「将来必ず値上がりします」と言ってはいけない——業務に関する禁止事項(法47条・47条の2)
業務に関する禁止事項(法47条・47条の2) ここで押さえておくべきキーワード
「値上がり確実」「絶対に損しない」——これは宅建業法違反か
「この物件は将来必ず値上がりします」「お客様には絶対に損をさせません」——不動産の勧誘現場では、こうした強調表現が使われることがあります。宅建業法は、こうした断定的判断の提供を禁止しています。また、重要な事実を隠すこと(不告知)や虚偽を告げること(不実告知)、手付の貸し付けによる誘引なども厳しく禁止されています。これらは消費者が対等な判断をできるようにするための最低限のルールです。
この規制で何を学ぶ?どう出る?
Aランク最頻出テーマのひとつで、Q=136という膨大な過去問数を持ちます。試験では主に2つの軸から問われます。第一は「法47条(宅建業者のみに適用)と法47条の2(従業者も含む)の適用範囲の違い」です。第二は「禁止行為の内容」——断定的判断の提供・繰り返し勧誘・不告知・手付貸し付けが何に該当するかを問う形式です。「依頼者から要求された場合でも禁止規定は適用されるか」(○)、「従業者が行った場合も違反か」(○:47条の2第3項は従業者も対象)といった形でも出題されます。
なぜ押さえる必要がある?
宅建業者は日常業務の中で消費者と密接に関わります。情報格差・交渉力格差がある中で、業者側が有利な立場を悪用しないよう法律が具体的な禁止行為を列挙しています。法47条の禁止行為(不告知・不実告知・手付貸し付け等)は宅建業者自身に対する義務で、違反した場合は業務停止処分・免許取消しの対象となります。法47条の2の禁止行為(断定的判断・迷惑勧誘等)は代理人・使用人等の従業者にも及ぶ点が、法47条との大きな違いです。
前提として何を知っておく?
業務に関する規制の基本で、宅建業者が業務上守るべき一般的な義務を先に確認します。本節は禁止事項の具体的な内容で、別の節で学ぶ標識掲示・従業者証明・帳簿管理とは性質が異なる「取引相手への行為規制」が主となります。
守秘義務(法45条)
宅建業者は、正当な理由がある場合でなければ、業務上取り扱ったことについて知り得た秘密を漏らしてはならない(法45条)。重要なのは、宅建業者でなくなった後も守秘義務が継続する点です。廃業・引退後に業務上知った顧客情報を漏洩することも違反となります。従業者も同様の義務を負います。
法47条の禁止事項——宅建業者のみに適用
法47条は、宅建業者が自らまたは代理人・使用人が行ってはならない行為を列挙します。この条文の義務主体は宅建業者であり、個々の従業者・宅建士ではありません(従業者が行為しても、責任は宅建業者に帰属します)。
①重要な事実の不告知・不実告知の禁止(法47条1号)
取引の相手方等が「取引をするかどうかの判断に影響を及ぼす重要な事項」について、①故意に事実を告げないこと(不告知)、または②虚偽の事実を告げること(不実告知)は禁止されます。「故意」が要件であることに注意——過失による不告知は法47条1号の問題とはなりませんが、別の規定(35条の説明義務等)の問題となりえます。
②手付の貸し付けによる誘引の禁止(法47条2号)
手付について貸し付けを行い、または信用の供与(分割払い・後払いの容認等)をすることにより契約の締結を誘引することは禁止されます。消費者が手付を用意できなくても「貸してあげるから契約して」という勧誘は認められません。
③不当に高額な報酬の要求禁止(法47条3号)
業務に関し、不当に高額の報酬を要求することは禁止されます。「要求」するだけで違反であり、実際に受け取ったかどうかは関係ありません。
法47条の2の禁止事項——従業者も対象
法47条の2は宅建業者だけでなく、宅建業者の代理人・使用人その他の従業者(いわゆる営業担当者等)にも直接適用されます(47条の2第3項)。これが法47条との最大の違いです。
④断定的判断の提供による誘引禁止(法47条の2第1項)
「確実に利益が出る」「値上がりは確実だ」など、将来不確実な事項について確実性があると誤解させる断定的判断を提供して勧誘することは禁止されます。「この辺は将来ショッピングモールが来る予定です(計画なし)」なども断定的判断に該当しえます。
⑤迷惑を覚えさせる方法による勧誘禁止(法47条の2第2項)
深夜・早朝など迷惑な時間帯の電話勧誘、長時間の引き留め、自宅への執拗な訪問など、相手方が迷惑と感じる方法での勧誘は禁止されます。
⑥断った相手への繰り返し勧誘禁止(法47条の2第3項)
一度「契約しない」「もう来ないでほしい」と意思表示した相手方に対し、再度電話や訪問で勧誘することは禁止されます。相手が断った後も繰り返す行為が問題です。
⑦申込み撤回・解除を妨げるための不実告知禁止(法47条の2第3項)
申込みの撤回や契約の解除を妨げるために、虚偽の情報を告げることは禁止されます(例:「この物件はもう他の方に売る予定です。今解除したら大損しますよ」等の虚偽)。
法47条と法47条の2の違いまとめ
法47条(不告知・手付貸し付け・不当高額報酬)は宅建業者に課せられた義務ですが、条文の適用主体は「宅建業者」です。一方、法47条の2(断定的判断・迷惑勧誘・繰り返し等)は「宅建業者又はその代理人・使用人その他の従業者」に直接適用されます。営業担当者が個人として行った断定的判断の提供は、個人にも法47条の2の規制が及ぶ点が重要です。
死の告知に関するガイドライン(国土交通省)
国土交通省は、不動産取引における人の死亡事実の告知に関するガイドラインを公表しています。
概ね3年以内の特殊事情死(事件性のある死・自殺・孤独死等)は取引の相手方への告知が必要とされます(35条書面や37条書面での告知が推奨されます)。一方、通常の経年による死亡(老衰・病死等)は原則として告知不要とされています。ただし、集合住宅の共用部分等での死亡は、3年以内であれば事件性がなくても告知が推奨されます。
このガイドラインは法的拘束力を持つ条文ではなく行政指針ですが、試験では「告知すべきかどうか」の判断基準として問われることがあります。
| 禁止事項 | 条文 | 適用対象 |
|---|---|---|
| 重要事項の不告知・不実告知(故意) | 法47条1号 | 宅建業者 |
| 手付貸し付け等による誘引 | 法47条2号 | 宅建業者 |
| 不当に高額な報酬の要求 | 法47条3号 | 宅建業者 |
| 断定的判断の提供による誘引 | 法47条の2第1項 | 宅建業者 + 従業者 |
| 迷惑な方法による勧誘 | 法47条の2第2項 | 宅建業者 + 従業者 |
| 断った相手への繰り返し勧誘・解除妨害 | 法47条の2第3項 | 宅建業者 + 従業者 |
ここまでの要点は?
- 法47条(不告知・手付貸し付け・不当報酬):宅建業者のみに適用
- 法47条の2(断定的判断・迷惑勧誘・繰り返し等):宅建業者+従業者に適用
- 不告知・不実告知は「故意」が要件(47条1号)
- 手付の貸し付け・分割払い容認による誘引は禁止(47条2号)
- 断定的判断「値上がり確実」等:47条の2違反(従業者も直接適用)
- 守秘義務(45条):廃業後も継続
- 死の告知ガイドライン:3年以内の特殊事情死は原則として告知が必要