支店で宅建業を営むと本店も「事務所」になるのはなぜか? — 宅建業法上の事務所と必要設備
事務所の定義・5点セット・専任宅建士設置義務 ここで押さえておくべきキーワード
「宅建業を営む場所=すべて事務所」ではない
「宅建業を営む場所がすべて事務所かどうか」という問いに、多くの受験生が「はい」と答えてしまいます。しかし宅建業法上の「事務所」は厳格に定義されており、案内所や展示会場は事務所に含まれません。事務所とそれ以外の場所では課せられる義務の種類・内容が異なります。「何が事務所か」「事務所には何が必要か」を正確に押さえることが本章の核心です。
この論点はどう出る?
AランクのQ=多数の超頻出論点で、毎年出題されます。「支店で宅建業を営む場合、本店も事務所とみなされるか(される)」「5点セットの内容(標識・報酬額・帳簿・従業者名簿・専任宅建士)」「専任宅建士の人数基準(業務に従事する者5名に1名以上)」「従業者名簿の保存期間(10年)」が繰り返し問われます。「事務所ごとに5点セットを置かなければならないか(一括でなく各所に必要)」という問は○として出ます。
なぜ押さえる必要がある?
事務所は宅建業者が業務を行う拠点です。消費者が「担当者に資格はあるか」「何か問題があれば帳簿を見せてもらえるか」という権利を行使できるよう、事務所に必要な設備を整えることを法律は義務付けています。また、免許申請の際に「いくつ事務所があるか」が免許権者(国土交通大臣か都道府県知事か)の決定にも影響するため、定義の理解が第3章(免許の申請先)の前提となります。
前提として何を知っておく?
宅建業の定義で「業として行う」とはどういうことかを確認しました。事務所の定義はそれに続く「業を行う場所の特定」に関わります。
「事務所」の定義(施行令1条の2)
宅建業法上の「事務所」とは、次の3種類です(施行規則1条の2)。
①本店(主たる事務所)
宅建業を営んでいない本店でも、事務所に当たります(例:本店でノートパソコン販売をしているだけでも、支店で宅建業を営んでいれば本店も「事務所」)。
②宅建業を営む支店(従たる事務所)
宅建業を行っている支店は従たる事務所です。宅建業を営まない支店は事務所でありません。
③継続的に業務を行うことができる施設を有し、かつ契約締結権限を有する使用人が置かれている場所
テントなど移動容易な施設は「継続的施設」に当たりません。「契約締結権限を有する使用人」(営業所長等)が置かれていることも必須です。
事務所に必要な5点セット(法31条の3・46条・48条・49条・50条)
各事務所には次の5つを設置・掲示しなければなりません。一括して主たる事務所にまとめることは許されず、事務所ごとにそれぞれ置く必要があります。
①標識(宅地建物取引業者票)の掲示(法50条1項)
免許証番号・有効期間・商号・代表者名・専任宅建士数等を記載した標識を、各事務所の見やすい場所に掲示します。
②報酬額の掲示(法46条4項)
国土交通大臣の定める報酬額(上限)を掲示します。これにより依頼者が報酬が適正かどうか確認できます。
③業務に関する帳簿の備付け(法49条)
業務日誌的な帳簿を事務所ごとに備え付けます。帳簿は10年間(最終記載から)保存しなければなりません。
④従業者名簿の備付け(法48条3項)
従業者全員の氏名・住所・従業者証明書番号等を記載した名簿を事務所ごとに備え付けます。従業者名簿も10年間保存する義務があります。
⑤成年者である専任の宅地建物取引士の設置(法31条の3第1項)
業務に従事する者5名に1名以上の割合で専任宅建士を置かなければなりません。
専任宅建士の設置義務
「成年者である専任の宅地建物取引士」を設置する義務は、事務所ごとに課せられます(法31条の3第1項)。
「専任」とは、常時勤務すること(非常勤・他の事業所との兼任は不可)を指します。
人数基準は「業務に従事する者5名に1名以上」であり、事務所に10名が勤務していれば2名以上の専任宅建士が必要です(端数は切り上げ)。業務に従事する者(パートタイムや補助的業務の者も含む)の人数をベースに計算します。
専任宅建士が欠員状態になった場合(法31条の3第3項)は、2週間以内に補充しなければなりません。この「2週間以内に補充」は試験でも問われます。
従業者証明書制度(法48条)
宅建業者は従業者(宅建士に限らず)全員に従業者証明書を携帯させなければなりません(法48条1項)。取引の関係者から請求があれば、従業者証明書を提示しなければなりません(法48条2項)。
従業者証明書の不携帯や提示拒否は違反となり、10万円以下の罰金の対象となる場合があります。
| 5点セットの項目 | 根拠条文 | 保存期間・人数基準 |
|---|---|---|
| ①標識(宅地建物取引業者票) | 法50条1項 | 保存義務なし |
| ②報酬額の掲示 | 法46条4項 | 保存義務なし |
| ③業務に関する帳簿 | 法49条 | 10年間保存 |
| ④従業者名簿 | 法48条3項 | 10年間保存 |
| ⑤専任宅建士の設置 | 法31条の3 | 業務従事者5名に1名以上 |
ここまでの要点は?
- 事務所の3種類:①本店(宅建業不従事でも可)②宅建業を営む支店③継続施設+契約権限使用人あり
- 5点セット:標識・報酬額・帳簿・従業者名簿・専任宅建士——事務所ごとに設置
- 帳簿・従業者名簿の保存期間:いずれも10年間
- 専任宅建士:業務従事者5名に1名以上(欠員時は2週間以内に補充)
- 従業者証明書:全従業者が携帯し、請求があれば提示義務(法48条)