「競売で土地と建物の所有者が別々になった」— 法定地上権と根抵当権
法定地上権・根抵当権 ここで押さえておくべきキーワード
「抵当権が実行されて、土地は他人に競落された——建物はどうなる?」
日本法では土地と建物は別々の不動産として扱われます。
そのため抵当権の実行(競売)で土地と建物の所有者が分かれることがあります。
建物の所有者が土地に権利がなければ、土地の所有者から明渡しを求められてしまう——これを防ぐのが「法定地上権」です。
法定地上権・根抵当権で何を学ぶ?どう出る?
10問が出題され、「法定地上権が成立する要件」「成立しない場合(更地に抵当権を設定した場合等)」「根抵当権の元本確定事由」が問われます。
特に法定地上権の成立・不成立の場合分けが頻出です。
なぜ押さえる必要がある?
土地と建物が同一人物所有の場合、建物に融資するとき土地にも一緒に抵当権を設定するのが通常ですが、それが一方のみにかかっている場合などに法定地上権の問題が生じます。
根抵当権は事業融資で多用される担保形式なので、基本概念を押さえておきます。
法定地上権の成立要件
法定地上権とは、抵当権の実行により土地と建物の所有者が別々になった場合に、建物のために法律上当然に成立する地上権です(民法388条)。
成立要件は次の四つです。
①抵当権設定当時に土地と建物が存在していた(更地に設定した後に建てた建物には不成立)。
②抵当権設定当時に土地と建物が同一人物の所有だった。
③土地または建物に抵当権が設定された(どちらか一方でよい)。
④競売によって土地と建物の所有者が別々になった。
この四要件を満たすと、建物所有者は競落後の土地所有者に対して地上権を主張できます(明渡しを拒否できます)。
図の見方: この図では、「法定地上権の成立・不成立のフロー」を、判断や手続の順番に沿って整理しています。
登場人物・対象物と矢印の向きを順に追ってください。
図解 / 権利関係
設定時の状態から競売後まで、四要件を順に確認する
四要件をすべて満たすと、建物のため法定地上権が成立
法定地上権は抵当権設定時に建物が存在し土地建物が同一所有者で、土地または建物に抵当権が設定され、競売で所有者が分離した場合に成立する。
この図で見ること
- 建物が存在:抵当権設定当時
- 同一所有者:土地と建物が同じ人
- 抵当権設定:土地または建物
- 競売で分離:土地・建物が別所有者
四要件をすべて満たすと、建物のため法定地上権が成立
法定地上権が成立しない場合:要件①②を満たさない場合——例えば更地(建物なし)に抵当権を設定した後、建物を建てて競落された場合は法定地上権が成立しません(設定当時に建物が存在しなかった)。
一括競売(民法389条1項):更地に抵当権を設定した後、建物が建てられた場合、法定地上権は成立しませんが、土地の競売とともに建物も一括して競売することができます。
ただし抵当権者が優先弁済を受けられるのは土地の代金のみ(建物代金からは受け取れません)。
根抵当権
根抵当権とは、一定の範囲に属する不特定の債権を担保するために設定される抵当権です(民法398条の2)。
通常の抵当権が「特定の1つの債権」を担保するのに対して、根抵当権は「継続的取引から生じる債権(枠内の不特定の債権)」をまとめて担保します。
銀行が事業融資で設定するケースが多いです。
「極度額」を設定し、その枠内であれば貸付け・返済を繰り返しても毎回抵当権を設定し直す手間が不要となります。
元本確定:根抵当権の被担保債権の元本が確定すると、通常の抵当権と同様に確定した元本のみを担保することになります。
元本確定の事由:①確定期日の到来、②設定から3年経過後の確定請求(設定者・権者ともに可)、③競売・差押えなど。
根抵当権と通常の抵当権の大きな違いは「随伴性がない」という点です。
通常の抵当権は元本債権を第三者に譲渡すると抵当権も移転します(随伴性)が、根抵当権は元本確定前は債権を個別に譲渡しても根抵当権はついてこない——根抵当権は「枠」そのものに価値があり、個々の債権には追随しません。
元本確定後は通常の抵当権と同様に随伴性が生じます。
また法定地上権に戻って比較すると、建物のみに抵当権を設定した場合は建物に法定地上権は成立しません(土地所有者が変わるわけではないため)。
法定地上権が問題になるのは「競売によって土地と建物の所有者が異なる状況になる場合に限られる」という点を再確認しておきます。
問題を解くとき「設定時に何があったか」「競売で誰が取得したか」を時系列で整理する習慣が重要です。
法定地上権が問題になる典型的な場面のバリエーションも整理しておきましょう。
①土地に抵当権を設定(建物はあった)→競売で土地が第三者に→建物所有者のために法定地上権成立。
②建物に抵当権を設定(土地も同じ所有者が持っていた)→競売で建物が第三者に→法定地上権成立(土地の使用権が必要だから)。
③更地に抵当権を設定→その後建物を建てた→競売→法定地上権不成立(設定当時に建物なし)。
④設定当時は土地と建物が別所有者→競売→法定地上権不成立(設定当時から同一所有者ではない)。
この四パターンを具体的な事例で確認できると、本番の問題でほとんど対応できるようになります。
ここまでの要点は?
- 法定地上権の四要件:①設定当時に建物存在②土地・建物同一所有者③抵当権設定④競売で所有者分離。
- 要件①②を欠けば法定地上権不成立(更地に設定した後に建てた建物等)。
- 一括競売(389条):更地後に建物が建った場合、建物も一緒に競売できるが、優先弁済は土地代金のみ。
- 根抵当権:継続的取引で生じる不特定債権を極度額の範囲で担保する。
- 根抵当権は元本確定後に通常の抵当権と同様になる。