「二人で一緒に買った土地——誰が使える?誰が決める?」— 共有物の使用・管理
共有物の使用・管理 ここで押さえておくべきキーワード
「友人と共同購入した土地、どちらが使えるの?」
複数の人が一つの不動産を共同で所有する「共有」の場面は実務上よくあります。
相続で兄弟が共同で不動産を取得した場合や、共同事業者が土地を購入した場合などです。
「共有者全員で使える」ことは直感的に分かりますが、「修理は誰が決める?」「売却できる?」「貸し出せる?」は法律の仕組みを理解しないと答えられません。
共有物の使用・管理で何を学ぶ?どう出る?
21問が出題されます。
行為の種類(保存行為・管理行為・変更行為)によって必要な合意の頭数が異なる点が核心です。
「各自の持分で処分できる」「変更には全員同意が必要」「過半数で賃貸借の解除ができる(2023年改正)」が頻出のひっかけポイントです。
なぜ押さえる必要がある?
相続により共有状態が生じた不動産の取引では、共有者全員の合意が必要な場面と過半数で足りる場面を誤ると取引が無効になります。
重要事項説明で「共有物の場合の注意点」を正確に伝えられることが求められます。
前提として何を知っておく?
持分とは、各共有者が持つ共有物に対する権利の割合です(民法250条)。
法律や契約で別段の定めがなければ「平等の持分」と推定されます(民法250条)。
各共有者は持分の割合で共有物の全体を使用できる権利を持ちます(民法249条)。
共有者の使用権
各共有者は、共有物の全部を、その持分の割合に応じて使用することができます(民法249条1項)。
例えば3人が均等な持分で土地を共有している場合、各自が1/3ずつしか使えないわけではなく、「土地全体」を使うことができます(ただし他の共有者も同様に使用できます)。
図の見方: この図では、「共有物の使用」の当事者関係を、矢印の流れに沿って整理しています。
登場人物・対象物と矢印の向きを順に追ってください。
図解 / 権利関係
持分が一部でも、各共有者は共有物全体を使用できる
民法249条
共有者は自分の持分に対応する物理的部分だけでなく、持分割合に応じて共有物の全体を使用できるが、他の共有者の使用も尊重する必要がある。
この図で見ること
- 共有者A:持分1/3
- 共有者B:持分1/3
- 共有者C:持分1/3
共有者A:持分1/3。共有者B:持分1/3。共有者C:持分1/3
共有者間で使用方法(特定の共有者に使用させる等)を決める際は「管理行為」として決議できます(後述)。
行為の三分類
共有物への行為は「性質・重大さ」によって三種類に分類され、それぞれ必要な合意の数が異なります。
①保存行為(民法252条5項):共有物の現状を維持する行為。
建物の修繕・不法占拠者への明渡し請求等。
各共有者が単独で行える(誰でも一人でできます)。
②管理行為(民法252条1項):共有物の利用や改良に関する行為。
賃貸借の締結(短期)・修繕の種類の決定等。
持分の価格の過半数で決定できます(頭数ではなく持分の割合の過半数)。
③変更行為(民法251条):共有物の性質・形状を変える行為(売却・建物の取壊し等)。
共有者全員の同意が必要です。
持分の割合に注意が必要です。
例えば A が2/3・B が1/6・C が1/6の場合、管理行為はAだけの同意(2/3 > 1/2)で可能です。
賃貸借と短期賃貸借の管理
2023年改正(民法251条・252条改正):それまで「変更行為は全員同意」「管理行為は過半数」という原則は変わっていませんが、短期賃貸借の解除が管理行為(過半数で決定できます)と明確化されました。
「賃貸借の締結」も管理行為(短期の場合は過半数で可)ですが、長期賃貸借(土地は5年超・建物は3年超・動産は6か月超)の設定は変更行為(全員同意が必要)となります。
各共有者は、自分の持分を自由に譲渡・抵当権設定等ができます(民法206条・持分処分の自由)。
ただし共有物全体を売却するためには全員の同意が必要です。
持分の放棄と第三者への譲渡
共有者は自分の持分を放棄することができます(民法255条)。
放棄した場合、その持分は他の共有者に均等に帰属します(持分比率が変わります)。
また共有者の一人が死亡し、相続人がいない場合(国庫帰属の問題を除き)、その持分は他の共有者に帰属します(民法255条)。
持分の「第三者への譲渡」は自由で、他の共有者の同意は不要です。
例えばABCが共有している土地でAが自分の持分1/3を見知らぬDに売っても、BCの同意は不要です。
ただし実際には共有者が望まない第三者と共有状態になるため、後に分割問題が生じることもあります。
共有者不明・不在者問題:相続により共有状態が生じた不動産で共有者の一人が行方不明になると、管理行為(過半数)や変更行為(全員同意)の決議が困難になります。
2021年〜2023年の民法・不動産登記法改正で「所在等不明共有者の持分の取得・譲渡」「管理者の選任(裁判所に請求)」などの手続きが整備されました。
試験ではこれらの細かい改正内容より、「管理行為・変更行為の要件」の基本が問われる点を意識しておきましょう。
共有物の管理費用の負担:各共有者は、持分の割合に応じて共有物の管理に関する費用を負担します(民法253条1項)。
この費用を負担しない共有者がいた場合、他の共有者は1年以内に催告し、それでも負担しない場合はその者の持分を取得することができます(民法253条2項)——問題行為を繰り返す共有者を排除する手段です。
このルールは試験でも問われることがあるため、押さえておくと安心です。
ここまでの要点は?
- 共有者は持分の割合で共有物全体を使用できる(民法249条)。
- 保存行為:各自単独でできる。管理行為:持分過半数。変更行為:全員同意。
- 長期賃貸借の設定=変更行為(全員同意)、短期は管理行為(持分過半数)。
- 自分の持分だけなら自由に処分できる(他の共有者への事前通知不要)。