5,000万円の物件を売った宅建業者はいくら報酬を受け取れるのか? — 売買の報酬額の計算と上限ルール
報酬は「成功報酬・上限あり」が大原則
宅建業者が媒介・代理により取引を成立させた場合、依頼者から報酬を受け取ることができます。ただし、その報酬額には国土交通省告示(昭和45年建設省告示第1552号)で定められた上限があり、依頼者の承諾があっても超えることは許されません(法46条2項)。「いくらまで請求できるか」を正確に計算できることが、この単元の核心です。特に「速算式」と「代理は媒介の2倍まで」という2点が最優先で覚えるべき内容です。

この論点はどう出る?
Aランクの超頻出論点で、毎年ほぼ1〜2問出題されます。「速算式を使った報酬額の計算問題」「代理の場合の上限(媒介の2倍)」「双方から媒介依頼を受けた場合の合計上限(一方から受けられる額の2倍まで)」「消費税の加算(課税業者は×1.1・免税業者は×1.04)」が問われます。H25年(問37-1)では報酬計算問題が出題されました。H26年(問37-2)では「代理業者と媒介業者が両方介在する場合の合計上限」が問われました。R6年(問28)では免税事業者の×1.04を前提にしないと正誤を誤る肢が出ています。数字の正確な把握が決め手となります。
なぜ押さえる必要がある?
不動産取引の報酬は「成功報酬」として宅建業者の主要な収入源です。上限額を超えた請求は違法であり、返還義務が生じます。依頼者が「高い報酬を払う」と合意しても、法定上限を超えた部分は無効となります(強行規定)。上限の計算を正確に行えることは、実務的にも試験でも必須のスキルです。
前提として何を知っておく?
貸借の報酬額では、賃料を基準とした計算方法を学びます。このコマは売買・交換の報酬に集中するため、「貸借の報酬(賃料の1か月分が上限)」と混同しないよう注意が必要です。
売買の媒介の報酬額(速算式)
売買の媒介において依頼者一方から受け取れる報酬の上限(税抜き)は、代金額に次のレートを掛けた合計額です(告示第二)。
代金額200万円以下の部分:5%
代金額200万円超〜400万円以下の部分:4%
代金額400万円超の部分:3%
3段階に分けて計算するのは手間がかかるため、400万円超の場合の速算式として次の式が使われます。
速算式:代金額 × 3% + 6万円(税抜き)
例)代金5,000万円の場合:5,000万円 × 3% + 6万円 = 156万円(税抜き)
なぜ速算式になるのか。400万円以下の部分で計算すると「200万円×5%+200万円×4%=10万円+8万円=18万円」となり、400万円超部分全体を3%で計算した場合に比べ「200万円×2%+200万円×1%=6万円」多い計算になります。この差額6万円を固定値として加算することで速算化できます。
消費税の上乗せ——課税業者は×1.1・免税業者は×1.04
課税事業者である宅建業者は、報酬に消費税(10%)を上乗せして請求できます(消費税は報酬の上限外)。
課税業者の上限額(税込み):(代金 × 3% + 6万円)× 1.1
例)代金5,000万円の場合:156万円 × 1.1 = 171.6万円(税込み)
免税事業者(消費税の納税義務を免除される業者)は、消費税10%そのものは上乗せできません。ただし、仕入れに係る消費税相当額として税抜き報酬額の4%まで上乗せできます(告示第十一②・解釈運用の考え方)。
免税業者の上限額:(代金 × 3% + 6万円)× 1.04
R6年(問28)では免税事業者の業者が登場し、×1.04で計算しないと適法・違反の判定を誤る肢が出題されました。「課税は×1.1・免税は×1.04」はセットで覚えます。
媒介で双方から報酬を受ける場合
宅建業者が売主・買主の双方から媒介を依頼された場合(双方媒介)、それぞれから一方上限額まで受け取れます。つまり合計で「一方上限の2倍」までが限度です。
ただし、「同一の取引で双方から受け取る合計も一方上限の2倍まで」という制限があり、どちらか一方から2倍を超えて受け取ることはできません。
例)代金5,000万円の双方媒介の場合:
売主から156万円(税抜き)+買主から156万円(税抜き)=合計312万円(税抜き)まで。
代理の場合の報酬上限
代理の場合は、媒介の場合の2倍の報酬を受け取ることができます(告示第三)。
媒介の一方上限:代金 × 3% + 6万円
代理の上限:(代金 × 3% + 6万円)× 2
例)代金5,000万円の代理の場合:156万円 × 2 = 312万円(税抜き)
ただし、代理業者と媒介業者が同一取引に介在する場合は合計上限があります。「当該取引の依頼者双方から受け取れる報酬の合計は、一方から媒介で受け取れる限度額の2倍まで」となります(告示第三ただし書)。
例)代金5,000万円の取引でA業者が売主の代理、B業者が買主の媒介の場合:A+Bの合計は312万円(税抜き)まで。この中でAとBが分け合う。
| 取引形態 | 一方から受け取れる上限(税抜き) |
|---|---|
| 売買・交換の媒介 | 代金 × 3% + 6万円(400万円超の速算式) |
| 売買・交換の代理 | (代金 × 3% + 6万円)× 2 |
| 双方媒介(合計上限) | (代金 × 3% + 6万円)× 2 |
低廉な空家等の特例(告示第七・第八)
2024年7月施行の改正により、売買代金(税抜き)が800万円以下の物件(低廉な空家等)の売買・交換の媒介では、媒介に要する費用を勘案して、通常の計算式を超えて依頼者それぞれから33万円(税込み。税抜き30万円)まで報酬を受け取れる特例があります。売主側だけでなく買主側の依頼者からも受領できます。代理の場合はその2倍が上限です(告示第八)。適用には、媒介契約の締結時にあらかじめ報酬額を説明して合意を得ることが必要です。詳細は特例のコマ(takkengyo-ch14-03)で扱います。
ここまでの要点は?
- 速算式(400万円超):代金 × 3% + 6万円(税抜き)が一方から受け取れる上限
- 代理:媒介の2倍まで受け取れる
- 双方媒介の合計上限:速算式の2倍まで(一方から過大に受け取ることは不可)
- 消費税:課税業者は ×1.1、免税業者は ×1.04(仕入れに係る消費税相当額4%)を加算できる
- 上限超過は強行規定違反——依頼者の同意があっても超過部分は返還義務あり
売買の報酬計算
理解度マインドマップチェック
売買の報酬計算
売買の報酬計算
- 報酬の基本
- 成功報酬
- 報酬なし
- 返還対象
- 依頼者の同意
- 超えられない
- 成功報酬
- 媒介の速算式
- 400万円超の売買
- 代金3%+6万円
- 156万円税抜
- 消費税
- 消費税を加算
- 税抜額×1.04
- 400万円超の売買
- 双方媒介
- 売主と買主の両方から依頼
- 一方上限まで
- 一方上限の2倍
- 売主と買主の両方から依頼
- 代理が入る場合
- 代理単独
- 媒介の2倍
- 代理業者と媒介業者が同時に関与
- 一方上限の2倍まで
- 代理単独
- 低廉な空き家
- 報酬を底上げできる特例
- 800万円以下
- 33万円(税込)
- 必要
- 報酬を底上げできる特例