「引渡し前に建物が火事で焼けた」— 代金は払うべきか?危険負担の考え方
危険負担 ここで押さえておくべきキーワード
この章は過去問が0問のため、概念の整理に特化した導入ページとして扱います。
危険負担とは何か
売買契約成立後・引渡し前に、目的物が売主・買主どちらの責任でもなく(天災・不可抗力等で)滅失した場合、買主は代金を払う義務が残るか——これが「危険負担」の問題です。
目的物を引渡せなくなった(履行不能)場合、売主の引渡義務は消滅します。
問題は「それに対応する買主の代金支払義務も消えるのか」です。
代金を払い続けなければならないなら、危険は買主が負担したことになります(「債権者主義」)。
消えるなら、危険を売主が負担したことになります(「債務者主義」)。
図の見方: この図では、「危険負担」の当事者関係を、矢印の流れに沿って整理しています。
登場人物・対象物と矢印の向きを順に追ってください。
図解 / 権利関係
引渡し前に双方の責任なく滅失したら、買主は代金を拒める
滅失について買主Bに責任があるか?
売買目的物が引渡し前に双方の責めに帰せない事由で滅失した場合、買主は反対給付である代金の支払いを拒絶できる。買主に帰責事由がある場合は例外。
この図で見ること
- Bに責任がない:代金支払いを拒絶できる
- Bに責任がある:代金義務を免れない
引渡し後は危険が買主へ移転する
2020年改正後のルール
旧民法では特定物(一定の物)については「債権者主義」(買主がリスクを負う)が原則でした。
しかし2020年(令和2年)施行の改正民法では、これを改め債務者主義を原則としました(民法536条1項)。
引渡し前に、売主・買主双方の責めに帰すことができない事由によって目的物が滅失・損傷した場合、買主は代金の支払いを拒絶できます(反対給付の履行を拒否できます)。
さらに買主は催告なしに契約を解除することもできます(民法542条1項1号・履行不能)。
ただし、買主の責めに帰すべき事由(買主が保管中に壊したなど)による滅失の場合は、買主は代金支払義務を免れません(民法536条2項)——危険を負担させるべき原因が買主にある場合には例外となります。
引渡しで危険が移転する
改正民法では、目的物の引渡しによって危険が売主から買主へ移転するとされます。
引渡し後は、仮に不可抗力で目的物が滅失しても、買主は代金支払義務を免れません(民法567条)。
これが「引渡しの重要性」を裏付ける民法上の根拠の一つです。
ここまでの要点は?
- 危険負担:引渡し前に目的物が滅失した場合に「代金を払うか」の問題。
- 改正民法では債務者主義が原則(民法536条1項)——買主は代金支払いを拒否できる。
- 買主の帰責事由がある場合は例外(代金支払義務が残る)。
- 引渡し後は危険が買主に移転する(民法567条)。
- 過去問なし——出題頻度は低いが、改正後の原則(債務者主義)は押さえておく。