「駅徒歩5分(実際は15分)」——この広告は宅建業法違反になるか? — 誇大広告等の禁止(法32条)
誇大広告等の禁止(法32条) ここで押さえておくべきキーワード
少し盛っただけの広告も違法になるのか
「最寄り駅まで徒歩5分(実際は15分)」「南向きの明るいリビング(実際は東向き)」「近くにスーパーあり(閉店済み)」——不動産広告でよく見る誇張表現は、宅建業法上の誇大広告禁止(法32条)に抵触しうる。禁止されるのは「著しく事実に相違する表示」と「実際よりも著しく優良・有利であると人を誤認させる表示」の2つです。「実害が出ていなければ違反にならない」という誤解も多く、実際には誰も被害を受けていなくても違反は成立する点が重要です。
この規制で何を学ぶ?どう出る?
Aランクの頻出論点で、試験では「誰が広告しても禁止か」「実害がなくても違反か」「一部不表示でも違反か」が繰り返し問われます。H26年(問30-2)では「実際より著しく優良であると誤認させる表示をした場合は違反か」(○)が出ました。H29年(問42-1)では「宅地の将来の環境について著しく事実に相違する表示をしてはならないか」(○)が出ました。H30年(問26-1)では「売買契約成立後に継続して広告を掲載しても宅建業法に違反しないか」(×:契約成立後も継続すれば虚偽広告の問題となりうる)が問われました。
なぜ押さえる必要がある?
不動産広告は消費者が物件の第一印象を形成する場であり、誇張された情報に基づいて購入・賃貸の判断をすることの被害は甚大です。宅建業法32条は、依頼者(売主等)から「こう広告してほしい」と指示された場合でも、誇大広告の禁止規定は業者に直接適用されるとします。依頼者の要求を理由に違反行為を正当化することはできません。
前提として何を知っておく?
→ 取引態様の明示
取引態様の明示で、広告時の基本義務を確認します。本節(法32条・誇大広告禁止)は広告の「内容」規制、取引態様の明示(法34条)は広告の「形式」規制です。また、誇大広告は依頼者の指示であっても適用されるという点で、宅建業者自身の業務遂行責任が問われます。
誇大広告禁止の対象となる表示事項
法32条が禁止する誇大広告の対象となる表示事項(6項目)は以下のとおりです。
①所在・規模・形質:所在地・面積・間取り・土地の状況等
②現在または将来の利用の制限:用途地域・建ぺい率・容積率等の法令制限
③環境・交通その他の利便:最寄り駅からの時間・周辺施設の存否・眺望等
④代金・借賃等の対価の額またはその支払方法:価格・賃料・ローン条件等
⑤役務の内容(これを利用するための費用を含む):管理サービス・設備等
⑥その他の取引条件:引渡し時期・アフターサービス等
これら6項目のいずれかについて「著しく事実に相違する表示」または「実際のものより著しく優良・有利であると人を誤認させるような表示」をすることが禁止されます(法32条)。
「著しく事実に相違」とはどの程度か
「著しく」という文言が重要です。単に事実と異なるだけでは足りず、一般消費者が誤解するほど「著しく」相違している必要があります。ただし、どの程度から「著しく」に該当するかは個別判断であり、「駅まで徒歩5分と表示したが実際は7分」という微差は違反にならないかもしれませんが、「5分と表示して実際は20分」は明確に違反となります。
「将来の環境」についても誇大広告が禁止される点に注意します。「将来この近くにショッピングモールができます(計画なし)」という虚偽の将来予測も、法32条の「将来の……環境」に関する誇大広告として禁止対象となります。
実害がなくても違反——取引成立後の継続広告も問題
誇大広告禁止違反は「実際に損害が生じたかどうか」を問いません。広告を掲載した時点で要件を満たせば違反が成立します。広告を見た人が実際に契約したかどうか、クレームが来たかどうかは関係なく、その広告が「著しく事実に相違する」または「著しく誤認させる」内容であれば、それだけで違反です。
また、売買契約が成立した後も同じ物件の広告を継続して掲載し続けることは、現実に存在しない物件(成約済み物件)を宣伝していることになり、「事実に相違する表示」として違反となる可能性があります(H30-26-1参照)。
依頼者の指示があっても適用される
「売主から『こう広告してほしい』と言われた」という場合でも、誇大広告禁止の適用は免れません。宅建業者は業務として広告を行う立場にあるため、指示内容が誇大広告に該当するかどうかを自ら判断し、適法な範囲内に収める責任があります。「依頼者の指示に従っただけ」という弁解は通用しません。
違反した場合の効果
誇大広告の禁止(法32条)に違反した場合、宅建業者は次の制裁を受ける可能性があります。
①監督処分(指示処分・業務停止処分・免許取消処分)
②刑事罰(1年以下の懲役または100万円以下の罰金——法79条参照)
なお、法32条違反は媒介・代理の相手方や取引の相手方が実際に損害を受けていなくても成立するため、「消費者から苦情が来ていない」という事情は違反の成否に影響しません。
| チェックポイント | 正解 |
|---|---|
| 実害がなくても違反か | ○(実害不問) |
| 依頼者の指示でも適用されるか | ○(依頼者指示は免責にならない) |
| 将来の環境(計画なし)の誇張も対象か | ○(「将来の環境」も対象) |
| 成約済み物件の継続広告は違反か | ○(事実に相違する表示に該当しうる) |
ここまでの要点は?
- 誇大広告禁止(法32条):「著しく事実に相違」または「著しく優良・有利と誤認させる」表示が禁止
- 対象事項:所在・規模・形質・利用制限・環境利便・代金・役務・取引条件の6項目
- 実害不問:被害者が出ていなくても違反が成立
- 依頼者指示は免責にならない
- 違反:監督処分+1年以下の懲役または100万円以下の罰金