「売主」なのか「仲介業者」なのか——広告に取引態様を書かなければならない理由
取引態様の明示 ここで押さえておくべきキーワード
広告を見ただけでは業者の立場が分からない
不動産のポータルサイトで物件を見つけたとき、その物件の売主(自ら売買)なのか、売主から依頼された代理業者なのか、それとも両者をつなぐ仲介業者(媒介)なのか——消費者には見分けがつかないことが多いです。業者の立場(取引態様)によって、報酬の仕組みや契約の相手方が変わります。消費者が騙されないよう、宅建業法は取引態様の明示を義務づけました(法34条)。
この規制で何を学ぶ?どう出る?
Aランクの頻出論点で、毎年出題されるといって過言ではありません。試験の核心は「広告のたびに明示が必要」「注文を受けたときにも明示が必要」「広告で一度明示しても注文時の明示を省略できない」という3点です。H26年(問30-3)やR7年(問38-1)では「広告で明示した後、注文を受けたときは改めて明示不要か」が問われ(誤り:改めて明示が必要)、R4年(問37-3)では「一団の宅地を数回に分けて広告する場合、毎回明示が必要か」が問われました。
なぜ押さえる必要がある?
宅建業者の取引態様によって、消費者が支払う報酬(手数料)の仕組みは全く異なります。自ら売買の場合は売主・買主間に直接契約が生じ、媒介の場合は双方から仲介手数料が生じる可能性があります。消費者は「誰に何を払うのか」を事前に知った上で取引を進める必要があります。取引態様の明示義務はその前提となる重要な規制です。
また、明示が必要な場面は広告時と注文受領時の両方です。一度広告に明示したからといって、後日注文を受けた際の明示義務が消えるわけではありません。これは消費者が実際に取引を始めようとする時点で確実に情報を伝えるための設計です。
前提として何を知っておく?
媒介契約の種類で「媒介」「代理」「自ら売買」の意味と違いを先に確認しておくことを推奨します。取引態様とは、これらの立場の「どれか」を示すことであるため、各立場の意味を理解した上で本節を学ぶと効果的です。
広告をするときの明示義務(法34条1項)
宅建業者は、宅地または建物の売買・交換・貸借に関する広告をするときは、その広告の中に取引態様(売主・代理・媒介の別)を明示しなければなりません(法34条1項)。
明示すべき「取引態様」とは次の3種類です。①売主(自らが売主として取引する)、②代理(売主または買主の代理人として取引する)、③媒介(売主と買主の間に入って契約の成立を援助する)。これらのうちのどれかを広告に記載することが義務となります。
一団の宅地建物を分けて複数回に渡って広告する場合でも、広告のたびごとに明示が必要です。「最初の広告で明示したから後続の広告は省略できる」という考え方は認められません(法34条1項の趣旨)。
注文を受けたときの明示義務(法34条2項)
宅建業者は、注文を受けたとき(媒介・代理等の依頼があったときを含む)も、遅滞なく取引態様を明示しなければなりません(法34条2項)。
「注文を受けたとき」とは、具体的な物件についての売買・賃貸等の依頼や問い合わせを受けた時点を指します。広告で既に明示していたとしても、注文受領の際に改めて明示が必要とされている点が最も問われやすいポイントです。
なお、明示の方法については法律上特段の規定はなく、口頭・書面・電子メール等で行うことができます。ただし、取引の透明性を確保する観点から、書面等での明示が望ましいです。
違反した場合
取引態様を明示しなかった場合、または虚偽の表示をした場合、宅建業者は100万円以下の罰金(法81条)の対象となります。また、都道府県知事等からの指示処分や業務停止処分の対象にもなりえます。
明示義務違反は行政処分の対象となるため、「義務があることは分かっていたが省略した」という状況でも処分を免れることはできません。
ひっかけパターンと試験対策
最も頻出のひっかけは「広告で明示したから注文時は不要」という誤りです。法34条1項(広告時)と法34条2項(注文受領時)はそれぞれ独立した義務であり、一方の履行が他方の免除にはなりません。広告を見た人が直接電話で注文してきた場合も、業者は改めて取引態様を明示しなければなりません。
もう一つのひっかけは「一団の宅地を一括広告した場合は1回の明示で足りる」という誤りです。法34条1項は「広告をするときは」と規定しているため、分割して複数回広告する場合はそのたびごとに明示が必要です。最初の広告で明示した内容が後続の広告にも有効だという解釈は認められません。
さらに、取引態様の「内容」についても注意が必要です。「売主・代理・媒介の別」を明示することが要求されており、単に「不動産会社」「業者」と書くだけでは義務を満たしません。具体的に三者のどの立場かを明確にすることが法の趣旨です。
| タイミング | 義務の内容 | 条文 |
|---|---|---|
| 広告をするとき | 取引態様(売主・代理・媒介の別)を明示(たびごとに必要) | 法34条1項 |
| 注文を受けたとき | 遅滞なく取引態様を明示(広告で明示済みでも改めて必要) | 法34条2項 |
ここまでの要点は?
- 法34条1項:広告のたびに取引態様(売主・代理・媒介)を明示(省略不可)
- 法34条2項:注文を受けたとき、遅滞なく取引態様を明示(広告済みでも必要)
- 数回に分けて広告→毎回明示が必要(前回の広告で代替不可)
- 違反すると100万円以下の罰金(法81条)+行政処分の対象