注意します。
前提として何を知っておく?
→ 自ら売主制限総論
自ら売主制限の全体像を先に確認します。手付の額の制限(法39条:代金の20%以内)と、本節の損害賠償額の予定(法38条:代金の20%以内)はそれぞれ別個の規制であることを整理しておく必要があります。手付と損害賠償予定額を合算して20%以内にしなければならないわけではありません。
損害賠償額の予定等の制限(法38条)の概要
宅建業者が自ら売主となる売買契約において、当事者の債務不履行を理由とする契約の解除に伴う損害賠償の額の予定または違約金を定めるときは、これらを合算した額が代金の額の10分の2(20%)を超えることとなる定めをしてはならない(法38条1項)。
注意が必要なのは「これらを合算した額」という点です。損害賠償額の予定と違約金を別々に定めた場合でも、合計額が代金の20%を超えることはできません。「違約金は代金の15%、損害賠償予定額は代金の10%」のように定めれば合計25%となり、違反となります。
「20%超の部分のみ無効」の意味
法38条1項の規定に反する特約(20%超の部分)は、超えた部分についてのみ無効となります(法38条2項)。たとえば代金3,000万円の物件で違約金を900万円(30%)と定めた場合、900万円全体が無効になるわけではなく、20%を超える300万円分(=900万円−600万円)のみが無効となり、600万円(20%)までは有効なものとして残ります。
この「超えた部分のみ無効(一部無効)」というルールは、民法上の損害賠償額の予定が当事者の合意を最大限尊重するのと対照的です。宅建業法は業者に対し上限を設けつつも、上限内の合意を否定しない均衡のとれた設計になっています。
損害賠償額の予定がない場合
当事者間で損害賠償額の予定を定めなかった場合(特約なし)、宅建業法に特段の規定はなく、民法の原則が適用されます。つまり、実際に生じた損害額(実損害)を請求することになります。実損害が20%を超えていても、20%を超える額の賠償を請求できます。「20%以内にしか請求できない」という制限ではないことに注意します。
手付の額と損害賠償額の予定の関係
試験でよく混乱するのが、手付の額(法39条)と損害賠償額の予定(法38条)の関係です。これらは別個の独立した規制であり、合算して20%以内という制限はありません。
手付の額は代金の20%以内(法39条)、損害賠償額の予定は代金の20%以内(法38条)というルールがそれぞれ独立しています。したがって、手付を20%(600万円)受け取っていても、さらに損害賠償額の予定を20%(600万円)と定めることは理論上できます(両規制を個別にクリアしていれば違反ではありません)。
ただし現実には、手付を代金の20%(上限いっぱい)受け取りつつ損害賠償額の予定も20%と定めることは実務上ほぼなく、試験でも「合算で制限される」という誤った理解を誘うひっかけとして登場することがあります。正確な理解として「38条と39条は別の条文で、それぞれ独立して機能する」と覚えておきます。
| 場面 | ルール |
|---|---|
| 損害賠償額の予定・違約金を定める | 合算して代金の20%以内(法38条1項) |
| 20%超の特約 | 超えた部分のみ無効(一部無効)(法38条2項) |
| 損害賠償額の予定なし | 実損害額を請求(民法の原則) |
ここまでの要点は?
- 損害賠償額の予定+違約金の合算 ≦ 代金の20%(法38条1項)
- 20%を超える部分は無効(超えた部分のみ一部無効・法38条2項)
- 予定額の定めがない場合は実損害額の請求(民法の原則に戻る)
- 手付の額(法39条)とは別個の規制(合算して20%という意味ではない)
- 業者間取引(買主も宅建業者)には法38条が適用されない