宅建業法には書面が2つあります。契約の前に渡す重要事項説明書(35条書面)と、契約の後に渡す契約書面(37条書面)。収録過去問の全肢(非公開扱いを除く2,778本)で「第35条・第37条」を含む肢は148本。宅建業法で点を積むなら避けて通れない量ですが、この148本を「狙われている証拠」としては使えません——肢の誤り率は論点ではなく設問の聞き方でほぼ決まるからです(設問形式を揃えて測ると、この148本は平均とほぼ同じでした)。数の話ではなく、間違え方が決まっているのがこの類型の本質です。
ただし、35条の記載事項と37条の記載事項を2枚のリストとして丸暗記しようとすると物量に負けます。148本のウソを1本の軸で切ります。

入口は時間軸、決着は3層
- 35条書面は、契約する前に渡します。目的は「この物件、買っていいか」を判断させること。
- 37条書面は、契約した後に渡します。目的は「何に合意したか」を証拠に残すこと。
ただし——「35条は契約前だから合意の内容は載らない」と考えるのは間違いです。 解除に関する事項、損害賠償の予定・違約金、手付金等の保全措置は、35条にも載ります(法35条1項8〜10号)。買う前に「もし解除したらどうなるか」を知らせないと、判断材料として不足するからです。
だから正しくは、2枚ではなく3層で持ちます。
| 層 | 例 |
|---|---|
| 35条だけ | 用途その他の利用の制限(ペット飼育禁止など)・私道負担・インフラ・耐震診断・建物状況調査 |
| 両方 | 解除に関する事項・損害賠償の予定や違約金・手付金等の保全措置 |
| 37条だけ | 代金や借賃の額と支払時期・引渡しの時期・移転登記の申請の時期(売買・交換のみ) |
時間軸は、この3層を思い出すための入口です。最後は「その項目は37条の記載事項か」を確かめる——ここを飛ばすと、次の節のようにつまずきます。
定番のウソ——「あっちに書いたから、こっちは省略」
繰り返し出るのが、2枚の書面を連結してしまうウソです。「重要事項説明書に記載して説明したから、37条書面には記載不要」——この形は、その項目が37条の記載事項であるかぎり誤りです。2枚は目的が別なので、説明したことと、合意の証拠を残すことは別々に要ります。
平成28年の問39が、この2つを1問の中で並べています。
- 肢2「契約の解除について定めがある場合は、重要事項説明書に記載し説明したときも、37条書面に記載しなければならない」→ 正しい(解除は両方の層)
- 肢1「ペットの飼育禁止(専有部分の利用制限)は、重要事項説明書に記載し説明したときも、37条書面に記載しなければならない」→ 誤り(利用制限は35条だけの層)
同じ「説明したのに、また書くのか」という形で、答えが逆になります。 つまり「省略できると来たらウソ」という覚え方だけでは、肢1で落ちます。先に37条の記載事項かどうかを決める、という順番がどうしても要ります。
実物で確かめてください。3層のどれに入る項目かを決めてから、めくってください。
令和7年の問33は、逆向きから同じことを聞いています——建物の賃貸借で引渡しの時期は、重要事項説明では説明不要だが37条書面には記載が必要。「時期」は合意の証拠だから37条、という3層の一番下です。
人の連結も同じ型で出ます。令和元年の問34は「35条書面に記名した宅建士をして37条書面にも記名させなければならない」——誤りです。どちらも宅建士の記名が要りますが、同じ人である必要はない。平成25年の問44は「記名は専任の宅建士でなければならない」——これも誤り。専任かどうかは事務所の設置要件の話で、書面の記名は宅建士なら誰でもよい。書面と書面、人と人を勝手に連結させるのがこの類型の癖です。
逆に、連結してよい場所もある——だから機械的に切れない
ここで注意が1つ。「連結=ウソ」と機械的に覚えると、逆張りに撃たれます。令和元年の問36と令和6年の問44は、建築工事完了前の建物について「物件を特定するために必要な表示を、重要事項説明で使った図書の交付により行った」——これは正しい肢です。図面そのものは同じものを使い回してよい。ダメなのは「記載義務の免除」であって、「同じ紙を使うこと」ではありません。ルールの理由(合意の証拠を欠けさせない)まで持っていれば、この線引きは自然に引けます。
結局、どうするか
- 時間軸は入口、決着は3層で。 契約前=判断材料(35条)、契約後=合意の証拠(37条)——ここまでが仮説。そのうえで「35条だけ/両方/37条だけ」のどれかを確定させます。解除・損害賠償の予定・保全措置は両方、というのがいちばん間違えやすい層です。
- 「〜に記載したから省略できる」は、37条の記載事項なら必ずウソ。 ただし37条の事項でなければ、そもそも書かなくてよい(平成28年問39の肢1)。省略の可否ではなく、37条に載る項目かどうかを先に決める。
- 人の連結も切る。 35条と37条の宅建士は同じ人である必要はないが、両方に記名が要る。専任である必要もない。
- ただし「同じ図書の使い回し」は適法。 免除はダメ、流用はよい。理屈ごと覚えて、逆張りの正しい肢を落とさないように。
この類型は、リスト暗記でも時間軸1本でもなく、3層に振り分けるのが正解です。振り分けさえできれば、連結のウソは全部同じ形に見えてきます。