賃貸の仲介手数料は誰からどれだけもらえるのか? — 貸借の媒介・代理の報酬(告示第四)
貸借の媒介・代理の報酬 ここで押さえておくべきキーワード
「仲介手数料は家賃の1か月分」は本当に正しいのか
賃貸物件を探す際に「仲介手数料は賃料の1か月分」と言われることが多いです。しかし宅建業法では、居住用建物の場合に原則として依頼者双方から各0.5か月分ずつしか受け取れないと規定されています。1か月分を一方から受け取るには「依頼者の承諾」が必要です。この原則と例外、そして権利金がある場合の特別計算が試験の核心となります。
この規制で何を学ぶ?どう出る?
Aランクの頻出論点で、「居住用」と「非居住用」の報酬ルールの違い、「依頼者の承諾がある場合」の上限変化、「権利金がある場合」の計算方法の3点が繰り返し問われます。H26年(問37-1)では「依頼者からの依頼に基づかない広告費用を請求できるか」(×:依頼なく広告した場合は請求不可)が出題されました。H27年(問33-2)では店舗用建物(居住用でない)の権利金ある媒介での報酬計算問題が出ました。
なぜ押さえる必要がある?
売買報酬が代金を基準に3%+6万円(200万円超の部分等)で算定されるのと異なり、貸借報酬は賃料1か月分(税抜き)以内というシンプルな上限が基準です。ただし「居住用か否か」「権利金の有無」によってルールが変わります。これを「全部同じ」と覚えてしまうと、居住用建物の0.5か月原則を見落とします。売買との根本的な違い(代金基準ではなく賃料基準)を意識した上で、例外を覚えることが肝心です。
前提として何を知っておく?
売買・交換の媒介・代理の報酬で、報酬の基本的な考え方を確認します。売買は代金×速算率(3%等)が基準ですが、貸借は賃料1か月分が上限という別の計算体系です。また、媒介と代理の報酬上限の違い(代理は媒介の2倍まで)は貸借でも同様に適用されます。
貸借の報酬の基本上限
宅建業者が宅地または建物の貸借の媒介をした場合、依頼者双方から受け取れる報酬の合計は借賃(賃料)の1か月分(税抜き)以内を上限とします(告示第四第1項)。課税業者であれば消費税10%を加算した1.1か月分が実際の上限額となります。
この上限は媒介・代理いずれの場合も適用され、複数の宅建業者が関与する場合でも、全業者の報酬合計が賃料1か月分を超えることはできません。
居住用建物の特別ルール
居住用建物(住宅・アパート等)の貸借の媒介では、依頼者の承諾がない限り、一方の依頼者から受け取れる報酬は賃料の0.5か月分以内とされます(告示第四第1項ただし書き)。
たとえば賃料10万円の居住用物件を媒介した場合、原則として「貸主から5万円・借主から5万円」の合計10万円が上限です。「借主からまとめて10万円を受け取りたい」という場合には、借主(その依頼者)の承諾が必要となります。承諾を得れば一方から全額(賃料1か月分)の受取が可能になります。
この0.5か月原則は、住宅の賃貸に特有のルールです。貸主と借主双方が「各自0.5か月分」を負担するという考え方を基本としています。
非居住用(事務所・店舗・宅地等)の場合
居住用建物以外——事務所・店舗・工場・宅地等——の貸借の媒介では、依頼者の承諾なしに一方から1か月分全額を受け取ることも可能です(告示第四は居住用建物についてのみ0.5か月の制限を定めています)。
H27年(問33-2)の出題では「店舗用建物」を前提としており、権利金の計算と組み合わせた問題となっています。
権利金がある場合の計算方法
貸借であっても「権利金」(権利設定の対価として授受され、返還されない金銭)が授受される場合には、当該権利金を売買代金とみなして売買報酬の計算式(速算率)で算定した額と賃料1か月分を比較し、高い方を報酬の上限として選択できます(告示第四第2項)。
たとえば権利金1,000万円の場合、売買報酬計算(200万円以下3%・200〜400万円4%・400万円超3%と速算)で算出した額は30万円超(1,000万円×3%+6万円=36万円)となり、賃料1か月分(例:5万円)より大きければ権利金基準の報酬上限が選択できます。
この「比較して高い方を選択できる」という規定は業者に有利な選択肢を与えるものですが、「高い方を必ず請求できる」という意味ではなく、あくまで上限の選択であることに注意します。
代理の場合の報酬
貸借の代理の場合は、媒介報酬の2倍(賃料1か月分×2=2か月分)を上限とすることができますが、依頼者双方から合わせて賃料の2か月分が上限となります(媒介の場合の2倍)。ただし居住用建物で代理の場合も0.5か月ルールの趣旨から、承諾なしに片側から2か月分を全額受け取ることはできません。
| 場面 | 報酬の上限(双方合計) | 備考 |
|---|---|---|
| 居住用建物(原則) | 賃料1か月分以内(各0.5か月ずつ) | 依頼者の承諾で一方から1か月分も可 |
| 非居住用(事務所・店舗等) | 賃料1か月分以内(比率は自由) | 承諾不要で一方から全額も可 |
| 権利金がある場合 | 賃料1か月分 or 権利金基準の売買計算額(高い方) | 業者に有利な方を選択できる |
ここまでの要点は?
- 貸借の報酬上限:借賃1か月分(税抜き)以内(告示第四)
- 居住用建物:原則は双方から各0.5か月分。依頼者の承諾があれば一方から1か月分可
- 非居住用:一方から1か月分全額も可(承諾不要)
- 権利金あり:売買計算額 or 賃料1か月分の高い方を選択可(告示第四第2項)
- 複数業者関与:全業者合計でも賃料1か月分以内が上限