宅建業法には書面が2つあります。契約の前に渡す重要事項説明書(35条書面)と、契約の後に渡す契約書面(37条書面)。収録過去問の全肢(非公開扱いを除く2,778本)で「第35条・第37条」を含む肢を走査すると、148本・誤り率65.5%——区域の66.3%と並ぶウソの密集地帯で、母数は区域より44本も多い。宅建業法で点を積むなら、避けて通れない類型です。
ただし、35条の記載事項と37条の記載事項を2枚のリストとして丸暗記しようとすると物量に負けます。148本のウソを1本の軸で切ります。

軸は1本——35条は「買う前の判断材料」、37条は「合意した証拠」
- 35条書面は、契約する前に渡します。目的は「この物件、買っていいか」を判断させること。だから載るのは物件と取引条件のリスク情報です。まだ契約していないので、当事者が何に合意したかは載りようがありません。
- 37条書面は、契約した後に渡します。目的は「何に合意したか」を証拠に残すこと。だから載るのは合意した中身——代金、引渡しの時期、移転登記の時期。
この軸で、暗記していない項目でも判定できます。「手付金の保全措置の概要」はどちらか——保全があるかどうかは買う前に知りたいリスク情報だから35条。令和6年の問34はまさに「保全措置の内容は35条書面に記載が必要で、37条書面には不要」を正しい肢として出しました。逆に「引渡しの時期」は合意の中身だから37条の必須項目です。
定番のウソ——「あっちに書いたから、こっちは省略」
148本でいちばん繰り返されるのが、2枚の書面を連結してしまうウソです。令和2年10月の問33——引渡しの時期を「重要事項説明書に記載して説明したから、37条書面には記載不要」。実物で確かめてください。軸で考えてから、めくってください。
2枚の書面は目的が別なので、片方に書いても片方は省略できません。説明したのは「予定」、37条に書くのは「合意」——同じ日付でも意味が違う、と考えれば納得できるはずです。
人の連結も同じ型で出ます。令和元年の問34は「35条書面に記名した宅建士をして37条書面にも記名させなければならない」——誤りです。どちらも宅建士の記名が要りますが、同じ人である必要はない。平成25年の問44は「記名は専任の宅建士でなければならない」——これも誤り。専任かどうかは事務所の設置要件の話で、書面の記名は宅建士なら誰でもよい。書面と書面、人と人を勝手に連結させるのがこの類型の癖です。
逆に、連結してよい場所もある——だから機械的に切れない
ここで注意が1つ。「連結=ウソ」と機械的に覚えると、逆張りに撃たれます。令和元年の問36と令和6年の問44は、建築工事完了前の建物について「物件を特定するために必要な表示を、重要事項説明で使った図書の交付により行った」——これは正しい肢です。図面そのものは同じものを使い回してよい。ダメなのは「記載義務の免除」であって、「同じ紙を使うこと」ではありません。ルールの理由(合意の証拠を欠けさせない)まで持っていれば、この線引きは自然に引けます。
結局、どうするか
- 項目を暗記する前に、時間軸を1本引く。 契約前=判断材料(35条)、契約後=合意の証拠(37条)。初見の項目も「買う前に知りたいか、合意の中身か」で仕分けられます。
- 「〜に記載したから省略できる」と来たら、原則ウソ。 2枚の書面は目的が別。記名する宅建士も同一人物である必要はないが、両方に必要。連結の誘いに乗らないでください。
- ただし「同じ図書の使い回し」は適法。 免除はダメ、流用はよい。理屈ごと覚えて、逆張りの正しい肢を落とさないように。
148本・誤り率65.5%は、この記事のシリーズで税に次ぐ密度です。リスト暗記ではなく時間軸1本——それがこの類型のコスパの正体です。