手付金を払ったが業者が倒産した——それを防ぐ保全措置とは?
手付金等の保全措置(法41条・41条の2) ここで押さえておくべきキーワード
保全措置が必要になる「閾値」を正確に覚える
マンション建設中の段階で大金を業者に支払ったが、業者が破綻した——このリスクを防ぐため、宅建業法は「自ら売主の宅建業者」が「宅建業者でない買主」から手付金等を受け取る場合に保全措置を義務付けています。ポイントは「どの時点で・いくらの金額から」保全措置が必要になるかです。未完成物件と完成物件で基準が異なり、未完成は代金の5%超または1,000万円超、完成は10%超または1,000万円超という数字を正確に覚えることが最優先です。
この論点はどう出る?
Aランクの頻出論点で、Q=40の出題実績があります。「未完成5%超/完成10%超」という閾値の問題、「保全方法3つのうち完成物件のみ使える保管機関はどれか」、「業者間取引には保全措置が不要か(不要)」が繰り返し問われます。H25年(問40-1)では「未完成物件で代金の300万円が代金の5%に相当する場合に保全措置なしで受領できるか」(×:5%「超」が基準だが、問の文脈によっては5%「以下」は保全不要で300万円が5%ちょうどなら受領可)、H25年(問40-3)では「宅建業者間取引では保全措置が不要か」(○)が出ました。数字の「以下」「超」の区別も注意が必要です。
なぜ押さえる必要がある?
手付金等の保全措置は「自ら売主制限(8種制限)」の一つです。宅建業者が自ら売主となる取引は、買主(一般消費者)との情報・知識の格差があるため、消費者保護の観点から特別な規制が設けられています。業者が破産等した場合でも、保全措置を講じていれば買主が手付金等を取り戻せる仕組みです。
前提として何を知っておく?
→ 自ら売主制限総論
自ら売主制限の総論で、8種制限が「宅建業者が自ら売主・宅建業者でない買主(非業者)」の取引にのみ適用されることを確認します。業者間取引には保全措置を含む8種制限は適用されません。
保全措置が必要になる閾値
手付金等の保全措置が必要になる金額の基準は、物件の完成状況によって異なります。
未完成物件の場合(法41条)
以下のいずれかに達した時点で保全措置が必要になります。
①手付金等の合計額が代金の5%を超えるとき
②手付金等の合計額が1,000万円を超えるとき
どちらか早い方(代金5%超か1,000万円超か、先に達した方)の条件を超えた時点で、その超えた受領よりも前に保全措置を講じる必要があります。
例)代金4,000万円の未完成物件の場合:代金の5%=200万円。200万円を超えると保全措置が必要です。1,000万円を超える前に5%を超えるため、こちらが先に適用されます。
完成物件の場合(法41条の2)
①手付金等の合計額が代金の10%を超えるとき
②手付金等の合計額が1,000万円を超えるとき
完成物件の方が基準が緩いのは、完成物件は実態が確認できるため、未完成よりリスクが低いからです。
保全措置の方法
保全措置の方法は次の3つがあります。
①銀行等の連帯保証(法41条1項1号)
銀行等の金融機関が手付金等の全額について連帯保証を行います。未完成・完成物件いずれにも使えます。
②保証保険(一般保証保険)(法41条1項2号)
保険会社が保険引受けを行い、業者が倒産等した場合に保険金として買主に支払われます。未完成・完成物件いずれにも使えます。
③指定保管機関による保管(法41条の2第1項1号)
国土交通大臣の指定する保管機関(不動産協会等)が手付金等を預かり、業者に代わって管理する方法です。この方法は完成物件にのみ適用可能であり、未完成物件には使えません(未完成段階では確定的な引渡しが不確かなため)。
「保管機関=完成物件のみ」というルールは最頻出の内容です。
業者間取引には保全措置不要
宅建業者間の取引(売主・買主ともに宅建業者の場合)には、保全措置の義務は課されません。8種制限の共通の適用除外です。
保全措置を講じた後に受領する
重要なのは手順です。業者は「保全措置を講じた後」でなければ手付金等を受領できません(法41条2項・41条の2第2項)。「受領後に保全措置を講じればよい」ではなく、必ず先に保全措置を実施しなければなりません。
例えば、代金4,000万円の未完成物件で200万円(5%)を超える手付金等を受領しようとするなら、先に連帯保証か保証保険の手続きを完了させてから受領します。
| 物件の状態 | 保全措置が必要になる閾値 | 使える保全方法 |
|---|---|---|
| 未完成物件 | 代金の5%超または1,000万円超 | ①連帯保証 ②保証保険 |
| 完成物件 | 代金の10%超または1,000万円超 | ①連帯保証 ②保証保険 ③指定保管機関 |
ここまでの要点は?
- 未完成物件:代金の5%超または1,000万円超→保全措置必要(法41条)
- 完成物件:代金の10%超または1,000万円超→保全措置必要(法41条の2)
- 指定保管機関は完成物件のみ利用可(未完成物件には使えない)
- 保全措置は先に講じてから手付金等を受領する(逆順は違反)
- 業者間取引には保全措置の義務なし(8種制限の共通適用除外)