「防火地域に建てる建物」は何か特別な基準がある?
防火・準防火地域内の建築制限 ここで押さえておくべきキーワード
「隣の火事で自分の建物が燃える」——密集市街地の火災リスクと建築制限
木造建築物が密集する市街地では、一棟の火事が瞬く間に周囲に延焼する危険があります。市街地の不燃化を促進するため、建築基準法は都市計画法に基づいて指定された防火地域および準防火地域内に建てる建物の構造を厳しく制限しています(法61条・62条)。防火地域は都市の中心市街地(商業地域の中心部・幹線道路周辺等)に指定され、準防火地域は都市部の住宅地に広く指定されます。
この規制で何を学ぶ?どう出る?
Bランクで14問の出題実績があります。試験では「防火地域内で3階以上または延べ面積100㎡超は耐火建築物等」「建物が防火地域と防火地域外にまたがる場合は全体に防火地域の規制が適用」「建物が防火地域と準防火地域にまたがる場合は全体に防火地域の規制が適用(厳しい方に統一)」が頻出です。増改築の場合の確認申請要否(防火・準防火地域では10㎡以下でも確認申請が必要)も出題されます。
なぜ押さえる必要がある?
宅建業務では、取引対象地が防火地域・準防火地域にあるかどうかを確認し、その地域での建築制限(耐火建築物等の義務)を説明する必要があります。防火地域・準防火地域内の建築制限は、建物の構造材料・階数・規模に連動した複雑な判定基準を持ちます。また、建物が複数の区域にまたがる場合の規制適用ルール(厳しい方が全体に適用)も試験頻出であり、実務的にも重要です。
前提として何を知っておく?
→ 建築基準法の構造
建築基準法の構造で単体規定・集団規定の区別と、耐火建築物・準耐火建築物の概念を先に確認します。防火地域内の建築制限は集団規定の一種であり、耐火建築物等(耐火建築物または延焼防止建築物)の概念の理解が前提となります。
防火地域内の建築制限(法61条)
防火地域内では、建物の規模(階数・延べ面積)に応じて要求される防火性能が異なります。
耐火建築物等としなければならない建築物:防火地域内では、次の建築物は耐火建築物または延焼防止建築物(以下「耐火建築物等」という)としなければならない(法61条):
- 3階以上(地階を除く)の建築物
- 延べ面積が100㎡を超える建築物
つまり、「3階以上OR延べ面積100㎡超」のどちらかに該当すれば耐火建築物等が必要です。2階建てで延べ面積100㎡以下であれば、準耐火建築物以上の基準で足りる場合があります。
高さ2m以下の門または塀は規制対象外:高さ2m以下の門・塀については耐火建築物等とする必要がありません(法61条1項ただし書)。これは実用的な例外として試験にも登場します。
準防火地域内の建築制限(法61条)
準防火地域は防火地域より広い範囲(住宅地等)に指定され、防火地域ほど厳しくないが一定の防火性能が求められます。
準防火地域内では、建築物の規模に応じた区分があります:
- 地階を除く階数が4以上または延べ面積1,500㎡超:耐火建築物または延焼防止建築物(耐火建築物等)とする必要あり
- 地階を除く階数が3で延べ面積1,500㎡以下、または階数2以下で延べ面積500㎡超1,500㎡以下:耐火建築物等または準耐火建築物・準延焼防止建築物とする必要あり
- 木造建築物等で階数2以下かつ延べ面積500㎡以下:外壁・軒裏の延焼のおそれがある部分を防火構造とする必要あり
防火地域・準防火地域にまたがる建築物(法65条)
建築物が防火地域・準防火地域の区域境界にまたがる場合、次のルールが適用されます:
建物が防火地域と防火地域外にまたがる場合:建物全体に防火地域の規制が適用されます(法65条1項)。「防火地域外の部分だけ規制が緩和される」という扱いはありません。一部でも防火地域に係ればその規制が建物全体に適用されるのが原則です。
建物が防火地域と準防火地域にまたがる場合:建物全体に防火地域の規制(より厳しい方)が適用されます(法65条2項)。両地域にまたがる場合は全体に厳しい方の規制が一律に適用されるため、「防火地域側だけ耐火にする」という設計は認められません。
この「厳しい方に統一」というルールは試験の頻出ポイントです。建物全体を同一の基準で建てる必要がある点を押さえます。ただし、防火壁で区画された部分については例外的に別の基準が適用される場合があります(法65条1項ただし書)。防火壁によって完全に分断された部分の区域それぞれの規制を適用することが認められます。
増改築・大規模修繕の確認申請
防火地域または準防火地域内において建築物を建てる場合は、延べ面積等に関係なく建築確認が必要です。さらに通常の用途地域と異なり、防火地域・準防火地域では増築・改築・移転が10㎡以下であっても建築確認申請が必要です(法6条1項4号・2項)。通常の地域では10㎡以下の増改築は確認申請不要ですが、防火・準防火地域では例外なく確認が求められます。これは延焼防止のための厳格な管理を行う趣旨によるものです。
| 建築物の規模・種別 | 防火地域内 | 準防火地域内 |
|---|---|---|
| 3階以上または延べ面積100㎡超 | 耐火建築物等が必要 | (規模で異なる) |
| 2階以下・100㎡以下 | 準耐火建築物等でも可 | 木造は防火構造にする |
| 高さ2m以下の門・塀 | 耐火建築物等とする必要なし | 耐火建築物等とする必要なし |
| 防火地域と準防火地域にまたがる | 全体に防火地域の規制(厳しい方)が適用 | |
ここまでの要点は?
- 防火地域内:3階以上または延べ面積100㎡超は耐火建築物等が必要
- 高さ2m以下の門・塀は対象外
- 区域にまたがる場合:厳しい方(防火地域)の規制が全体に適用
- 防火・準防火地域内では増改築が10㎡以下でも確認申請が必要