主たる事務所と従たる事務所で供託額が違うのはなぜか? — 営業保証金の制度と供託手続き
免許を受けても供託しないと業務を始められない
宅建業の免許を取得しただけでは業務を開始できません。免許取得後、まず営業保証金を供託所に供託し、供託した旨を免許権者に届け出てからでないと業務を始めることができません(法25条・法25条5項)。この「免許→供託→業務開始」という順序、供託先と供託額、有価証券の評価割合を正確に把握することがこのコマの核心です。

この論点はどう出る?
Aランクの頻出論点で、Q=13の出題実績があります。「主たる事務所は1,000万円・従たる事務所は1か所500万円」という金額、「主たる事務所の最寄りの供託所に供託」という供託先、「有価証券での供託可・評価割合は国債100%・地方債等90%・その他有価証券80%」が繰り返し問われます。「業務開始前に供託が必要か(供託後に届出→届出後に業務開始)」という手順も頻出です。
なぜ押さえる必要がある?
営業保証金制度は、宅建業者と取引した消費者が損害を受けた場合に、供託金から弁済を受けられるようにするためのセーフガードです。「業者が倒産したら手付金が返ってこない」という事態を防ぐために設計されています。保証協会の弁済業務保証金制度との対比が重要で、「供託する者・供託物・金額」の違いを把握することで両制度の理解が深まります。
前提として何を知っておく?
弁済業務保証金の供託では、保証協会に加入した宅建業者が分担金(主たる60万円・従たる30万円)を納付することで営業保証金の供託に代える仕組みを学びます。このコマの営業保証金と対比することで、両制度の違いが明確になります。
供託義務の発生タイミング
宅建業者は、免許を受けた後(業務開始前)に、営業保証金を主たる事務所の最寄りの供託所に供託しなければなりません(法25条1項)。
供託後は、供託した旨を免許権者に届け出る(法25条4項)。この届出が完了してから初めて業務を開始できます(法25条5項)。
「免許→供託→届出→業務開始」の順序です。供託せず業務を開始すると違反となります。
なお、免許権者が供託を確認した後も実際に業務が開始されるまでの期間が長い場合は、営業保証金を供託したまま維持し続ける必要があります。供託は「業務期間中ずっと維持すべき義務」であり、一度供託すれば終わりではありません。後述する「補充供託」の義務も、この供託維持義務の延長として理解できます。
営業保証金の供託額(法25条2項)
供託額は、主たる事務所1,000万円・従たる事務所(その他の事務所)1か所につき500万円です(法25条2項)。
例①:主たる事務所のみ(1か所)→1,000万円
例②:主たる事務所1か所+従たる事務所2か所→1,000万円+500万円×2=2,000万円
例③:主たる事務所1か所+従たる事務所10か所→1,000万円+500万円×10=6,000万円
案内所や展示会場(事務所でない場所)については、営業保証金の供託は不要です。
供託先(法25条1項)
営業保証金の供託先は主たる事務所の最寄りの供託所(法務局等)です。従たる事務所の最寄りの供託所ではなく、主たる事務所(本店)の最寄りに一括して供託します。
供託物の種類と評価割合(法25条3項)
供託は金銭のほか、有価証券でも行うことができます(法25条3項)。
有価証券の種類別評価割合は次のとおりです。
①国債証券:額面金額の100%
②地方債証券・政府保証債券:額面金額の90%
③その他の有価証券(株券等):額面金額の80%
例えば、額面100万円の地方債証券を供託した場合は、90万円として評価されます(100万円の90%)。有価証券で供託する場合には評価割合を考慮して必要額より多めの額面の証券を準備する必要があります。
有価証券での供託が認められているのは、現金1,000万円以上を一時的に手放すことは業者にとって資金繰りの負担が大きいためです。ただし、国債は価格変動リスクが低いため100%評価されるのに対し、その他有価証券(株券等)は価格変動リスクがあるため80%という割引評価になります。この評価割合は「換金した場合に確実にいくらの価値があるか」を保守的に見積もった結果です。
なお、弁済業務保証金制度では、保証協会が一括供託するため「金銭のみ」での供託が義務付けられています。営業保証金は有価証券も可というのが、両制度の供託物における大きな違いです。
事務所の数が増えた場合
宅建業者が事務所を新設した場合、その事務所につき追加分の営業保証金(1か所500万円)を主たる事務所の最寄りの供託所に供託し、免許権者に届け出なければなりません(法26条1項・2項)。
ここで注意したいのが期限の有無です。法26条には「◯日以内」という期限がありません。法26条2項が法25条4項・5項を準用するため、供託して届け出た後でなければ、その新設事務所で事業を開始できないという組み立てになっています(=事前供託)。
これに対して、保証協会の弁済業務保証金分担金には「新設の日から2週間以内」という期限があります(法64条の9第2項)。「2週間以内」は分担金の側のルールなので、営業保証金と取り違えないよう注意してください。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 供託先 | 主たる事務所の最寄りの供託所 |
| 供託額 | 主たる事務所:1,000万円 / 従たる事務所1か所:500万円 |
| 供託物 | 金銭または有価証券(国債100%・地方債90%・その他80%) |
| タイミング | 免許後・業務開始前に供託→届出→業務開始 |
ここまでの要点は?
- 供託先:主たる事務所の最寄りの供託所(法25条1項)
- 供託額:主たる1,000万円・従たる1か所500万円(法25条2項)
- 有価証券の評価割合:国債100%・地方債90%・その他80%
- 業務開始順序:免許→供託→免許権者に届出→業務開始(法25条4項・5項)
- 事務所新設:期限の定めはなく、供託+届出の後でなければその事務所で事業を開始できない(法26条1項・2項)。
「2週間以内」は保証協会の分担金の側(法64条の9第2項)
営業保証金の供託
理解度マインドマップチェック
営業保証金の供託
営業保証金の供託
- 業務開始まで
- 免許後
- できない
- 順序
- 免許権者へ届出
- 届出後
- できる
- 維持義務
- 維持する
- 免許後
- 供託額
- 主たる事務所
- 1,000万円
- 従たる事務所
- 500万円
- 主たる1・従たる2
- 2,000万円
- 案内所
- 入れない
- 主たる事務所
- 供託先
- 場所
- 主たる事務所
- 従たる事務所
- 分けない
- 供託方法
- 供託する
- 場所
- 供託物
- 金銭
- できる
- 国債
- 100%
- 地方債
- 90%
- その他有価証券
- 80%
- 金銭
- 事務所新設
- 追加供託
- ない
- 事業開始
- 始められない
- 届出
- 届ける
- 追加供託