宅建業者に損害を受けたとき、誰が営業保証金から弁済を受けられるのか?
営業保証金の還付・補充供託 ここで押さえておくべきキーワード
全員が還付を受けられるわけではない
宅建業者は、取引で損害を受けた者を守るために営業保証金を供託しています。では、損害を受けた「誰でも」がこの保証金から弁済を受けられるのでしょうか。答えはノーです。還付を受けられる者の範囲は法律で限定されており、「業者同士の取引」「業者の役員や社員」などは除外されます。さらに、還付が起きた後に業者が行うべき「補充供託」の期限も試験の重要ポイントです。
この論点はどう出る?
Aランクの頻出論点で、Q=13の出題実績があります。「業者間取引の相手方が還付を受けられるか」(不可)、「不足額補充供託の期限(通知書受領から2週間以内)」「補充供託後に行う届出の相手(免許権者)」が繰り返し問われます。H25年(問27-4)では「不足額の補充供託を当該通知を受け取った日から2週間以内に行わなければならないか」が問われました。H27年(問42-2)では事務所廃止時の取戻しと6か月公告の絡みが問われました。補充供託の「2週間」という期限は確実に覚えておく必要があります。
なぜ押さえる必要がある?
消費者が安心して宅建業者と取引できるのは、営業保証金制度という安全網があるからです。「業者が倒産しても、供託金から弁済を受けられる」という保護が消費者に与えられています。ただし、業者同士の取引や業者の関係者(役員等)はこの対象外とされており、より弱い立場にある一般消費者を主たる保護対象としている制度設計になっています。
前提として何を知っておく?
→ 営業保証金の供託
営業保証金の供託では、主たる事務所1,000万円・従たる事務所500万円の供託義務と、供託先(主たる事務所の最寄りの供託所)を学びました。本節ではその供託金から還付が行われた後の手続きを扱います。
還付を受けられる者の範囲(法27条)
営業保証金から弁済(還付)を受けられるのは、宅建業者と宅地・建物の取引をした者(法27条1項)です。
ここで重要なのは「宅建業者と取引した者」という文言です。言い換えると、宅建業者でない者との取引のみが対象となります。具体的には次の者が還付対象から除外されます。
①宅建業者同士の取引(業者間取引)の相手方——業者は専門家として対等な立場にあるため、営業保証金による保護は不要とされます。
②業者の役員・社員・従業員——内部者には営業保証金による保護は及びません。
③宅建業に関係しない一般の金銭貸借等の相手方——「宅地・建物の取引」とは無関係な債権は対象外です。
つまり、個人の消費者が「マンションを購入しようとして手付金を払ったが業者が倒産した」というケースが典型的な還付対象です。
還付対象者の範囲は「宅建業に関係する取引で損害を受けた者」に絞られており、宅建業者でない個人・法人(消費者・投資家等)が主たる保護対象です。業者同士が宅建業の取引をする場面においては、お互い専門家として対等に取引するため、営業保証金による保護は不要とされています。この「業者間取引は還付対象外」という例外は弁済業務保証金においても同様です。
還付の限度額
還付を受けられる金額は、営業保証金の供託額を上限とします。複数の被害者が還付を申請した場合、合計が供託額を超えることはできません。仮に供託額3,000万円の業者に複数の被害者が5,000万円の損害を被った場合、合計3,000万円までしか還付されません(超過分は保証金から支払われません)。
不足額の補充供託(法28条)
営業保証金から還付が行われると、供託残高が減少します。この場合、免許権者(国土交通大臣または都道府県知事)が業者に対し、不足額を補充するよう通知を送ります。
業者はこの通知書を受け取った日から2週間以内に不足額を供託し、供託した旨を免許権者に届け出なければなりません(法28条1項)。
「2週間」という期限は厳守です。期限内に補充しない場合、業務停止処分や免許取消の対象となりえます。補充は「通知書受領日から」のカウントであり、還付が行われた日や判明した日からではない点も注意が必要です。
補充供託と届出の流れ
供託残高の不足が生じると、次の流れで手続きが進みます。
免許権者が不足を把握する→業者に対し不足通知を発送→業者が通知書受領→2週間以内に不足額を最寄りの供託所へ供託→免許権者に届出。
「補充供託の届出先は供託所」ではなく「免許権者」であることを混同しないよう注意が必要です。供託所に供託した後、その旨を免許権者に届け出るという二段階の手続きです。
| ポイント | 内容 |
|---|---|
| 還付対象者 | 宅建業者でない者が宅建業者と宅地・建物の取引をした場合(業者間は除外) |
| 還付の上限 | 供託額の範囲内(超過分は支払われない) |
| 不足通知 | 免許権者が業者に発送 |
| 補充供託の期限 | 通知書受領日から2週間以内に供託(法28条1項) |
| 補充後の届出先 | 免許権者(供託所ではない) |
ここまでの要点は?
- 還付対象者:宅建業者でない者が宅建業者と宅地・建物の取引をした者(業者間取引は対象外)
- 還付の上限:供託額の範囲内(超過分の支払いなし)
- 不足額の補充:通知書受領日から2週間以内に供託→免許権者に届出(法28条1項)
- 届出先は「免許権者」——供託所ではない点に注意