「誰が」の分析では、知事・大臣・農業委員会という役所の入れ替えを数えました。あの類型は機械で数えられます——「国土交通大臣」という語は、どの問題でも国土交通大臣だからです。
ところが同じ「誰が」でも、売主と買主、本人と代理人の入れ替えは数えられません。宅建の問題文では当事者が「A」「B」という記号で書かれ、Aが売主なのか買主なのかは問題ごとに変わる——語を走査しても何も出てこないのです。実際、収録過去問の全肢(非公開扱いを除く2,778本)で「買主ではなく売主」型の入れ替えを解説から機械検出できたのは、わずか1本でした。

検出できない=出ていない、ではありません。「誰が負担するか・誰に請求できるか」を問う肢は54本(誤り率50.0%)、1肢ずつ読んだ体感では1回の試験に2〜4本。機械で数えられない類型こそ、読み方の原則を1本持っておく価値があります。
原則は1本——義務は、リスクを作った人に付く
新築住宅の売主業者には、瑕疵担保のための保証金供託か保険加入が義務づけられています。保険料を払うのは誰か。売主です。欠陥のリスクを作ったのは建てて売った側だから、その備えのコストも売る側が持つ——買主に付け替えた瞬間、ウソになります。
令和2年10月の問45は、これを「媒介業者や買主が保険に入っていれば、売主は供託も保険も要らない」という形にしました。実物で確かめてください。「誰の義務か」だけ決めてから、めくってください。
同じ住宅瑕疵担保では、令和5年の問45も「特約で免責されていれば義務を負わない」型を出しています(誤り——特約があっても義務は消えません)。義務を横に動かす、特約で消す、どちらも「リスクを作った人に付く」の原則で切れます。
三者になると難度が上がる——本人・相手方・代理人
売主・買主の二者ならまだ追えます。ウソが巧妙になるのは三者——代理が絡むときです。
双方代理(1人がAとC両方の代理人になる)は、原則として無権代理とみなされます。ここで出題者は2方向からウソを作りました。
- 平成30年の問2——「Aの許諾の有無にかかわらず無効となる」→誤り。双方が許諾すれば有効です。禁止の理由は「どちらかの利益が犠牲になるから」なので、両方が納得しているなら守る相手がいません。
- 令和2年12月の問2——「Aに損害が発生しなければ無権代理とはみなされない」→誤り。損害の有無を問わず無権代理です。結果オーライは通りません。
同じ双方代理を、片方は「厳しすぎる方向」に、片方は「緩すぎる方向」に倒した対です。禁止の理由(誰を守るためのルールか)ごと覚えていれば、どちらに倒されても戻せます。
「双方」を一方に寄せる型
もう一つの定番が、双方に向く義務を一方に寄せる型です。売主業者と媒介業者が絡む取引では、37条書面にそれぞれの宅建士が記名します。令和4年の問32は「共同作成した書面に媒介業者側の記名があれば、売主側は記名不要」としました——誤りです。責任は共同作成でもそれぞれに付きます。言い回しの分析で扱った「両方か片方か」と、当事者の入れ替えが交差する場所です。
結局、どうするか
- 問題文の冒頭で、Aは誰か(売主か買主か、本人か代理人か)をメモする。 記号のまま読み進めるのが一番の失点源です。肢ごとに「A=売主」と置き直してから義務の向きを見ます。
- 義務の主語に違和感があったら、「リスクを作ったのは誰か」で照合する。 保険・供託・書面交付——コストと責任は、リスクを作った側・プロの側に付くのが原則です。
- 禁止のルールは理由ごと覚える。 双方代理の例のように、出題者は同じルールを「厳しすぎ」と「緩すぎ」の両方向に倒してきます。理由を持っていれば、どちらの倒し方も見えます。
この類型は、数字の暗記が一切効きません。そのかわり原則は1本で済みます——義務は、リスクを作った人に付く。機械に数えられないウソは、理屈で切ってください。