廃業後に営業保証金を取り返すには何か月待つのか? — 営業保証金の取戻し(法26条・27条)
営業保証金の取戻し ここで押さえておくべきキーワード
廃業したら供託金をすぐに返してもらえるのか
宅建業者が廃業する場合、供託所に預けていた営業保証金は当然戻ってくるはずです。しかし「すぐに」というわけにはいきません。廃業した後も、その業者と取引して損害を被った者が還付請求をする可能性があります。そのため、宅建業法は取戻しの前に「公告」を行い、6か月以上の期間を置くことを義務づけています(法26条)。ただし、保管替えの場合は公告が不要という例外もあります。この「公告が必要な場合」と「不要な場合」の区別が試験の核心です。
この規制で何を学ぶ?どう出る?
Aランク頻出で、試験では「公告の期間」(6か月以上)と「公告不要のケース」(保管替え)が繰り返し問われます。R5年(問30-4)では「3か月を下らない一定期間内に申し出るべき旨を公告する」(×:6か月以上が必要)が出題されました。また「不正手段により免許を取り消された業者でも、供託所への還付請求は可能か」(○:H25-27-1)という過去問もあります。さらに「取戻しの手続きを済ませれば直ちに取り戻せるか」(×:6か月以上後でなければ不可)といった出題も多いです。
なぜ押さえる必要がある?
営業保証金は業者の廃業・免許取消し後も「損害を受けた取引相手」を守るための制度です。業者が倒産・廃業した後にトラブルが発覚して損害が判明することも珍しくありません。こうした後発の還付請求を可能にするため、公告により6か月間の待機期間を設けています。制度の趣旨を理解すれば、「なぜ保管替えは公告不要か」(供託所が変わるだけで宅建業は継続しており、還付請求者が不利益を受けないから)も自然に理解できます。
前提として何を知っておく?
→ 営業保証金の供託
営業保証金の供託で、供託の仕組みと供託所の意味を先に確認します。本節では取戻し(供託金を業者が回収する場面)を扱いますが、取戻しの前提として「供託された金員を誰が還付請求できるか」という還付の理解も必要です。公告期間中に還付請求がなかった場合に初めて取戻しが可能となる、という流れを把握しておきます。
取戻しができる場合
営業保証金の取戻しができるのは、次のような場合です(法26条・27条)。
①廃業・解散・合併により免許を失った場合
②主たる事務所または従たる事務所の廃止による供託額の減少
③主たる事務所の移転による保管替え(供託所が変わる場合)
④免許取消処分を受けた場合
これらの場合に、業者は供託していた営業保証金の一部または全部を取り戻すことができます。ただし、取戻しには原則として公告が必要です。
取戻しの手続き——公告と6か月以上の待機
原則として、営業保証金を取り戻すためには次の手続きが必要です(法26条1項)。
ステップ1:公告
官報その他所定の方法により、「取引により損害を受けた者は一定期間内に申し出るよう」旨の公告を行います。この公告期間は6か月以上でなければなりません(法26条1項)。「3か月以上」や「1か月以上」では法律の要件を満たしません。
ステップ2:6か月間の待機
公告を行った日から6か月以上を経過した後でなければ、営業保証金を取り戻すことはできません。この期間中に損害を受けた者が還付申請を行うことができます。
ステップ3:取戻し
6か月以上が経過して、還付請求の有無が確認できた後に初めて取戻しができます。なお、免許失効・廃業後に宅建業者と取引した者が生じた場合でも、公告期間内に申し出をしなかった者は還付を受けることができなくなります。
公告不要のケース——保管替えの場合
例外として、主たる事務所の移転による保管替えの場合は公告が不要です(法29条5項)。
保管替えとは、主たる事務所の移転に伴い、供託所を変更するケースです。この場合、宅建業は継続しているため、取引の相手方が新たな供託所に対して還付請求を行えるという保護が継続しています。供託先が変わるだけで「業者として機能し続ける」という状況のため、公告による保護は不要と判断されています。
ただし、保管替えの方法によって手続きが異なる点に注意が必要です。
金銭のみで供託している場合:旧供託所から金銭を新供託所に移管する「保管替え」が可能。公告不要で直ちに取り戻せます。
有価証券を含む場合:有価証券はそのまま移管できないため、先に新供託所に全額を新たに供託し、完了後に旧供託所から取り戻します。この場合も公告は不要ですが、先に新供託所への供託を完了させることが条件です。
公告の有無まとめ
- 公告が必要:廃業・免許失効・事務所廃止に伴う取戻し(6か月以上の公告が必要)
- 公告が不要:保管替えの場合(主たる事務所の移転による供託所の変更)
| 取戻しの場面 | 公告の要否 | 公告期間 |
|---|---|---|
| 廃業・解散・免許失効に伴う取戻し | 必要 | 6か月以上 |
| 事務所廃止に伴う取戻し | 必要 | 6か月以上 |
| 主たる事務所移転による保管替え | 不要 | — |
ここまでの要点は?
- 取戻しの原則:公告(6か月以上)が必要(法26条1項)。「3か月」では不足
- 公告なしに取り戻せる例外:保管替えの場合(法29条5項)
- 公告期間中に還付申請がなければ6か月後に取戻し可能
- 不正手段免許取消し後も、宅建業者と取引した者の還付請求権は存続する(H25-27-1)
- 保管替えで有価証券含む場合:先に新供託所に全額供託してから取り戻す(公告不要)