「契約の前に届出が必要」な地域とはどんな場所か?
事前届出制(注視区域・監視区域) ここで押さえておくべきキーワード
地価上昇が著しい地域では「事後」では手遅れになる
事後届出制は、土地取引の後に届出を行う仕組みです。しかし地価が急騰している地域では、取引が完結してから勧告しても実効性が低いです。そこで国土法は、地価上昇が激しい地域を「注視区域」や「監視区域」として指定し、それらの区域内では契約締結前に事前届出を義務づける制度を設けました(事前届出制)。
この規制で何を学ぶ?どう出る?
Bランクの論点で、R5年・R6年に出題がありました。試験では「事前届出制では売主・買主の双方が届出する必要がある(事後届出制は権利取得者のみ)」「注視区域の面積要件は事後届出制と同じ(市街化区域2,000㎡以上等)」「監視区域の面積要件は都道府県知事が独自に定める(事後届出の面積より小さくなりうる)」の3点が主に問われます。
なぜ押さえる必要がある?
事前届出制の存在意義は、地価暴騰地域では「取引の前に歯止めをかける」点にあります。事後届出制は取引完了後の勧告で是正を図りますが、急激に値上がりしている地域では後から勧告しても手遅れになることがあります。注視区域・監視区域での事前届出は、知事が「適正価格か」「適正な土地利用計画か」を事前にチェックする機会を与える制度です。届出後、審査期間(原則6週間以内)が経過するまで契約を締結することができません。
前提として何を知っておく?
→ 事後届出制
事後届出制を先に理解しておきます。届出の対象となる権利・面積要件・届出後の知事の措置(勧告等)の基本枠組みは事後届出制と共通する部分が多いです。事前届出制は「事後」ではなく「事前」に届出する点と「売主も届出義務がある」点が最大の相違です。
注視区域(法27条の3)
注視区域とは、都道府県知事が地価が急速に上昇し、または上昇するおそれがある地域のうち、土地利用の適正確保が困難となるおそれがある区域(規制区域を除く)を、5年以内の期間を定めて指定した区域のことです(法27条の3第1項)。「急上昇のおそれ」という段階での指定です。
注視区域内の土地取引の届出面積要件は事後届出制と同じ(市街化区域2,000㎡以上、市街化区域以外の都市計画区域5,000㎡以上、都市計画区域外10,000㎡以上)です。ただし、届出のタイミングは事後ではなく事前(契約締結前)です。また、届出義務者が事後届出制とは異なり、権利取得者(買主等)だけでなく、権利設定者(売主等)も届出義務を負います(法27条の4第1項)。双方が届出しなければならない点が事後届出制との最大の違いです。
監視区域(法27条の6)
監視区域とは、地価が急激に上昇し、または上昇するおそれがある地域のうち、土地利用の適正確保が困難となるおそれがある区域(規制区域を除く)を、5年以内の期間を定めて指定した区域です(法27条の6第1項)。注視区域より地価上昇が深刻な地域が対象となります。
監視区域の特徴は、届出面積要件を都道府県知事が事後届出の面積要件より低い基準として独自に定められる点です(法27条の7第1項)。たとえば、市街化区域内で通常2,000㎡以上が事後届出の対象となるところ、監視区域では300㎡以上の取引から届出が必要とされる場合があります。より小さな土地の取引から規制がかかるのが監視区域の特徴です。
事前届出の手続きと審査
注視区域・監視区域内の土地取引では、契約締結前に都道府県知事に届け出る必要があります。届出後、知事は原則として6週間以内に審査し、土地の利用目的が不適切な場合には変更を勧告します。この6週間の審査期間が経過するまでは、原則として契約を締結できません。6週間が経過しても知事から何も連絡がなかった場合は、自動的に契約締結が可能になります。
勧告に従わなかった場合でも、契約は有効です(勧告は法的拘束力を持ちません)。ただし、勧告に従わなかった旨を公表されることがあります。この点は事後届出制の勧告不遵守の扱いと同様です。一方、届出をせずに契約した場合と、勧告に従わずに契約した場合とでは全く異なる扱いになる点に注意が必要です。
事前届出に対する違反(届出をせずに契約した場合)については、罰則(6か月以下の懲役または100万円以下の罰金)の適用があります。事後届出制の不届出(過料——懲役・罰金等の刑事罰ではない)と比べて罰則が重い点も注意が必要です。罰則の重さの差は、事前届出制が「契約前に行政がチェックする」制度であることの重要性を反映しています。また、届出をせずに締結した契約も私法上は有効ですが、行為者本人は刑事罰の対象となります。
| 区分 | 事後届出制 | 事前届出制(注視区域・監視区域) |
|---|---|---|
| 届出のタイミング | 契約後2週間以内 | 契約締結前 |
| 届出義務者 | 権利取得者(買主等)のみ | 売主も買主も(双方) |
| 面積要件(注視区域) | 市街化区域2,000㎡以上等 | 同じ(2,000㎡以上等) |
| 面積要件(監視区域) | — | 知事が独自設定(事後届出より低い) |
ここまでの要点は?
- 注視区域・監視区域では契約前の事前届出が必要(事後届出ではない)
- 届出義務者は売主・買主の双方(事後届出制は買主のみ)
- 注視区域の面積要件は事後届出制と同じ
- 監視区域は知事が面積要件を独自設定(事後届出の要件より小さくなりうる)
- 届出後6週間の審査期間内は原則として契約締結不可
- 不届出には罰則(6か月以下の懲役または100万円以下の罰金)