「一人が払ったら他の人の債務も消える?」— 連帯債務の絶対効と相対効
絶対効・連帯債務 ここで押さえておくべきキーワード
「複数の人が同じ借金を全員で負っている」— 連帯債務の構造
「AとBとCが共同して1,000万円の借金をした」場合、各人が1,000万円全額の責任を負うのが「連帯債務」です。
一人が全額払えば他の者の債務も消滅します——一方で一人の事情(相殺・時効の完成等)が他の者に影響するか否かは「絶対効か相対効か」で決まります。
絶対効・連帯債務で何を学ぶ?どう出る?
8問が出題されます。
連帯債務における「絶対効」(一人に生じた事由が全員に影響)と「相対効」(一人に生じた事由は他に影響しない)の区別が試験の核心です。
「相殺は絶対効」「時効の完成は相対効(2020年改正で変更)」「履行(弁済)は絶対効」の三点を正確に押さえましょう。
なぜ押さえる必要がある?
共同で事業を行う際や不動産を共同購入する際など、複数人が一つの債務を負うケースは実務上あります。
一人の事情が他の債務者に波及するかどうかは、それぞれの連帯債務者の利益に直結します。
連帯債務とは
連帯債務とは、複数の債務者が「一つの債務」について各自が全額の弁済義務を負う状態です(民法432条)。
各連帯債務者は独立して履行責任を負い、債権者はどの連帯債務者に対してでも全額請求できます。
一人が全額弁済すれば他の連帯債務者の債務も消滅します。
不動産の売買で複数の共有者が債務を負う場合や、夫婦で住宅ローンを共同で借りる場合などが典型的な場面です。
図の見方: この図では、「連帯債務の構造」を、構成要素どうしの関係で整理しています。
債権者・債務者などの立場と、権利が及ぶ範囲に注目してください。
図解 / 権利関係
債権者は、どの連帯債務者にも全額を請求できる
一人が全額弁済すれば全員の債務が消滅し、内部で求償する
連帯債務では複数の債務者B・Cがそれぞれ全額について独立に責任を負い、債権者Aは誰にでも全額を請求できる。
この図で見ること
- B 連帯債務者:全額の請求を受ける
- C 連帯債務者:全額の請求を受ける
一人が全額弁済すれば全員の債務が消滅し、内部で求償する
絶対効(一人の事由が全員に影響する)
連帯債務において、一人の連帯債務者に生じた事由が他の者の債務にも影響する(全員の債務が消滅する等)場合を「絶対効」といいます。
絶対効となる事由:①弁済(および代物弁済・供託)——一人が全額弁済すれば全員の債務が消滅します。
②相殺——連帯債務者の一人が債権者に対して債権を持っている場合、その者が相殺すると他の連帯債務者もその限度で債務が消滅します(民法434条)。
③更改——連帯債務者の一人と債権者との間で更改(債務の内容変更)がなされた場合、全員の債務が消滅します(民法438条)。
④混同——連帯債務者の一人が債権者を相続した場合など、弁済があったとみなされます(民法440条)。
相対効(原則:一人の事由は他に影響しない)
2020年改正で、連帯債務者間の影響は「相対効が原則」に改正されました。
以前は時効の完成猶予・更新(旧法:時効の中断)が絶対効でしたが、改正後は相対効に変わりました。
つまり「一人の連帯債務者の時効が更新されても、他の者の時効は更新されません」。
したがって時効の完成・完成猶予・更新は相対効(他の連帯債務者に影響しない)。
各連帯債務者は独自の時効期間が進行します。
図の見方: この図では、「絶対効と相対効の整理」を、判断に必要な項目ごとに整理しています。
各項目を上から確認し、どの要件で結論が分かれるかを押さえてください。
図解 / 権利関係
全員に影響する例外だけを覚え、その他は相対効と考える
一人の時効更新は、他の連帯債務者の時効を更新しない
連帯債務で一人に生じた事由のうち、弁済・相殺・更改・混同は全員に影響する絶対効で、時効・請求・猶予・免除は原則として相対効となる。
この図で見ること
- 絶対効、全員に影響:弁済・代物弁済・供託・相殺・更改
- 相対効、本人だけ:時効の完成・更新・猶予・請求・履行の猶予
一人の時効更新は、他の連帯債務者の時効を更新しない
連帯債務者間の求償
一人の連帯債務者が全額弁済した場合、他の連帯債務者に対して求償権を行使できます(民法442条)。
求償できる範囲は「各連帯債務者の負担部分に応じた額」です。
例えば3人の連帯債務者が平等に負担すると約束していた場合(各1/3)、一人が1,000万円全額払えば、他の2人それぞれに333万円を求償できます。
求償権を適切に行使するためには、弁済前に他の連帯債務者に事前通知をし、弁済後に事後通知をする必要があります(民法443条)。
事前通知を怠ったために別の連帯債務者が「二重弁済」をしてしまった場合、弁済した連帯債務者は他の者に求償できません。
また事後通知を怠った場合も、後から弁済した他の連帯債務者から「自分の弁済で相殺できた」等の対抗を受けることがあります——求償の手続き上の注意点です。
連帯債務と保証債務の根本的な違いも整理しておきましょう。
連帯債務者は「同じ債務を独立して負担する複数の债务者」であるのに対して、保証人は「主たる債務者が弁済できない場合の補完的な義務者」です。
したがって連帯債務者間には「負担部分」はあっても「付従性」はなく、各自が独立して責任を負います。
保証には付従性(主たる債務が消えれば保証も消える)がありますが、連帯債務には付従性はありません——この違いが両制度の根本です。
絶対効と相対効の主な事由をまとめておきましょう。
| 事由 | 絶対効か相対効か |
|---|---|
| 弁済(代物弁済・供託) | 絶対効(全員の債務消滅) |
| 相殺 | 絶対効(相殺可能額の限度で全員の債務消滅) |
| 更改 | 絶対効(全員の旧債務消滅) |
| 時効の完成猶予・更新 | 相対効(2020年改正・他には影響なし) |
| 請求・履行の猶予・免除 | 相対効(他には影響なし) |
ここまでの要点は?
- 連帯債務:各連帯債務者が全額について責任を負う(民法432条)。
- 絶対効:弁済・相殺・更改・混同は全員に影響する。
- 相対効(原則):2020年改正で時効の完成猶予・更新は相対効に変更。
- 求償権:一人が全額払った場合、他の者に負担部分を求償できる。