未成年者がした契約は有効? — 制限行為能力と未成年者の保護
未成年者 ここで押さえておくべきキーワード
「18歳の子が親に黙って土地を買った」— その契約はどうなる?
未成年者が高額の不動産売買契約を単独で結んだ場合、その契約は有効なのでしょうか。民法は未成年者を「制限行為能力者」として特別に保護しており、一定の行為については親などの法定代理人の同意が必要と定めています。この保護の仕組みと、実際の試験で問われる論点を理解しましょう。
なお、民法の成年年齢は令和4年4月から18歳に引き下げられました(旧来は20歳)。試験では改正後の基準が問われるため注意が必要です。
未成年者で何を学ぶ?どう出る?
未成年者に関する問題では、①どんな行為が単独でできるか(取消し不可のケース)、②誰が取り消せるか・追認できるか、③制限行為能力者が詐術を使った場合の扱い——の3パターンが頻出です。「相手方が善意でも取消し可」という点と、「単に権利を得る行為・日用品の購入は同意不要」という例外が問われやすいです。
なぜ押さえる必要がある?
制限行為能力の制度は、精神的・社会的に未熟な者を一律に保護するための仕組みです。取消しが「相手方の善意悪意を問わない」という点は、詐欺取消し(善意無過失の第三者に対抗不可)と大きく異なります。この違いを意識しながら学ぶと、後の論点との比較が容易になります。
前提として何を知っておく?
民法は契約の当事者を「行為能力者」「制限行為能力者」に分けます。行為能力とは、単独で有効な法律行為を行う能力のことです。未成年者・成年被後見人・被保佐人・被補助人が制限行為能力者に当たります(次節参照)。
未成年者は何ができて、何ができないのか?
未成年者が法律行為をするには、原則として法定代理人(通常は親権者。親権者がいなければ後見人)の同意が必要です(民法5条1項)。同意なしにした行為は取り消せます(5条2項)。
ただし、例外として同意なしでも単独で有効に行える行為が三つあります。①単に権利を得るだけの行為(贈与を受けるなど)、②単に義務を免れる行為(債務免除を受けるなど)、③法定代理人が処分を許した財産の処分(小遣いや特定目的で渡した金銭の範囲内の支出)です(5条1項但書、5条3項)。さらに、法定代理人から営業を許可された範囲内の行為(5条1項・6条)も単独でできます。
取消権は誰が行使できるか — 「相手方の善意」は関係ない
未成年者が同意なしにした行為の取消権は、未成年者本人、またはその代理人・承継人が持ちます(民法120条1項)。相手方の善意悪意は関係なく取り消せます。この点は詐欺取消し(善意無過失の第三者に対抗不可)と根本的に異なります。制限行為能力制度は「行為能力の欠如」という客観的な事実に基づく保護であるため、相手方が知らなかった事情は考慮されません。
なお、取消しができる行為は後から追認(民法122条)することも可能です。追認すれば取消権は消滅し、行為は最初から有効だったことになります。追認は法定代理人(または成年後に本人)が行います。
催告権 — 相手方が「どうするの?」と確認できる
取消しできる行為の相手方が長期間不安定な状態に置かれるのは不公平です。そこで相手方には催告権が認められています(民法20条)。相手方は一定の期間(1か月以上)を定めて「追認するか取り消すか明らかにしなさい」と催告できます。
催告を受けた側(未成年者の法定代理人または成年後の本人)がその期間内に確答しなければ、追認したとみなします。ただし催告の相手方が未成年者本人の場合(法定代理人への催告ではない)は、その期間内に確答がなければ取り消したとみなします(未成年者本人への催告は確答の能力が十分でないため)。
詐術を使った場合 — 保護は受けられない
未成年者が「自分は成年者だ」と偽って(または成年者であることを示す書類を偽造して)相手方を誤信させた場合、取消権は認められません(民法21条)。これを「詐術の抗弁」といいます。制限行為能力制度は保護のための制度であり、自ら欺く行為をした者に保護を与えるのは衡平に反するからです。
「詐術」が認められるには、積極的に相手方を欺いた事実が必要で、単に「自分が未成年であることを黙っていた」だけでは詐術にはなりません。
未成年者の法定代理人の権限
法定代理人は、未成年者の法律行為に同意を与える権限(同意権)、未成年者がした行為を取り消す権限(取消権)、未成年者に代わって行為をする権限(代理権)、取り消せる行為を有効に確定させる権限(追認権)をすべて持ちます。
また法定代理人は、未成年者が将来行う特定の行為について事前に同意することもできます(包括的同意)。逆に、すでに同意を与えた行為でも、まだ実行されていない段階であれば同意を撤回できます。
| 行為の種類 | 同意の要否 | 違反した場合 |
|---|---|---|
| 原則(重要な法律行為) | 法定代理人の同意が必要 | 取消可 |
| 単に権利を得・義務を免れる行為 | 同意不要 | 有効(取消不可) |
| 処分を許可された財産の処分 | 同意不要 | 有効(取消不可) |
| 許可された営業の範囲内 | 同意不要 | 有効(取消不可) |
| 詐術を使った行為 | — | 取消不可 |
ここまでの要点は?
- 未成年者は法定代理人の同意なしにした行為を取り消せる(民法5条2項)。
- 取消しは相手方の善意・悪意を問わない(制限行為能力保護の趣旨)。
- 単に権利を得るだけの行為・処分許可財産の処分・営業許可範囲の行為は単独で有効。
- 催告を受けて確答しない場合→法定代理人への催告なら追認みなし、本人への催告なら取消しみなし。
- 詐術を使った未成年者は取消権を失う(民法21条)。