媒介契約書面には何を書かなければならないのか? — 34条の2書面の記載事項と交付義務
媒介契約書面(34条の2書面)の記載事項 ここで押さえておくべきキーワード
口頭での媒介依頼だけでは不十分——書面交付が義務
「この物件を売るので探してほしい」と口頭で宅建業者に依頼した場合、業者は黙って物件探しを始めてよいのか。宅建業法は、売買・交換の媒介契約を締結した場合、業者が書面(34条の2書面)を作成して記名し、依頼者に交付することを義務づけています(法34条の2第1項)。この書面に何を記載しなければならないかが試験の核心となります。
この規制で何を学ぶ?どう出る?
Aランクの頻出論点で、「記名するのは宅建士か宅建業者か」(宅建業者——宅建士の記名は不要)、「書面の交付先は誰か」(依頼者)、「適用されるのはどの媒介か」(売買・交換の媒介・代理のみ——貸借は対象外)が繰り返し問われます。H26年(問32-2)では「Aは遅滞なく34条の2書面を交付しなければならないが、BがAとの間で一般媒介契約を締結した場合も同様か」(×:設問の読み方次第だが、交付義務自体はある)が出ました。H28年(問41-1)では「宅建業者BからAが売却の依頼を受けた際、媒介契約書面は宅建士が記名しなければならないか」(×:宅建業者が記名すれば足りる)が出ました。
なぜ押さえる必要がある?
34条の2書面は、売主と宅建業者の間の「仲介の条件」を明確にする文書です。報酬の額・有効期間・レインズ登録の有無・業務報告の方法など、後々のトラブルの原因となる事項が書面に記載されることで、依頼者が正確に把握できます。また、宅建士の記名が不要である点(35条書面・37条書面とは異なる点)も、業者の実務的負担を理解する上で重要です。
前提として何を知っておく?
媒介契約の種類で、一般・専任・専属専任の3種類の違い(有効期間・レインズ登録・業務報告義務)を先に確認します。34条の2書面には「どの種類の媒介契約か」が明記されるため、各種類の特徴を把握した上で記載事項を覚えると整理しやすいです。
34条の2書面の交付義務
宅建業者は、売買または交換の媒介の契約を締結したときは、遅滞なく、所定事項を記載した書面を作成して宅建業者自身が記名し、依頼者に交付しなければなりません(法34条の2第1項)。
重要なのは「宅建業者が記名すれば足りる——宅建士の記名は不要」という点です。35条書面(重要事項説明書:宅建士の記名が必要)・37条書面(契約書面:宅建士の記名が必要)とは異なります。
また、書面交付は電磁的方法(IT交付)によることも可能です(法34条の2第11項)。
代理の場合も同様に34条の2書面の交付義務があります。一方、貸借の媒介・代理には34条の2書面の交付義務はありません(法34条の2は売買・交換の媒介・代理のみを対象とする)。
34条の2書面の主な記載事項
法34条の2第1項が定める主な記載事項は以下のとおりです。
①対象物件の表示(所在地・地番・面積等)
②売買すべき価額または評価額
価額についての意見を述べる場合はその根拠も明示しなければなりません(法34条の2第2項)。「この物件は2,000万円程度で売れると思います」と言うだけでなく、その根拠(近隣の売買事例・路線価等)を示す義務があります。
③媒介契約の種類(一般・専任・専属専任の別)
④媒介契約の有効期間と解除に関する事項
専任・専属専任は3か月以内。解除に関する条件や手続きも記載します。
⑤指定流通機構(レインズ)への登録に関する事項
専任・専属専任の場合は登録義務の内容(期限等)を記載します。
⑥課すべき報酬の額
法定の上限範囲内で双方が合意した報酬額を記載します。
⑦業務報告の頻度(専任は2週間に1回以上・専属専任は1週間に1回以上)
⑧建物状況調査の実施に関する事項(建物の売買・交換の媒介の場合のみ)
建物の場合、既存住宅の建物状況調査(インスペクション)を実施する者のあっせんについての意思確認をしなければなりません。
評価額の意見表明と根拠の明示義務
売買の媒介の場合、宅建業者は依頼者から「この物件はいくらで売れますか?」と聞かれた場合に、評価額(価格の意見)を述べることがあります。このとき、業者はその根拠を明示しなければなりません(法34条の2第2項)。
「3,000万円くらいで売れると思います」という意見だけでは不十分で、「近隣の同条件の物件がxxxx年にAA万円で成約しており、本物件も同水準と判断しました」など、根拠を示す義務があります。なぜなら、根拠のない評価額を業者が示し、依頼者がそれを信じて適切な価格設定を誤ることを防ぐためです。
標準媒介契約約款
国土交通大臣が定める「標準媒介契約約款」は、媒介契約書面の標準的な内容を示したものです。使用は任意であり、業者が必ずこの約款に基づいて書面を作成しなければならないわけではありません。法34条の2が定める必要記載事項を満たした書面であれば、形式は業者の判断に委ねられています。
| 記載事項 | 備考 |
|---|---|
| 対象物件の表示 | 所在地・地番・面積等 |
| 売買価額または評価額 | 意見の場合は根拠明示(法34条の2第2項) |
| 媒介契約の種類 | 一般・専任・専属専任の別 |
| 有効期間・解除に関する事項 | 専任・専属専任は3か月以内が上限 |
| レインズへの登録に関する事項 | 専任7日・専属専任5日(休業日除く) |
| 報酬に関する事項 | 法定上限内の合意額を記載 |
| 業務報告の頻度 | 専任:2週間に1回以上 専属専任:1週間に1回以上 |
| 建物状況調査のあっせん意思 | 建物の売買・交換の媒介の場合のみ |
ここまでの要点は?
- 34条の2書面:売買・交換の媒介・代理にのみ適用(貸借は対象外)
- 記名するのは宅建業者(宅建士の記名は不要——35条・37条書面と異なる)
- 評価額の意見を述べる場合は根拠を明示する義務がある(法34条の2第2項)
- 建物の売買・交換の媒介では建物状況調査(インスペクション)のあっせん意思の確認が必要
- 標準媒介契約約款の使用は任意