「買った建物に欠陥があった」— 契約不適合責任で何を請求できる?
契約不適合責任 ここで押さえておくべきキーワード
「引き渡された建物の屋根が雨漏りしていた」— 売主に何が請求できる?
引き渡された目的物が契約の内容に適合しない場合(欠陥がある・数量が不足している・権利に問題がある等)、買主は一定の期間内に通知することで「追完請求・代金減額請求・損害賠償請求・解除」という四つの手段を選んで行使できます。
これが売主の契約不適合責任です(2020年改正で「瑕疵担保責任」から名称変更)。
契約不適合責任で何を学ぶ?どう出る?
15問(うち公開問題7問)が出題され、宅建試験の頻出領域です。
「通知期間(知った時から1年)」「売主が悪意・重過失の場合の特則」「追完方法の優先順位」「解除の要件」が出題の中心です。
旧「瑕疵担保責任」からの変更点(取消しでなく取消し的な請求・追完請求が明文化)も問われます。
なぜ押さえる必要がある?
不動産取引では、引渡し後に発覚する欠陥(シロアリ被害・雨漏り・境界問題等)が多いです。
売主として何の責任を負うのか、買主として何を請求できるのかを正確に把握することは、業者として当事者に正確な説明をする上で不可欠です。
宅建業法上の「契約不適合責任についての特約制限」とも連動します。
前提として何を知っておく?
従来は「隠れた瑕疵(きず)」についてのみ問題とされていましたが、改正後は「隠れた」という要件が撤廃され、「契約内容への適合性」を基準に判断します。
不適合の範囲は「種類・品質・数量」の不適合と、「権利(他人の権利が入っている等)」の不適合があります。
通知義務 — 知った時から1年以内に通知
買主が不適合を発見したら、知った時から1年以内に売主に不適合の旨を通知しなければなりません(民法566条)。
この通知を怠ると、追完請求・代金減額請求・損害賠償請求・解除のすべてが行使できなくなります。
「訴訟を起こす必要がある」のではなく「通知」で足りる——簡単な一歩が大切です。
ただし例外があります。
売主が悪意(知っていた)または重大な過失によって知らなかった場合は、1年の通知期間制限が適用されません(民法566条但書)。
売主が欠陥を隠していた場合にまで期間制限で守るのは不公平だからです。
買主の四つの権利
①追完請求(民法562条):目的物の修補・代替物の引渡し・不足分の引渡しを請求できます。
どの方法で追完するかは買主が選択できますが、売主は買主に「不相当な負担をかけない方法」であれば、買主が選んだ方法と異なる方法で追完することができます。
履行の追完が不能な場合や、売主が明確に拒絶した場合は追完請求できません。
②代金減額請求(民法563条):不適合の程度に応じて代金の減額を請求できます。
ただし追完が可能な場合は、まず相当期間を定めて追完を催告し、期間内に追完がない場合に初めて代金減額請求ができます(催告が必要)。
ただし追完不能・売主の明確な拒絶等の場合は催告不要で減額請求できます。
図の見方: この図では、「契約不適合責任の四つの権利と行使の流れ」を、判断や手続の順番に沿って整理しています。
列ごとの違いを追い、要件と効果を混同しないように確認してください。
図解 / 権利関係
買主の四つの権利は、要件を分けて選ぶ
民法562条〜564条
契約不適合責任で買主が行使できる追完請求、代金減額請求、損害賠償請求、解除について内容と固有の要件を比較する。
この図で見ること
- 追完請求:修補・代替物・不足分の引渡し・買主が方法を選択
- 代金減額:不適合の程度に応じて減額・原則は追完の催告後
- 損害賠償:不適合による損害を金銭で補償・売主の帰責事由が必要
- 解除:契約を解消して原状回復・追完不能等・軽微なら不可
民法562条〜564条
③損害賠償請求(民法564条・415条):不適合によって生じた損害を賠償請求できます。
損害賠償請求には売主の帰責事由が必要です(旧瑕疵担保責任では不要でしたが、改正後は帰責事由が必要)。
ただし不適合自体は客観的事実であり、売主が知らなかったことは直ちに免責にはなりません。
帰責事由は損害賠償「のみ」の要件で、追完請求・代金減額請求・解除には帰責事由は不要です——ここが旧法と現行法の違いの整理ポイントです。
④解除(民法564条・541条・542条):追完が不能、または相当期間の催告後も追完されない場合に解除できます。
不適合が「軽微」な場合は解除不可(民法541条但書準用)。
売主が追完の義務を負う範囲にも注意が必要です。
買主が選んだ追完の方法(例:代替品の引渡し)に対して、売主は買主に「不相当な負担」を与えない範囲であれば、別の方法(例:修補)で対応することができます(民法562条1項但書)。
この「売主による代替追完」は売主側の選択権と言えますが、あくまでも「買主に不相当な負担をかけない方法に限る」という制約があります。
権利の不適合の場合
売主が移転した権利の一部または全部を他人が持っていた場合(他人の権利の売買・担保権が抹消されていなかった場合等)も、契約不適合責任の対象となります(民法565条)。
この場合も、追完請求・代金減額請求・損害賠償請求・解除が認められます。
図の見方: この図では、「権利の不適合」を、判断に必要な項目ごとに整理しています。
各項目を上から確認し、どの要件で結論が分かれるかを押さえてください。
図解 / 権利関係
他人の権利が混ざり、約束どおりの権利を移せない場合も対象
移転した権利が契約で約束した内容に適合しているか?
売主が移転した権利の全部または一部を第三者が有するなど、契約どおりの権利を買主が取得できない場合も契約不適合責任の対象となる。
この図で見ること
- 権利が不適合:四つの権利を行使できる
- 契約どおり移転:契約不適合責任なし
追完・減額・損害賠償・解除の要件はそれぞれ確認
ここまでの要点は?
- 通知義務:不適合を知った時から1年以内に通知(民法566条)。通知しないと全権利を失う。
- 例外:売主が悪意または重過失で知らなかった場合は1年制限なし。
- 四つの権利:①追完請求(修補・代替引渡し)②代金減額請求③損害賠償(帰責事由要)④解除。
- 代金減額は追完催告が原則必要。追完不能なら催告不要。
- 損害賠償には売主の帰責事由が必要(改正で明確化)。
- 「軽微な不適合」では解除不可。