建物の外壁はどこまで下げる必要がある? — 外壁後退距離と壁面線の制限
壁の位置に関する規制 ここで押さえておくべきキーワード
「外壁を敷地境界から後退させろ」という制限
建物を建てる際、外壁(またはそれに代わる柱)と隣地の境界線・道路との距離が問題になることがあります。特に閑静な低層住宅地では、各建物が互いに適切な距離を保つことで、日照・通風・プライバシーの確保が図られます。そのために設けられた制限が「外壁の後退距離の制限」です(建築基準法54条)。
ただしこの制限は、すべての地域に適用されるわけではありません。第一種低層住居専用地域・第二種低層住居専用地域・田園住居地域に限って都市計画でこの制限を定めることができ、それ以外の地域では定めることができません。また、都市計画で定めることは任意であり、必ず定めなければならないわけでもありません。この「どの地域で・必要か任意か」という点が試験の正誤を分けるポイントです。
この節で何を学ぶ?どう出る?
Cランクで出題頻度は低いです。試験での論点は主に2点です。①外壁後退距離の制限が適用される地域(第一種・第二種低層住居専用地域・田園住居地域のみ)と、②壁面線の制限(特定行政庁が指定できる道路沿いの建築制限)です。
「第一種住居地域においても外壁後退距離の限度を都市計画で定められる」という選択肢は×です(H28問19-4)。低層住居専用地域でないと外壁後退距離の都市計画指定はできない、という原則を押さえておきましょう。
なぜ押さえる必要がある?
建築基準法の用途地域別規制(容積率・建蔽率・高さ制限・日影規制など)は多岐にわたり、それぞれ対象地域が異なります。外壁後退距離の制限もその一つで、「どの地域に何がかかるか」というマトリクスの中の一要素として覚えることが効率的です。
低層住居専用地域・田園住居地域は建物の高さや形態に対する規制が最も厳しい地域群です。隣棟間隔を確保し日照・採光を守るための規制が集中しているため、外壁後退の制限もこの地域に限定されていることは体系的に理解できます。
前提として何を知っておく?
→ 用途規制
建築基準法の用途地域ごとの制限一覧を先に確認してください。低層住居専用地域・田園住居地域が「最も住居環境の保護を重視する地域」であることを把握していると、外壁後退距離の制限がなぜこの地域限定なのかが理解しやすいです。
外壁の後退距離の制限(法54条)
第一種低層住居専用地域・第二種低層住居専用地域・田園住居地域において都市計画で定める場合、建築物の外壁またはこれに代わる柱の面から敷地境界線までの距離(外壁後退距離)の最低限度を、1.5m または 1m として定めることができます(法54条1項)。
この制限の性格は次の2点で頻出です。第一に、任意の制限であること。都市計画区域内の低層住居専用地域であっても、外壁後退距離の制限を必ず設けなければならないわけではありません。指定するかどうかは各地域の都市計画に委ねられています。第二に、限定的な地域への適用であること。第一種住居地域・第二種住居地域・準住居地域など他の用途地域では、この規定は適用されません。
壁面線の指定(法46条・47条)
外壁後退距離とは別に、壁面線という制度もあります。特定行政庁は、街区内における建築物の位置を整えるために、建築審査会の同意を得た上で道路の区域内に壁面線を指定することができます(法46条)。
壁面線とは、道路側の一定ライン(壁面位置の限界線)のことです。指定された壁面線がある場合、建築物の壁・柱・高さ2m超の門や塀は壁面線を越えて道路側に突出させてはなりません(法47条)。道路に面した建物の外壁が壁面線よりも道路側に飛び出すことが禁止され、街並みの統一感や歩行空間の確保が図られます。
外壁後退距離と壁面線の違い
外壁後退距離(法54条)と壁面線(法46条・47条)は名前も目的も似ていますが、対象と性格が異なります。外壁後退距離は「低層住居専用地域等で隣地・境界線からの距離を都市計画で確保する」仕組みで、主に住環境の保護が目的です。壁面線は「道路沿いのラインを特定行政庁が指定して街並みを整える」仕組みで、景観・歩行空間の整備が主目的となります。いずれも「壁の位置を規制する」という点では共通していますが、規制の根拠・対象地域・指定権者が異なります。
ここまでの要点は?
- 外壁後退距離の制限(法54条):第一種・第二種低層住居専用地域・田園住居地域のみ。都市計画で 1.5m または 1m を定めることができる(任意)
- 第一種住居地域など他の地域では外壁後退距離の都市計画指定はできない
- 壁面線(法46条・47条):特定行政庁が指定。建築物の壁は壁面線を越えてはならない
- 2つの制度は目的・対象地域・指定権者が異なる
過去問で確認しよう
(上記はすでに本論中に掲載済み。第一種住居地域への外壁後退距離制限の適用を問う問題で、答えは×。外壁後退距離の都市計画指定が可能なのは低層住居専用地域・田園住居地域のみ)