過去問を解いていて、問題文に「3日後」「2週間以内」と数字が出てきた瞬間、「あれ……ここ、正しいんだっけ」と手が止まる。覚えたはずの数字と照合できない不安で、本当は別のことを聞いている問題まで疑ってしまう——期間・期限は、宅建の受験生がいちばん振り回される種類の知識です。
そこで、収録されている平成25年以降の本試験15回・全部の選択肢を機械的に走査し、期間・日数・期限が出てくる肢を全数拾って、1本ずつ読み分けました。結論から言うと、振り回されなくてよくなる数字が出ています。

ここに注目——期間が「書いてある」肢の4本に1本は、期間で決まらない
走査でヒットしたのは490肢。その全部を読み、次の2つに振り分けました。
| 分類 | 肢数 |
|---|---|
| 核心——期間の値・起算点を知らないと正誤が決まらない | 361本 |
| 背景——期間は書いてあるが、正誤を分けるのは別の論点 | 129本 |
たとえばクーリング・オフの問題で「喫茶店で申込みをし、3日後に事務所で契約した」と出てきても、この肢の正誤を決めているのは申込みの場所であって、3日という日数ではありません。開発許可の「あらかじめ、都道府県知事の許可」も、正誤は面積と区域で決まります。報酬の「借賃の1か月分」は金額の単位です。
つまり、数字が見えた瞬間に全部を照合しにいかなくていい。まず「この肢は何で正誤が決まるのか」——場所か、主体か、要否か、それとも本当に期間か。この一呼吸が、期間に振り回されない読み方の入口です。
それでも、期間は1回の試験の約13%を決めている
背景を除いた核心361本は、1回の試験あたり平均24肢。全部の肢のおよそ13%、体感では毎年6〜8問ぶんが「期間を覚えているか」で削れる計算です。無視できる量ではありません。
科目別の内訳がこれです。
| 科目 | 核心の肢数 |
|---|---|
| 宅建業法 | 209本 |
| 権利関係 | 94本 |
| 法令上の制限 | 40本 |
| 税・その他 | 18本 |
6割弱が宅建業法に集中しています。業法は満点を取りにいく科目なので、期間の取りこぼしはそのまま失点になります。権利関係は時効・借地借家・契約不適合の3本柱にほぼ集約され、法令上の制限は届出の期限(国土法・盛土・区画整理・農地)——数値そのものより「いつから数えるか」「事前か事後か」で決まる肢が中心です。
出題ランキング——覚える数字の優先順位
核心361本を論点別に数えた上位です。
| 論点 | 肢数 |
|---|---|
| クーリング・オフ 告知から8日 | 30本 |
| 契約不適合の通知特約 引渡しから2年以上(8種制限) | 11本 |
| 廃業等の届出 30日以内 | 10本 |
| 換地処分の公告があった日の翌日 | 8本 |
| 住宅瑕疵担保履行法 基準日から3週間 | 7本 |
| 免許・登録の欠格期間 5年 | 7本 |
| 普通借地権の存続期間 30年 | 7本 |
| 専任媒介のレインズ登録 7日以内 | 6本 |
| 国土法の事後届出 契約日から2週間以内 | 6本 |
| 契約不適合の通知 知った時から1年(民法) | 6本 |
1位のクーリング・オフは突出していて、期間論点の8%がこれ1つです。ただし中身を読むと、8日という数字そのものを外させる肢はむしろ少ない。主戦場は別の場所にあります——起算点は「告げられた日」であって申込日でも契約日でもないこと。書面で告げられていなければ何日経っても解除できること。8日目に発信すれば10日目に届いても有効なこと。「14日間とする」など買主に有利な特約は有効なこと。数字より、起算点と発信主義です。
2位の「引渡しから2年以上」は、民法の「知った時から1年」(10位)と必ず対で覚えます。ひっかけは3型だけ——①1年間とする特約(無効→民法に戻る)、②「契約締結日から」2年(起算点が違うので無効)、③3年間(買主に有利なので有効)。
3位の廃業等の届出は、数字が全部30日で例外なし。問われるのは起算日と届出義務者です(死亡だけ「知った日から」、破産は破産管財人、解散は清算人)。
そして4位——区画整理の「公告があった日の翌日」は、数値ですらありません。換地・清算金・保留地・公共施設の管理はすべて公告の翌日に切り替わる、という起算日だけの論点が、ほぼ隔年で問20に出続けています。
まとめ直す——「箱」で覚えて、例外で差をつける
上のランキングは出題の実測です。ただ、これを10個バラバラに暗記するのはもったいない。一段だけ抽象を上げると、多くが3つの箱に畳めます。
箱1——会社や資格者に変化があったら「30日」
宅建業者・宅建士の身分や体制に何かが変わったときの届出は、原則ぜんぶ30日以内です。商号・役員・事務所・専任宅建士が変わった(変更の届出)。廃業した・合併で消滅した・破産した(廃業等の届出)。宅建士が死亡した(死亡等の届出)。全部30日。ここは論点ごとに「覚える」というより、変化したら30日、を当たり前の基準線として持つ——本店を移しても、役員が代わっても、まず30日です。
そのうえで、基準線から外れる例外だけを差分で覚えます。
| 30日ではない例外 | 期限 |
|---|---|
| 専任宅建士が不足したときの補充 | 2週間以内 |
| 案内所等の届出 | 業務開始の10日前まで |
| 宅建士の変更の登録(氏名・住所) | 遅滞なく |
専任宅建士だけ2週間と短いのは、お店の法定の体制が欠けたままの営業を長く許せないから。案内所は事後の報告ではなく事前の届出という向きの違い。宅建士個人の登録簿の書き換えは日数の縛りすらなく「遅滞なく」です。
箱2——媒介契約は、単独で覚えず「3点セット」
ランキング8位の「専任媒介のレインズ登録7日」は、単独の数字として覚えると、専属専任や一般が出た瞬間に崩れます。縛りが強い契約ほど、業者の義務が1段重くなる——この向きで3列まとめて持ちます。
| 一般 | 専任 | 専属専任 | |
|---|---|---|---|
| レインズ登録 | 義務なし | 7日以内 | 5日以内 |
| 業務処理状況の報告 | 義務なし | 2週間に1回 | 1週間に1回 |
| 有効期間の上限 | 規制なし | 3か月 | 3か月 |
登録の期限は休業日を除いて数えます。専属専任は専任より2日短く・報告は倍。有効期間だけは専任と専属専任で同じ3か月、という非対称も含めて1枚で。
箱3——お金の安全網は「通知から2週間」
営業保証金の不足額の供託も、保証協会への還付充当金の納付も、通知を受けてから2週間以内。例外は、保証協会の社員の地位を失った後に自前で営業保証金を供託する場面だけ1週間です(協会の傘が消えた業者を、短い猶予で元の原則に戻す場面)。
箱4——業法の「身分と書類」は5年
免許の有効期間は5年。宅建士証の有効期間も5年。欠格期間も5年。帳簿の保存も5年。業法で身分や書類の年数を聞かれたら、まず5年が基準線です。外れるのは2つ——従業者名簿は10年、帳簿のうち新築住宅の売買に係るものは10年。「名簿と新築だけ10年」と差分で持ちます。
箱5——借家は、貸主からは「6か月」
建物賃貸借で貸主の側から契約を終わらせる話は、6か月が芯です。期間の定めのない借家の解約申入れは6か月。更新拒絶の通知は期間満了の1年前から6か月前まで。定期借家の終了通知も1年前から6か月前まで——「1年前から6か月前」の帯が2回出てくるのは偶然ではなく、貸主側の予告はどれも「借主に半年の猶予を残す」設計だからです。例外は向きが逆のとき——借主からの解約申入れは3か月(民法)。
対で覚える表——片方だけ覚えると、片方でひっかかる
箱に入らない上位論点は、出題実績のある対にして持ちます。
| 対 | 覚えの軸 |
|---|---|
| 引渡しから2年以上(8種制限の特約) ⇔ 知った時から1年(民法) | 特約が無効なら民法に戻る |
| 欠格期間5年 ⇔ 執行猶予満了・復権は直ちに解消 | 5年を待たない例外の方がよく出る |
| 基準日から3週間(届出) ⇔ 翌日から50日(新規契約禁止) | 住宅瑕疵担保のセット |
| 借地権30年 ⇔ 最初の更新20年(以後10年) | 定めが短くても引き上げ |
| 取得時効10年 ⇔ 20年 | 善意無過失かどうか |
| 消滅時効 知った時から5年 ⇔ 行使できる時から10年 | 主観は短く、客観は長く |
| 不法行為 知った時から3年 ⇔ 行為の時から20年 | 同じ軸(生命・身体なら5年⇔20年) |
| 国土法 事後届出2週間 ⇔ 注視・監視区域の事前届出6週間 | 事後は短く、事前は長く |
| 更新受付は満了の90日前から30日前まで | 開始と締切を1本の帯で |
「遅滞なく・速やかに・直ちに」——三語の違いで決まった肢は、ほぼ無い
期間の勉強で受験生を悩ませるのが、この三語の使い分けです。核心361本のうち「遅滞なく」を含む肢は34本、「直ちに」13本、「速やかに」11本ありました。ところが1本ずつ読むと、どの語が使われているかの違いだけで正誤が決まった肢は、ほとんどありません。
出題者が実際に使っているのは、「事前か、事後か」の入れ替えです。
| 義務 | 正しいタイミング | 過去問で作られたウソ |
|---|---|---|
| 35条書面(重要事項説明) | 契約成立の前 | 「成立したときは遅滞なく」(R3・12月・問35) |
| 供託所等に関する説明 | 契約成立の前 | 「成立後、速やかに」(R3・12月・問32) |
| 手付金等の保全措置 | 受領の前 | 「受領した後に速やかに」(R5問39) |
| 37条書面 | 契約成立の後、遅滞なく | ——(前に持ってくるのが定番のウソ) |
| 市街化区域内の農地転用の届出 | あらかじめ | 事後の届出に見せる |
だから学習の順番はこうなります。三語の厳密な優劣を暗記するより先に、義務ごとに「契約の前にやるのか、後にやるのか」を確定させる。それだけで、この一群の肢は三語がどれであっても揺れなくなります。

起算日——「いつから数えるか」は、それだけで1つの論点
数値が合っていても、起算点をずらされる肢が一群あります。代表的な型です。
| 起算点の型 | 例 |
|---|---|
| 公告があった日の翌日 | 換地処分の効果・開発行為の公共施設の管理・資力確保の50日 |
| 告げられた日から | クーリング・オフの8日(申込日・契約日ではない) |
| 契約を締結した日から | 国土法の事後届出2週間(「翌日から起算して3週間」「登記完了の日から」がウソの型) |
| 催告が到達した日から | 営業保証金の免許取消し(免許から3か月→催告→到達から1か月の二段構え) |
なお令和4年の問5は、初日不算入・応当日・末日が休日なら翌日満了という期間の計算だけで1問を作っています。期間は、値・起算点・数え方の3点セットで聞かれうる、と覚えておいてください。
結局、どうするか
- 箱と対で覚える。 変化したら30日。身分と書類は5年。安全網は通知から2週間。貸主からの借家の予告は6か月。媒介契約は3点セット。例外(専任宅建士の2週間・案内所の10日前・名簿の10年・借主の3か月)は基準線からの差分で。残る上位論点は対で——8日は起算点と発信主義、2年は民法の1年、5年は「待たない例外」とセットです。
- 義務ごとに「契約の前か、後か」を確定させる。 遅滞なく・速やかに・直ちにの三語は、その後でいい——というより、確定してしまえばほぼ出番がありません。
- 数字が出てきても、まず「何で決まる肢か」を見る。 期間が書いてある肢の4本に1本は、場所・主体・要否で決まります。覚えていない数字に出会っても、それが決め手とは限らない——この事実を知っているだけで、本番の動揺は減らせます。
期間・期限は、量こそ多いものの、出どころの偏りがはっきりしている分野です。全部を均等に暗記しにいかず、決まる場所から順に固めてください。