「この許可、知事だっけ、大臣だっけ」。肢を読んでいて、主語の役所がぼやける——期間の数字と並んで、宅建の受験生が振り回されるもう一つの迷いどころです。
そこで、期間・期限の分析と同じ方法で、収録されている過去問の全肢(非公開扱いを除く2,778肢・実質は平成25年以降の15回分が本体)を機械的に走査し、役所・機関の名前が出てくる肢を数えました。先に、この分析でいちばん安心してほしい事実から言います。
宅建に登場する役所・機関は、およそ10者で閉じています。

ここに注目——「誰が」を入れ替えた肢は、毎年1〜2問ぶん
機関の名前を含む肢は344本(全体の12.4%)。その誤り率は60.8%で、全肢の基準値(56.7%——宅建は「正しいものはどれか」が多いため、肢のレベルでは誤りが最初から多数派です)を上回ります。役所の名前が出てくる肢は、それだけで少し疑って読む価値がある、ということです。
このうち、解説と突き合わせて「主体の入れ替えそのものが争点」と見られる肢はおよそ40〜45本。1回の試験あたり3肢前後、問題にして毎年1〜2問が、「誰が」を知っているかだけで決まっています(この数字は機械走査+サンプル読みの見積もりで、期間分析のような1肢ずつの全数選別はしていません)。
濃いのは宅建業法です。内訳は宅建士まわり12・免許9・監督処分5・保証協会5——「登録は知事か大臣か」「処分できるのはどの知事か」の一帯に集中しています。
登場人物の一覧——この10者しか出てこない
| 主体 | 出てくる場面 |
|---|---|
| 都道府県知事 | 免許・登録・許可・監督・区域指定のほぼ全部 |
| 国土交通大臣 | 2以上の都道府県にまたがる免許・講習実施機関の登録 |
| 市町村長 | 建築确认の特定行政庁(市の場合)・盛土の市施行 |
| 農業委員会 | 農地の届出・許可の窓口 |
| 都道府県 | 不動産取得税の課税 |
| 市町村 | 固定資産税の課税・公共施設の管理 |
| 建築主事・指定確認検査機関 | 建築確認 |
| 保証協会 | 弁済業務・認証・研修 |
| 供託所 | 供託と還付の実行 |
| 家庭裁判所 | 後見・保佐・補助の審判 |
見知らぬ役所が突然出てくることはありません。間違い探しの候補が最初から10枚に限られている——これが「誰が」問題の正体です。
基準線——迷ったら知事。大臣は「またぐ」とき
登場回数は圧倒的に都道府県知事です(機関語を含む344本のうち270本)。宅建の行政の原則は知事で、免許も、宅建士の登録も、各種の許可も、監督処分も、区域の指定も、まず知事。期間分析の「変化したら30日」と同じで、これは覚えるというより当たり前の基準線として持ちます。
では大臣はいつ出てくるか。都道府県を「またぐ」ときです。2以上の都道府県に事務所を置くなら大臣免許。全国で通用する講習の実施機関の登録も大臣。管轄が1つの都道府県に収まらない話だけが、大臣に上がります。
そしてここが実測の面白いところで、「国土交通大臣」と書いてある肢の誤り率は70.3%——基準値56.7%をはっきり上回ります。知事がやる仕事を大臣に付け替えるのが、出題者の定番の手だからです。令和4年の問29は、宅建士証の更新の際の法定講習を「国土交通大臣が指定する講習」としました。正しくは都道府県知事が指定する講習。大臣↔知事の直球の入れ替えです。
実物で確かめてください。またいでいるかどうかだけ決めてから、めくってください。
逆向きの例外も少数ですが実在します。登録実務講習の実施機関の登録は国土交通大臣(令和6年問29)。「講習を受けるのは知事のところ、講習機関を束ねるのは大臣」という二層を分けて持ってください。
主体リレー——1つの制度の中で、担当が変わる
「誰が」問題の上級編は、1つの手続の中で主体がリレーする場所です。過去問はこの受け渡しの継ぎ目を突いてきます。
| 制度 | リレーの順 |
|---|---|
| 保証協会の還付 | 認証は保証協会 → 還付するのは供託所 → 不足の通知は免許権者 |
| 区画整理の換地処分 | 通知は施行者 → 公告は知事 |
| 農地転用(市街化区域内) | 許可は不要 → 農業委員会へ「あらかじめ」届出 |
| 不動産取得税と固定資産税 | 取得税は都道府県 → 固定資産税は市町村 |
平成25年の問20は、換地処分の公告を「施行者が行う」としました(正しくは知事)。令和5年の問24は、不動産取得税の課税主体を「市町村及び特別区」としました(正しくは都道府県)。どちらも、リレーの継ぎ目で担当を1人ずらした肢です。
農地転用は二重の争点になっています——市街化区域内の4条・5条は「知事の許可」ではなく「農業委員会への事前の届出」。誰が(知事→農業委員会)と、何が(許可→届出)の2か所が同時に入れ替わる場所で、令和2年10月は「転用した後に届け出た」で誤り、令和3年12月は「あらかじめ届け出た」で正しい——同じ論点が2年で表裏に出ました。
結局、どうするか
- 「迷ったら知事」を基準線に置く。 宅建の行政はまず知事。大臣は「都道府県をまたぐ」ときだけ。この2行で、主体の肢の大半は動じなくなります。
- 大臣・農業委員会・市町村と書いてある肢は、一拍おいて読む。 特に「大臣」は誤り率70.3%——知事の仕事を大臣に付け替えるのが定番のウソです。ただし登録実務講習の機関登録のように大臣が正しい場所もあるので、機械的に×にはしないでください。
- リレーの継ぎ目を対で覚える。 認証は協会・還付は供託所。通知は施行者・公告は知事。取得税は都道府県・固定資産税は市町村。継ぎ目の前後を1組で持てば、1人ずらしのウソが見えます。
登場人物は10者で閉じていて、新顔は出てきません。期間の数字とちがって、覚える範囲が最初から限られている——「誰が」は、宅建でいちばん費用対効果の高い間違い探しです。