空き家売却の手数料は上限30万円まで? — 低廉な空家・長期の空家の報酬特例と必要費
価格が低い物件ほど手数料が少なくなる問題
通常の報酬計算に従うと、安価な物件では業者の受け取る報酬が非常に少額になります。たとえば売買代金100万円の物件であれば報酬上限はわずか5万円(税抜き)です。過疎地の空き家や低廉な空き地の売却を引き受けると採算が取れず、業者が取引を敬遠する問題が生じます。そこで国土交通省の告示改正(2024年7月1日施行)により、売買の「低廉な空家等」と貸借の「長期の空家等」について特例が設けられました。

この規制で何を学ぶ?どう出る?
Bランクの論点で、2024年7月1日施行の告示改正を受けて出題が始まっています(R7年・問26)。ポイントは3つ。(1)低廉な空家等(売買代金800万円以下)の売買・交換では売主側・買主側どちらの依頼者からも33万円(税込み)まで受け取れる特例、(2)長期の空家等の貸借では双方合計で借賃1か月分の2.2倍(税込み)まで受け取れる特例、(3)必要費(依頼者が特別に依頼した費用のみ別途請求可)の取り扱いです。通常の広告費は報酬の中に含まれ、別途請求できない点も押さえておきましょう。
なぜ押さえる必要がある?
空き家対策は社会的課題であり、法制度も整備が進んでいます。低廉な物件の売却を業者が引き受けやすくするための特例は、空き家流通を促進する政策的意図を持ちます。試験でも近年は告示改正内容が出題されるため、特例の適用条件(対象金額・適用場面・上限額)と、必要費の取り扱い(依頼者の特別依頼が必要)を正確に理解しておく必要があります。
前提として何を知っておく?
売買・交換の媒介・代理の報酬と、貸借の媒介・代理の報酬の通常の計算方法を先に理解した上で、このコマの特例を「通常との差分」として学ぶと整理しやすいです。
低廉な空家等の売買・交換の報酬特例(告示第七・第八)
宅建業者が売買代金(税抜き)が800万円以下の宅地・建物(低廉な空家等)の売買・交換の媒介を行う場合、媒介に要する費用を勘案して、通常の計算式(速算式)による上限を超えて報酬を受け取ることができます。ただし、依頼者一方から受け取れる額は30万円の1.1倍=33万円(税込み)が上限です(告示第七)。
この特例のポイントは、2024年7月1日施行の改正で売主側・買主側を問わず「依頼者」であれば適用できるようになったことです。改正前(2018年〜)は「代金400万円以下・売主側のみ・現地調査等の費用の上乗せ(合計19.8万円税込みまで)」という仕組みでしたが、現行は「800万円以下・双方対象・一律33万円(税込み)まで」に拡充されています。古い知識のまま「買主側からは通常計算の上限まで」と考えると誤答するので注意してください(H30年・問31の類題では買主側からの受領も適法とされます)。
代理の場合は、告示第七により算定した額の2倍以内が上限です(告示第八。相手方からも報酬を受ける場合は、その合計が同じ枠に収まります)。
適用には、媒介契約(代理契約)の締結に際して、あらかじめ報酬額について依頼者に説明し、合意しておくことが必要です(解釈・運用の考え方)。説明・合意がなければ特例は使えず、通常の計算式によります(R7年・問26はこの要件を正面から問いました)。
なお、代金800万円ちょうどの通常計算は(800万円×3%+6万円)×1.1=33万円(税込み)となり、特例上限と一致します。つまり800万円以下の価格帯では特例上限が通常計算を下回ることはなく、特例は常に「底上げ」として働きます。効果が大きいのは100万〜200万円といった低価格帯(通常計算だと税込み5.5万〜11万円程度)の物件です。
長期の空家等の貸借の報酬特例(告示第九・第十)
貸借にも2024年7月1日施行の改正で特例が新設されました。対象は長期の空家等——現に長期間にわたって居住・事業その他の用途に供されておらず、又は将来にわたり利用される見込みがない宅地・建物です。売買の「低廉な空家等」が価格(800万円以下)で区切るのに対し、貸借の「長期の空家等」は利用状況で判定します(価格・借賃の要件はありません)。名前が似ていますが別の概念なので混同しないでください。
長期の空家等の貸借の媒介では、依頼者双方から受け取る報酬の合計を、通常の上限(借賃1か月分の1.1倍)を超えて借賃1か月分の2.2倍(税込み)までとすることができます(告示第九)。ただし借主側から受け取れる額は通常の上限のままです(1.1倍以内。居住用建物で依頼時の承諾がないときは0.55倍以内)。つまり、通常を超える上乗せ分はすべて貸主側から受け取ることになります。代理の場合も同様に、合計で借賃1か月分の2.2倍が上限です(告示第十)。
この特例も、媒介契約の締結に際してあらかじめ報酬額を説明し、依頼者の合意を得ておくことが必要です(解釈・運用の考え方)。R7年(問26)で正面から出題されたほか、近年の報酬の過去問には「貸借の代理又は媒介をする宅地又は建物は長期の空家等には該当しない」という注記が付くようになりました。この注記は、特例を使えば適法になる余地を消して、通常の計算だけで解かせるためのものです。
必要費等の請求(報酬と別に受け取れるもの)
宅建業者が受け取れる報酬は法定の上限内に限られます。ただし、依頼者の特別な依頼によって生じた以下の費用は、報酬とは別に受け取ることができます。
- 依頼者から特別に依頼のあった遠隔地への出張旅費・移動費
- 依頼者から特別に依頼のあった通常でない特別の広告費(一般的な広告費は報酬の中に含まれる)
逆に言えば、依頼者の依頼がなく業者が自発的に行った広告費は、たとえ実費であっても報酬とは別に請求することができません。通常業務の範囲の広告費は報酬上限額の中でまかなうべきものとされています。
なお、低廉な空家等の特例(33万円税込み)は「媒介に要する費用を勘案した」包括的な上限です。現地調査等の費用を報酬とは別に上乗せする仕組みではなく、費用込みで33万円以内に収める必要があります(依頼者の特別な依頼による遠隔地への出張旅費等の実費は、上記のとおり報酬とは別に請求できます)。
| 場面 | 内容 |
|---|---|
| 低廉な空家等の売買・交換(税抜800万円以下) | 媒介:売主側・買主側それぞれの依頼者から33万円(税込)まで。代理:その2倍以内。あらかじめ説明・合意が必要 |
| 長期の空家等の貸借(長期間利用なし・利用見込みなし) | 双方合計で借賃1か月分の2.2倍(税込)まで。借主側は通常の上限のまま=上乗せは貸主側から。あらかじめ説明・合意が必要 |
| 依頼者の特別依頼による費用 | 遠隔地旅費・特別広告費は実費を別途請求可 |
| 依頼なしの広告費 | 報酬上限内でまかなう(別途請求不可) |
ここまでの要点は?
- 低廉な空家等(売買代金800万円以下)の売買・交換:売主側・買主側どちらの依頼者からも33万円(税込み)まで受領可(媒介。代理はその2倍以内)。あらかじめ説明・合意が必要
- 長期の空家等(長期間利用されていない・利用見込みのない物件)の貸借:双方合計で借賃1か月分の2.2倍(税込み)まで。借主側は通常の上限のまま=上乗せは貸主側から
- 依頼者の特別な依頼によって生じた費用(遠隔地旅費・特別広告費)は別途請求可
- 依頼者の依頼なしの広告費は報酬に含めてまかなう(別途請求不可)
空家の報酬特例と必要費
理解度マインドマップチェック
空家の報酬特例と必要費
空家の報酬特例と必要費
- 売買の特例
- 対象物件
- 800万円以下
- 使えない
- 上限額
- 33万円(税込)
- 買主からも33万円まで
- 手続
- 事前の説明と合意
- 通常の計算式
- 対象物件
- 長期の空家等の貸借
- 対象の判定
- 利用状況で判定
- 上限額
- 借賃の2.2倍
- 通常の上限まで
- 対象の判定
- 必要費の別請求
- 依頼者の特別依頼
- 別請求可
- 別請求可
- 依頼なしの支出
- 別請求不可
- 依頼者の特別依頼
過去問で確認しよう
このコマの publishable 過去問は0件(Q=0)。空家の報酬特例は2024年7月改正後の新しい出題テーマで、R7年(問26)で正面から出題されました。報酬の総合問題(分野「報酬」の過去問)の中で特例の適用可否が問われるため、前2コマの過去問とあわせて演習してください。