手付金は代金のどのくらいまで受け取れるのか? — 手付の額・性質の制限(法39条)
手付の額・性質の制限 ここで押さえておくべきキーワード
代金の半分を「手付」として要求できるのか
「手付金100万円を入れれば物件を確保してあげる」——買主が手付を払った後に業者側から契約を白紙にされたら?あるいは買主が支払った多額の手付を「違約手付」と称して没収されたら?宅建業法は、宅建業者が自ら売主となる場合の手付について、額の制限(代金の20%以内)と性質の制限(解約手付として扱う)の2点を定め、消費者保護を図っています(法39条)。
この規制で何を学ぶ?どう出る?
Aランクの最頻出論点のひとつです。試験では「代金の何%まで受け取れるか」という計算問題と、「手付による解除の条件」(相手方の履行着手前・手付倍返し)が繰り返し出題されます。H27年(問36-2)では「あらかじめ承諾を得れば20%超の手付を受け取れるか」(×)が問われ、R1年(問37-2)では「正当な理由がなければ手付倍返しで解除できないか」(×:正当な理由は不要)が問われました。
なぜ押さえる必要がある?
手付は売買契約の成立証明(証約手付)や、契約解除の担保(解約手付)として機能します。民法上は当事者が自由に定めることができますが、宅建業者が自ら売主の場合は業者・消費者間の情報格差を考慮して2つの制限を設けました。
特に「解約手付とみなす」という規定(39条2項)は重要です。業者が「これは違約手付だから解除権を認めない」という特約を押しつけても無効となり、自動的に解約手付として扱われます。消費者の解除権を確保する趣旨です。
前提として何を知っておく?
→ 自ら売主制限総論
自ら売主制限の全体像で8種制限の枠組みを確認します。本節の手付の額・性質(法39条)と、前節のクーリング・オフ(法37条の2)は別の制限であり、混同しないよう整理しておく必要があります。
手付の額の制限(法39条1項)
宅建業者が自ら売主となる売買契約において、受け取れる手付の額は代金の額の10分の2(20%)以内とされます(法39条1項)。たとえば代金3,000万円の場合、受け取れる手付の上限は600万円です。
この制限に反して20%を超える手付を受け取ることはできません。仮に受け取った場合、超過部分は返還義務が生じます。また、「買主があらかじめ同意した」「双方で合意した」としても、法律の強行規定であるため上限を超えることはできません(39条3項参照)。
なお、この20%の制限は損害賠償額の予定等の制限(法38条)とは別個の規制です。「手付と損害賠償予定額を合算して20%以内にしなければならない」という意味ではありません。
手付の性質の制限(法39条2項・3項)
宅建業者が自ら売主となる場合、受け取った手付は種類を問わず「解約手付」とみなされます(法39条2項)。当事者が「違約手付」や「証約手付のみ」として合意しても、法律上は解約手付として扱われます。
解約手付の効果として、相手方が契約の履行に着手するまでは、次の方法で契約を解除できます。
- 買主:手付を放棄することで解除できる
- 売主(業者):手付の倍額を現実に提供することで解除できる
「現実に提供」とは、単に「倍返しします」という申し出では足りず、実際に倍額の金銭を相手方に対して提供することが必要です。
解除を制限・禁止する特約は無効
法39条3項は、1項(額の制限)・2項(解約手付とみなす)に反する特約で買主に不利なものは無効と定めています。たとえば「業者は手付の倍返しなしに解除できる」「買主は手付を放棄しても解除できない」などの特約は、すべて無効となります。
また「手付の性質を一切認めず、手付を払った後は解除権を与えない」という特約も無効です。消費者が「解約の自由」を持てなくなるような合意は、どのような形であれ認められません。
「手付の倍返し」の要件:現実の提供とは
手付による解除を実行するときの要件として「現実に提供」(法39条2項)が必要です。これは単に「手付の倍額を返します」と口頭や書面で申し出るだけでは足りず、実際に現金等を相手方のもとへ持参するか、相手方が受け取れる状態に置くことが必要です。
「現実の提供」は民法の弁済の提供(民法493条)と同様の意味を持ちます。売主(業者)が「倍額を準備しているので解除します」と言っても、物理的に金銭を提供するまでは有効な解除になりません。この「現実の提供」が完了して初めて売主側からの手付解除が成立します。
なお、手付解除は相手方が「契約の履行に着手するまで」しかできません。「履行の着手」とは、客観的に見て履行に向けた実質的行為に着手した状態を指します(例:売主が物件の引渡しのために準備を始めた、買主が住宅ローンの申し込みをした等)。履行着手後は手付解除ができない点も重要です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 手付の額の上限 | 代金の20%以内(法39条1項) |
| 手付の性質 | 種類を問わず解約手付とみなす(法39条2項) |
| 買主の解除 | 手付を放棄して解除できる(相手方履行着手前) |
| 売主(業者)の解除 | 手付の倍額を現実に提供して解除できる(相手方履行着手前) |
ここまでの要点は?
- 手付の額:代金の20%以内(法39条1項)。双方の合意があっても超えられない
- 手付の性質:種類を問わず解約手付とみなす(法39条2項)
- 買主は手付放棄で解除・売主は倍額の現実提供で解除(相手方の履行着手前)
- 解除を制限・禁止する特約は無効(法39条3項)
- 業者間取引(買主も宅建業者)には法39条が適用されない