「共同申請が原則?仮登記とは?」— 権利に関する登記の手続きと仮登記
権利に関する登記・所有権保存・仮登記 ここで押さえておくべきキーワード
「不動産を買ったのになぜ共同で申請しなければならないのか?」
権利に関する登記(所有権移転・抵当権設定等)の申請は、「登記権利者(登記で利益を受ける者)と登記義務者(登記で不利益を受ける者)が共同で申請しなければならない」が原則です(共同申請主義)。
自分だけで勝手に登記できないようにすることで、真実の権利関係が登記記録に反映されるよう担保しています。
権利に関する登記・所有権保存・仮登記で何を学ぶ?どう出る?
74問と権利関係全体で最多クラスの出題を誇る最重要ユニットです。
「共同申請主義と例外(単独申請が認められる場面)」「所有権保存登記ができる者の範囲」「仮登記の二つの種類(1号・2号)と効力」「仮登記の本登記後の中間者の抹消」が試験の核心です。
なぜ押さえる必要がある?
不動産売買の締結から登記申請まで、実務では必ず共同申請の手続きを踏みます。
売主と買主が同行して申請するか、司法書士に依頼するかのいずれかです。
また「仮登記をしておけば後の登記に優先できるのか」という問いは実務上も重要で、仮登記の効力と限界を理解することが取引の安全に直結します。
前提として何を知っておく?
前節で学んだとおり、権利に関する登記は「任意申請」——申請しなければならない法的義務はないが、第三者に対抗するためには必要です。
表示に関する登記(義務)とこの点が異なります。
共同申請主義と例外
共同申請主義(不登法60条):権利に関する登記の申請は、登記権利者(利益を受ける者)と登記義務者(不利益を受ける者)が共同で申請しなければならない。
例えば売買による所有権移転登記は、買主(登記権利者)と売主(登記義務者)が共同で申請する。
共同申請の例外(不登法63条等)——単独申請が認められる場合:
①確定判決による登記:相手方の登記手続きを命ずる判決が確定した場合は、勝訴した側が単独で申請できる。
②相続登記・法人合併による登記:被相続人からの相続人(または合併法人)が単独で申請できる。
③登記名義人の表示変更登記:住所・氏名変更は登記名義人が単独申請できる。
④所有権保存登記(初めての登記):一定の者が単独で申請できる(下記参照)。
⑤仮登記の申請:登記義務者の承諾があれば単独申請できる(不登法107条)。
所有権保存登記
所有権保存登記とは、ある不動産について初めて所有権に関する登記をすることです(不登法74条)。
新築建物で表題登記をした後、まだ甲区に何も記録がない状態で初めて所有権を登記するのが所有権保存登記です。
所有権保存登記を申請できる者は限定されています(不登法74条1項):①表題部所有者またはその相続人・一般承継人、②確定判決によってその所有権を確認された者、③収用によって所有権を取得した者、④区分建物では表題部所有者からの所有権を証明できる者等。
一般的な買主が直接所有権保存登記を申請することはできず、まず表題部所有者(建築会社等)が保存登記をした後、買主への移転登記を行う流れになります。
主登記と付記登記
主登記:独立した順位番号を持つ登記。
所有権移転、抵当権設定等の基本的な登記が主登記です。
付記登記:主登記に附随する形で記録される登記(付記番号を持つ)。
根抵当権の追加設定・仮登記の本登記等が付記登記として記録されます。
付記登記は主登記の順位を維持する効力があります。
仮登記の種類と効力
仮登記とは、将来における本登記のために、あらかじめ順位を保全するための登記です(不登法105条)。
仮登記自体は対抗力がない(仮登記だけでは第三者に権利を主張できない)が、本登記をしたとき、その順位は仮登記をした時にさかのぼります(順位保全効)。
仮登記には二種類あります。
1号仮登記(不登法105条1号):実体上の権利変動が生じているが、登記申請に必要な書類等が揃っていない場合の仮登記。
例:売買契約は成立したが、決済前で登記識別情報が入手できない段階。
2号仮登記(不登法105条2号):実体上の権利変動がまだ生じておらず、条件付きまたは始期付きの請求権を保全するための仮登記(請求権の保全)。
例:売買予約から生じる「将来の所有権移転請求権」を仮登記する場合。
図の見方: この図では、「仮登記の種類」を、比較する項目ごとに整理しています。
本登記との違いと、順位を保全する効果に注目してください。
図解 / 権利関係
1号は書類不足、2号は将来の請求権を保全する
不登法105条
1号仮登記と2号仮登記について、実体上の権利変動の有無、利用場面、順位保全の効果を比較する。
この図で見ること
- 1号仮登記:権利変動は発生済み/本登記の要件不足・売買済みだが必要書類が未完
- 2号仮登記:権利変動は未発生/請求権を保全・売買予約・条件付き請求権
- 共通:仮登記だけでは対抗力なし・本登記時に順位を保全
不登法105条
仮登記の本登記後の効力 — 中間者の登記は抹消される
仮登記の後に本登記をすると、仮登記の時点の順位が確保されます(順位保全効)。
仮登記後・本登記前の間に第三者が登記をしていた場合(中間の登記)、本登記をした際にその中間の登記は抹消されます(実質的に仮登記の順位が優先する)。
つまり、仮登記後に第三者が所有権移転登記を備えても、本登記をすれば先の仮登記が後から確定した本登記に更新され、後から登場した第三者の権利は失われます。
仮登記はこのように「先の順位を押さえておく」強力な効果を持ちます。
図の見方: この図では、「仮登記の効力」を、出来事が起きる順番に沿って整理しています。
本登記との違いと、順位を保全する効果に注目してください。
図解 / 権利関係
仮登記を本登記にすると、順位は仮登記時までさかのぼる
本登記の順位は仮登記の日付、後から入った中間者に優先する
仮登記後に第三者Cが登記しても、仮登記名義人Bが本登記をすると順位は仮登記時点にさかのぼり、中間登記は抹消される。
この図で見ること
- 登記の流れ:Bが仮登記→Cが中間登記→Bが本登記→順位確定
- 順位の効果:Bが順位を確保→Cは暫定的に登記→Bの順位が確定→Cの登記を抹消
本登記の順位は仮登記の日付、後から入った中間者に優先する
図の見方: この図では、「仮登記の種類と効力のまとめ」を、比較する項目ごとに整理しています。
本登記との違いと、順位を保全する効果に注目してください。
図解 / 権利関係
仮登記は対抗力ではなく、将来の本登記順位を確保する
順位保全
仮登記と本登記後の効力について、対抗力、順位、中間登記、抹消申請を比較する。
この図で見ること
- 第三者への対抗:仮登記だけでは不可・本登記により対抗力取得
- 順位:仮登記の日に順位を予約・仮登記時点の順位が確定
- 中間登記:存在し得る・必要な利害関係人の承諾等で抹消
- 抹消申請:名義人は単独申請可・利害関係人は承諾情報が必要
順位保全
仮登記の抹消は、仮登記名義人が単独で申請することができます(登記識別情報を提供)。
また登記上の利害関係人(仮登記義務者含む)も、仮登記名義人の承諾を証する情報を提供して単独申請できます(不登法110条)。
ここまでの要点は?
- 共同申請主義(60条):登記権利者と登記義務者が共同で申請。
- 例外的に単独申請:確定判決・相続・住所変更・所有権保存等。
- 所有権保存登記:初めての所有権登記。表題部所有者等の限られた者が申請できる。
- 仮登記(105条):順位保全のための仮の登記。本登記をすると仮登記時点の順位を確保。
- 仮登記の本登記で中間者の登記は抹消される。
- 仮登記の抹消:仮登記名義人の単独申請または利害関係人+名義人の承諾。