過去問を解いていて、問題文に「3日後」「2週間以内」と数字が出てきた瞬間、「あれ……ここ、正しいんだっけ」と手が止まる。覚えたはずの数字と照合できない不安で、本当は別のことを聞いている問題まで疑ってしまう——期間・期限は、宅建の受験生がいちばん振り回される種類の知識です。
そこで、収録している平成25年以降の本試験15回の全肢から、期間・日数・期限の言葉を含む438肢を拾い、1本ずつ「この肢の正誤は、本当に期間の知識で決まったのか」を判定しました。今回は判定の結果を1肢ずつ全部保存してあります(末尾の集計方法参照)。つまりこの記事の数字は、あとから誰でも検算できます。
※この記事は2026-08-13に集計をやり直した改訂版です。以前の版のランキングには、論点の数え方に不備がありました(詳細は末尾)。

まず仕分け——期間が「書いてある」肢の4割は、期間で決まらない
438肢のうち、法改正で現行法の論点として成立しなくなった2肢を除いた436肢を、2つに振り分けました。
| 分類 | 肢数 |
|---|---|
| 核心——期間・起算点の知識がないと正誤を判断できない | 264本 |
| 背景——期間は書いてあるが、正誤を分けるのは別の論点 | 172本 |
たとえばクーリング・オフの問題で「喫茶店で申込みをし、3日後に事務所で契約した」と出てきても、この肢の正誤を決めているのは申込みの場所であって、3日という日数ではありません。「破産手続開始から30日以内に代表役員が届け出る」の30日は正しくて、ウソは届出者(正しくは破産管財人)。期間の語を含む肢の4割は、こういう「数字は無実」の肢です。
だから、数字が見えた瞬間に全部を照合しにいかなくていい。まず「この肢は何で正誤が決まるのか」——場所か、主体か、要否か、それとも本当に期間か。この一呼吸が、期間に振り回されない読み方の入口です。
それでも、期間だけで毎年3〜4問の正解が確定する
ここは肢の数ではなく、問題の数で見ないと意味がありません。核心264本を問題単位に畳み直しました。
| 見方 | 実測 | 1回の試験あたり |
|---|---|---|
| 期間の核心肢を含む問題 | 187問 | 12.5問(4問に1問) |
| うち正解肢そのものが期間で決まる=期間の知識だけで正答が確定する | 53問 | 3.5問 |
| 正解肢は別論点で、期間は他の肢を切るのに効く | 128問 | 8.5問 |
肢数を4で割って「何問ぶん」と言うことはできません(1問の中に核心肢が1本だけ、という形がほとんどだからです)。
正しくは、期間を知っているだけで正解まで確定するのが毎年3〜4問。それに加えて、毎年8〜9問で
「この肢は期間で切れる」という消去に効きます。取りにいく3〜4問と、消去を助ける8〜9問——この2段で考えてください。
科目別の内訳がこれです(核心肢ベース)。
| 科目 | 核心の肢数 |
|---|---|
| 宅建業法 | 153本 |
| 権利関係 | 74本 |
| 法令上の制限 | 20本 |
| 税・その他 | 17本 |
6割弱が宅建業法に集中しています。業法は満点を取りにいく科目なので、期間の取りこぼしはそのまま失点になります。
出題ランキング——「期間の知識で決まった」肢数の実測
核心264本を、覚える単位(1つの数字+1つの起算点で言い切れる粒度)ごとに数えた上位です。
| 順位 | 論点 | 肢数 |
|---|---|---|
| 1 | 8種制限の通知特約 引渡しから2年以上 | 12本 |
| 2 | 欠格の即時回復(5年を待たない例外) | 9本 |
| 3 | 換地処分の公告の翌日 | 7本 |
| 3 | クーリング・オフ 告げられた日から8日 | 7本 |
| 3 | 廃業等の届出 30日以内 | 7本 |
| 3 | 住宅瑕疵担保 基準日から3週間の届出 | 7本 |
| 3 | 定期借地権の期間区分(50年・30年・10〜50年) | 7本 |
| 8 | 営業保証金の不足額供託 通知から2週間 | 6本 |
| 8 | 免許・登録の欠格期間5年 | 6本 |
| 8 | レインズ登録 7日/5日(休業日除く) | 6本 |
1位は意外に見えるかもしれません。「引渡しから2年以上」の特約は、12本中10本が民法改正前の表現の問題(改正対応で公開を止めている過去問)で、論点そのものは現行の宅建業法40条にそのまま生きています。改正後もR4・R7で出題が続いており、「特約は2年以上なら有効・未満なら無効になって民法(知った時から1年)に戻る」の1セットが、15回で12回試された計算です。
2位も「5年」ではなく「5年を待たない例外」であることに注目してください。執行猶予の満了・破産の復権はその瞬間に欠格が消える——この即時回復が9本で、欠格期間5年そのもの(6本)より多く問われています。表ドリルの欠格期間は、まさにこの「待つ場合と待たない場合」の表です。
本当の発見——「覚える数字」と「間違えさせられる数字」は別物
ここからがこの記事の核心です。264本の核心肢を、何が試されたかで3つに分けました。
| 試されたもの | 肢数 | 中身 |
|---|---|---|
| 数字の値そのもの | 143本 | 2週間を1週間に、50日を1月に、6か月を3か月に |
| 期間ルールの中身 | 72本 | 特約は有効か・満了したらどうなるか・休業日は数えるか |
| 起算点・前後・翌日 | 49本 | いつから数えるか・事前か事後か |
数字の値が試されたのは半分強。残り半分は、数字を完璧に覚えていても落とせる場所——起算点とルールの中身です。
その象徴がクーリング・オフの8日です。関連する肢は59本、肢文に「8日」が出てくるだけでも12本ある、期間の登場回数では最上位の数字です。ところが核心と判定された7本の内訳は——7本すべてが起算点の争いでした。
- 起算は書面で告げられた日(申込日でも契約日でもない・R1問38、R2⑫問39)
- 書面で告げられていなければ期間がそもそも進まない(H26問38、R3⑫問43、R7問40)
- 「告げられた日の翌日から起算」は誤り——告げられた日から数える(R2⑩問40)
そして15回・438肢の中に、8日を7日や10日に差し替えた肢は1本もありません。8日は「間違えさせる数字」ではなく「知っていて当たり前の前提」として置かれ、出題者はその手前(起算点)と周辺(発信主義4本・買主に有利な特約3本)で勝負している——これが実測から見えた出題者の手口です。
覚え方も、ここから素直に決まります。8日という数字は1回覚えたら終わり。練習すべきは「いつから数え始めるか」の判定です。
まとめ直す——「箱」で覚えて、例外で差をつける
上のランキングは出題の実測です。ただ、これを10個バラバラに暗記するのはもったいない。一段だけ抽象を上げると、多くが3つの箱に畳めます。
箱1——会社や資格者に変化があったら「30日」
宅建業者・宅建士の身分や体制に何かが変わったときの届出は、原則ぜんぶ30日以内です。商号・役員・事務所・専任宅建士が変わった(変更の届出)。廃業した・合併で消滅した・破産した(廃業等の届出)。宅建士が死亡した(死亡等の届出)。全部30日。ここは論点ごとに「覚える」というより、変化したら30日、を当たり前の基準線として持つ——本店を移しても、役員が代わっても、まず30日です。
30日を覚えたら、次は誰が・いつからを1個ずつ貼ります。死亡だけ「知った日から」(R3⑫問29)。破産は破産管財人が、解散は清算人が届け出る。R7問41は「解散を代表役員が60日以内に」と、数字と主体を同時にずらしてきました。
そのうえで、基準線から外れる例外だけを差分で覚えます。
| 30日ではない例外 | 期限 |
|---|---|
| 専任宅建士が不足したときの補充 | 2週間以内 |
| 案内所等の届出 | 業務開始の10日前まで |
| 宅建士の変更の登録(氏名・住所) | 遅滞なく |
実物で確かめてください。基準線の30日を、そのまま例外に当てはめたウソです。
専任宅建士だけ2週間と短いのは、お店の法定の体制が欠けたままの営業を長く許せないから。案内所は事後の報告ではなく事前の届出という向きの違い。宅建士個人の登録簿の書き換えは日数の縛りすらなく「遅滞なく」です。
箱2——媒介契約は、単独で覚えず「3点セット」
ランキング8位の「レインズ登録7日」は、単独の数字として覚えると、専属専任や一般が出た瞬間に崩れます。縛りが強い契約ほど、業者の義務が1段重くなる——この向きで3列まとめて持ちます。
| 一般 | 専任 | 専属専任 | |
|---|---|---|---|
| レインズ登録 | 義務なし | 7日以内 | 5日以内 |
| 業務処理状況の報告 | 義務なし | 2週間に1回 | 1週間に1回 |
| 有効期間の上限 | 規制なし | 3か月 | 3か月 |
登録の期限は休業日を除いて数えます——実測では、7日・5日という数字の差し替えと同じくらい、この「休業日を含めるか」がウソに使われていました(R1問31・R5問40ほか)。専属専任は専任より2日短く・報告は倍。有効期間だけは専任と専属専任で同じ3か月、という非対称も含めて1枚で。「一般には全部の規制がない」も4本まとめて出ています(R3⑩問38)。
箱3——お金の安全網は「通知から2週間」
営業保証金の不足額の供託も、保証協会への還付充当金の納付も、通知を受けてから2週間以内。起算はどちらも「不足が生じた日」「還付があった日」ではなく通知の到達です(H25問27・R3⑩問31が起算ずらし)。例外は、保証協会の社員の地位を失った後に自前で営業保証金を供託する場面だけ1週間(協会の傘が消えた業者を、短い猶予で元の原則に戻す場面)。逆向きの前払いが1つ——分担金は「加入する日まで」。加入後1週間・2週間と書いてあったら、それは後払いへの反転です(H25問39・R1問33・R3⑫問39と3回出ています)。
箱4——業法の「身分と書類」は5年
免許の有効期間は5年。宅建士証の有効期間も5年。欠格期間も5年。帳簿の保存も5年。業法で身分や書類の年数を聞かれたら、まず5年が基準線です。外れるのは——従業者名簿は10年、帳簿のうち新築住宅の売買に係るものは10年、犯罪収益移転防止法の取引記録は7年。「名簿と新築だけ10年、犯収法は7年」と差分で持ちます。
そしてランキング2位のとおり、5年より出るのが5年を待たない例外です。執行猶予は満了した瞬間、破産は復権した瞬間に欠格が消える。逆に、1年以内に事業を開始しない取消しは三大悪事ではないので5年縛りがつかない(R2⑫問31)。「5年待つのは誰か・待たないのは誰か」の線で覚えてください。
箱5——借家は、貸主からは「6か月」
建物賃貸借で貸主の側から契約を終わらせる話は、6か月が芯です。期間の定めのない借家の解約申入れは6か月。更新拒絶の通知は期間満了の1年前から6か月前まで。定期借家の終了通知も1年前から6か月前まで——「1年前から6か月前」の帯が2回出てくるのは偶然ではなく、貸主側の予告はどれも「借主に半年の猶予を残す」設計だからです。例外は向きが逆のとき——借主からの解約申入れは3か月(民法)。R7問12は「貸主からも借主からも6か月」と、この非対称を均してきました。
対で覚える表——片方だけ覚えると、片方でひっかかる
箱に入らない上位論点は、出題実績のある対にして持ちます。
| 対 | 覚えの軸 |
|---|---|
| 引渡しから2年以上(8種制限の特約) ⇔ 知った時から1年(民法) | 特約が無効なら民法に戻る |
| 欠格期間5年 ⇔ 執行猶予満了・復権は直ちに解消 | 5年を待たない例外の方がよく出る |
| 基準日から3週間(届出) ⇔ 翌日から50日(新規契約禁止) | 住宅瑕疵担保のセット |
| 借地権30年 ⇔ 最初の更新20年(以後10年) | 定めが短くても引き上げ |
| 取得時効10年 ⇔ 20年 | 善意無過失かどうか |
| 消滅時効 知った時から5年 ⇔ 行使できる時から10年 | 主観は短く、客観は長く |
| 不法行為 知った時から3年 ⇔ 行為の時から20年 | 同じ軸(生命・身体なら5年⇔20年) |
| 国土法 事後届出2週間 ⇔ 注視・監視区域の事前届出6週間 | 事後は短く、事前は長く |
| 更新受付は満了の90日前から30日前まで | 開始と締切を1本の帯で |
「遅滞なく・速やかに・直ちに」——三語の違いで決まった肢は、ほぼ無い
期間の勉強で受験生を悩ませるのが、この三語の使い分けです。ところが判定結果を検索すると、どの語が使われているかの違いだけで正誤が決まった肢は、ほとんどありません。三語を含む肢の大半は背景(別の論点が決め手)でした。
出題者が実際に使っているのは、「事前か、事後か」の入れ替えです。
| 義務 | 正しいタイミング | 過去問で作られたウソ |
|---|---|---|
| 35条書面(重要事項説明) | 契約成立の前 | 「成立したときは遅滞なく」(R3・12月・問35) |
| 供託所等に関する説明 | 契約成立の前 | 「成立後、速やかに」(R3・12月・問32) |
| 手付金等の保全措置 | 受領の前 | 「受領した後に速やかに」(R5問39) |
| 37条書面 | 契約成立の後、遅滞なく | ——(前に持ってくるのが定番のウソ) |
| 盛土工事の周辺住民への周知 | 許可申請の前 | 「着手後2週間以内に」(R6問19) |
だから学習の順番はこうなります。三語の厳密な優劣を暗記するより先に、義務ごとに「契約の前にやるのか、後にやるのか」を確定させる。それだけで、この一群の肢は三語がどれであっても揺れなくなります。

起算日——「いつから数えるか」だけで49本
数値が合っていても、起算点をずらされる肢が実測で49本ありました。代表的な型です。
| 起算点の型 | 例 |
|---|---|
| 公告があった日の翌日 | 換地処分の効果(実測7本・ほぼ隔年で問20に出続けている)・開発の公共施設の管理・資力確保の50日 |
| 告げられた日から | クーリング・オフの8日(申込日・契約日ではない。翌日起算も誤り) |
| 契約を締結した日から | 国土法の事後届出2週間(「翌日から起算して3週間」「登記完了の日から」がウソの型) |
| 知った日から | 業者の死亡の届出・相続放棄の3か月・契約不適合の通知1年(「工事が終わった日から」がウソの型・R5問3) |
| 前払いへの反転 | 保証協会の分担金は「加入する日まで」 |
なお令和4年の問5は、初日不算入・応当日・月末という期間の計算だけで1問を作っています。期間は、値・起算点・数え方の3点セットで聞かれうる、と覚えておいてください。
結局、どうするか
- 箱と対で覚える。 変化したら30日。身分と書類は5年。安全網は通知から2週間。貸主からの借家の予告は6か月。媒介契約は3点セット。例外(専任宅建士の2週間・案内所の10日前・名簿の10年・借主の3か月)は基準線からの差分で。残る上位論点は対で——2年は民法の1年と、5年は「待たない例外」とセットです。
- 数字を覚えたら、その横に「いつから」を1個貼る。 試された264本の半分は、数字の値ではなく起算点とルールの中身でした。クーリング・オフの8日のように、数字は前提で起算点が主戦場、という論点が上位に並びます。
- 数字が出てきても、まず「何で決まる肢か」を見る。 期間が書いてある肢の4割は、場所・主体・要否で決まります。覚えていない数字に出会っても、それが決め手とは限らない——この事実を知っているだけで、本番の動揺は減らせます。
期間・期限は、量こそ多いものの、出どころの偏りがはっきりしている分野です。全部を均等に暗記しにいかず、決まる場所から順に固めてください。
集計方法について。 収録過去問(H25〜R7・15回)の全肢から期間・日数・期限の言葉を含む438肢を抽出し、1肢ずつ「期間・起算点の知識が正誤判断に必要か(核心/背景)」「試されたのは数字の値・起算点・ルールの中身のどれか」を、肢文と解説を読み比べて判定しました。判定は全肢ぶん保存してあり、集計はそこから機械的に再現できます。民法改正などで現行法の論点として成立しない2肢は除外し、改正で公開を止めている過去問でも論点が現行法に生きているもの(例:8種制限の2年特約)は数に含めています。なお、この記事の以前の版のランキングは「関連する語が登場した肢数」を数えており、期間以外が決め手の肢が順位に混ざる不備がありました。本版で全数判定に基づく順位に置き換えています。