「誰が」の分析では、知事・大臣・農業委員会という役所の入れ替えを数えました。あの類型は機械で数えられます——「国土交通大臣」という語は、どの問題でも国土交通大臣だからです。
ところが同じ「誰が」でも、売主と買主、本人と代理人の入れ替えは数えられません。宅建の問題文では当事者が「A」「B」という記号で書かれ、Aが売主なのか買主なのかは問題ごとに変わる——語を走査しても何も出てこないのです。実際、収録過去問の全肢(非公開扱いを除く2,778本)で「買主ではなく売主」型の入れ替えを解説から機械検出できたのは、わずか1本でした。

検出できない=出ていない、ではありません。ただし規模を数字で示すことはできません。「誰が負担するか・誰に請求できるか」を素直な語で拾うと50〜60本程度が引っかかりますが、そのうち当事者の入れ替えが本当の争点だったものはごく一部で、抽出条件を変えるたびに数が動きます。この記事は規模の主張をしません——数えられない類型だからこそ、読み方の原則を持っておく価値がある、という記事です。
出発点は1本——義務は、リスクを作った側に付く
新築住宅の売主業者には、瑕疵担保のための保証金供託か保険加入が義務づけられています。保険料を払うのは誰か。売主です。欠陥のリスクを作ったのは建てて売った側だから、その備えのコストも売る側が持つ——買主に付け替えた瞬間、ウソになります。
令和2年10月の問45は、これを「媒介業者や買主が保険に入っていれば、売主は供託も保険も要らない」という形にしました。実物で確かめてください。「誰の義務か」だけ決めてから、めくってください。
ただし、この原則には必ず続きが要る
同じ問の肢4が、その続きです。「買主が宅建業者である場合であっても、売主は供託または保険の義務を負う」——これは誤り。買主がプロなら、資力確保の義務は課されません。
つまり「リスクを作った側に付く」だけでは、この肢を落とします。義務は誰かを守るために課されているので、守る相手がプロなら外れる——ここまでを1組で持ってください。宅建業法の8種制限が「買主が業者なら適用なし」なのも、まったく同じ理屈です。
原則と例外を並べるとこうなります。
| 内容 | |
|---|---|
| 原則 | 義務はリスクを作った側(売主・プロ)に付く |
| 例外 | 守られる相手がプロ(宅建業者)なら、その保護は外れる |
同じ住宅瑕疵担保では、令和5年の問45も「特約で免責されていれば義務を負わない」型を出しています(誤り——特約があっても義務は消えません)。守る相手が素人であるかぎり、当事者の合意では動かせない、ということです。
三者になると難度が上がる——本人・相手方・代理人
売主・買主の二者ならまだ追えます。ウソが巧妙になるのは三者——代理が絡むときです。
双方代理(1人がAとC両方の代理人になる)は、原則として無権代理とみなされます。ここで出題者は2方向からウソを作りました。
- 平成30年の問2——「Aの許諾の有無にかかわらず無効となる」→誤り。双方が許諾すれば有効です。禁止の理由は「どちらかの利益が犠牲になるから」なので、両方が納得しているなら守る相手がいません。
- 令和2年12月の問2——「Aに損害が発生しなければ無権代理とはみなされない」→誤り。損害の有無を問わず無権代理です。結果オーライは通りません。
同じ双方代理を、片方は「厳しすぎる方向」に、片方は「緩すぎる方向」に倒した対です。禁止の理由(誰を守るためのルールか)ごと覚えていれば、どちらに倒されても戻せます。
「双方」を一方に寄せる型
もう一つの定番が、双方に向く義務を一方に寄せる型です。売主業者と媒介業者が絡む取引では、37条書面にそれぞれの宅建士が記名します。令和4年の問32は「共同作成した書面に媒介業者側の記名があれば、売主側は記名不要」としました——誤りです。責任は共同作成でもそれぞれに付きます。言い回しの分析で扱った「両方か片方か」と、当事者の入れ替えが交差する場所です。
結局、どうするか
- 問題文の冒頭で、Aは誰か(売主か買主か、本人か代理人か)をメモする。 記号のまま読み進めるのが一番の失点源です。肢ごとに「A=売主」と置き直してから義務の向きを見ます。
- 義務の主語に違和感があったら、「リスクを作ったのは誰か」で照合し、続けて「守る相手は誰か」を見る。 コストと責任はプロの側に付くのが原則。ただし守られる相手もプロなら、その保護は外れます(買主が宅建業者のとき)。原則だけを覚えると、この例外で落ちます。
- 禁止のルールは理由ごと覚える。 双方代理の例のように、出題者は同じルールを「厳しすぎ」と「緩すぎ」の両方向に倒してきます。理由を持っていれば、どちらの倒し方も見えます。
この類型は、数字の暗記が一切効きません。そのかわり持つものは2行で済みます——義務はリスクを作った側に付く。ただし守る相手がプロなら外れる。 機械に数えられないウソは、理屈で切ってください。